名取で考えたこと④ ~視点もいろいろ/津波とクマに見る共通点~
本部 海外事業部の林です。
今回の考えたシリーズはこれで最後です。社会課題との向き合い方というか、人の見方っていろいろだなぁと近年ずっともやもやしていたことです。
一昨年あたりからクマによる人的な被害が増え、報道も過熱する中、名取の海岸林にもクマが出るのではないかと懸念する声も出ていました。カモシカも、イノシシもいるのですから、市内の内陸で目撃されているクマが海岸近くまで来ることだってあるだろうと。
クマは確かに正しく恐れ、対策をしなければなりません。でも、私がもやもやしているのは、人って直接命に関わるものには目を向けるけど、じわじわと人の生活を脅かすものにはあまり関心を持ってはくれないという点。
オイスカは、農業は人が生きる上で最も重要な産業であると考えて、アジア太平洋地域の農業を担う人材の育成に取り組んでいます。日本国内にも農場を備えた研修センターを3カ所持ち、各国から研修生を受け入れており、そうした現場に足を運ぶこともよくあります。
今年は福岡のセンターで、収穫間近の桃のほとんどをサルに食われてしまったとの話を聞きました。愛知のセンターでは、サツマイモの畑がイノシシに荒らされている様子を見学。その子どもと思われる小さなイノシシが翌朝わなにかかっているとの連絡を受け、畑まで見に行きました。昼には丸焼きにしておいしくいただくという東京ではできない体験もしました。
センター周辺の田んぼは、以前からイノシシよけの電気柵が張り巡らされていましたが、近年はシカが入ってくるからと、ずいぶん高さのある電気柵に取り換えられていました。見学した農家さんでも、トウモロコシがシカに食われてしまうと、さまざまな対策をしていました。



皮がパリパリでおいしいのです!

一瞬で人の命を奪うクマ。毎日、毎月、毎年、じわじわと農作物に被害を与えるイノシシやシカ。後者は直接人の命は奪ってはいませんが、その被害は本当に深刻で、農家さんにとっては死活問題です。
そして今回考えたのは、津波も同じだなぁということ。海からの強風や潮、飛砂などは沿岸域で生活する人たちを脅かす、日常の脅威です。でもそこになかなか目は向かず、多くの人の命や財産が一瞬で奪われてしまう津波が沿岸部の最大の脅威であるように考えているのではないかと。
海岸林の再生に取り組んでいても「防潮堤があるのに何で松林が必要なんですか」とか「海岸林では津波は防ぐことができないのになぜクロマツを育てるのですか」といった質問が出てきた時、海岸林の存在意義がまだ理解されていないのだということを実感します。そして、だからこそ私たちは発信し続けないといけないのだとあらためて思うのです。
以前ico.さんが描いてくださった海岸林の役割。
ここに描かれたクロマツたちは、海からの潮風や冷たい風、そして山からの風(この地域では蔵王おろし)を精一杯枝を広げて受け止めて、ビニールハウスや家屋を守ってくれています。海岸の砂が飛んでくるのも防いでくれています。
津波が来るまでぼ~~~っと突っ立ているわけではなく、毎日毎日、懸命に力を発揮してくれているクロマツの働きを皆さんにもっと知っていただき、大切に育て、守っていく必要があることを認識してもらうための取り組みを続けていかなければならないと、これからはクマの報道に触れるたびに思い出すことになるのかもしれません。


