都立大学の大学院生による「土壌調査」
大変ご無沙汰しております!東京都立大学 都市環境科学研究科地理環境学域 博士後期2年 梶原拓人です.
私は昨年,6月24日(金)~6月26日(日)の3日間にかけて海岸林内で調査を行いました.今回は,分析の結果がある程度わかってきたのでご紹介したいと思います!
まず始めに,時期がかな~り空いたので調査の振り返りを(私も書きながら思い出します).昨年の調査では,生育がそこそこ良いNo.10周辺に1区画,生育が悪いNo.7周辺に2区画という,計3区画の調査地を設けました.調査の内容は極めて簡単.時間の許す限り,クロマツと土に関するデータをひたすらとる,とる,とる….1日の作業時間は10時間近くに及ぶ,単純ながら根気勝負の調査でした.なお,この調査は人手がものをいう調査だったので,私と指導教員の川東教授の他に助っ人が2人かけつけてくれました.高身長爽やかボーイの後輩,高橋君とモンゴルから来た留学生の先輩,ドギーさんです(ドギーさんは初めての海沿いの調査!).お二方には35℃を越える猛暑の中,3日間私の調査をものすごくサポートいただいたので感謝がつきません.3日間だけでも大変なのに,この暑い中で継続的に管理を行っているボランティアの皆様は本当に凄いなと改めて思いました.
写真:調査の様子です.白い帽子が川東先生,赤い帽子がドギーさん,黒い帽子が髙橋君です.お手伝いに感謝!
苦労をしてデータを取り終えたら,これをもとにいざ解析!!
データってたくさん取るのが大変ですし,取ったら取ったで後々も大変ですね……(笑).半分覚悟はしていたものの,なんで自分はこんなに頑張っちゃったんだと思いながら解析に明け暮れていました.
気になる結果がどうだったかというと……半分成功,半分失敗,という感じでした.
まずは成功の部分.生育が悪いNo.7周辺は,生育がそこそこ良いNo.10と比べて様々な土壌環境がとっても劣悪であることがわかりました(固い,水が抜けない,強い酸性であるなどなど…).そのため,クロマツの生育不良の多くは盛土の土壌環境が原因である可能性がとても高い,ということはハッキリしました.ひとまず進展です.
では失敗の部分は何だったかというと…….「どのような土壌環境が」「どれだけクロマツの生育に悪さをしているか」がわからなかったという部分です.樹木を育てるうえで明らかに土壌環境は悪いのに,1本1本のクロマツの成長具合とその下の土壌環境が上手く合わなかったんですね.
これには1つ原因がありまして.「全体的にNo.7はこんな環境だ!」と言えればまだ良かったのですが,どうやら名取の海岸林の盛土は数メートル動くだけで大きく土壌の環境が変わるようです.わかりやすく言えば,ある地点はとっても水が抜けない湿った土なのに,そこから5歩も歩けば乾燥した土になっている,という感じですね.つまり,極端な言い方をしてしまえば,「1本1本のクロマツにおける生育不良の原因がそれぞれ違う可能性がある」ということです.この木は土の硬さ,この木は排水不良,この木は塩分過多が原因で……という感じです.なんて複雑なのでしょう.盛土がこんな不思議な環境であるのがわかっただけでも十分前進なのですが,これでは生育環境改善のための策を出せない……!
と,いうことで.この結果を踏まえて今週末,7月22日(土)~7月24日(月)の3日間にかけて調査のリベンジをしたいと思ってます.
今回の調査の目的はシンプル.『クロマツにみられる生育の良し悪しと土壌環境の関係をハッキリさせる』ことです.そのため,昨年よりもデータの取り方や解析の方法を色々と工夫するつもりです.この工夫の方法を考えるのにとても苦労しました…….ただ,苦労した分,結果に結び出せればと思っています.
オイスカの皆様には,調査の度に手厚いサポートをいただいており,感謝してもしきれません.
研究の対象を名取の海岸林とさせていただいている以上,これからも色々とお世話になることが多いかと思われます.お世話になったぶん,なにかしらの成果を出して,名取の海岸林に還元していければと考えております.引き続きよろしくお願いいたします!
吉田より:調査結果を公表することとは、とても時間がかかるものだと思っています。中間報告的にブログを書いていただき、すごく嬉しく思っています。ありがとうございます。明後日からの調査も、引き続きよろしくお願いします。昨日から森林総研も調査をしています。研究結果を皆で議論できるとイイですね。