2011年3月11日、東日本大震災時の津波で私たちの生活は一変しました。
私たちは宮城県名取市下増田の北釜という、仙台空港から更に東側の、まさに海の近くの集落に生活していました。約100戸の住宅に約400人の主に農業を営む人が生活していましたが、津波で55名の方が犠牲になりました。
生活のすべてをある日突然一瞬で失ったわけです。
そのような状況下で途方に暮れていた私たちに、震災から間もない2011年5月、オイスカの方々が海岸林の再生のため早くも視察におとずれました。オイスカはこれまでの世界各地域での活動から、海岸林は広い地域にわたって防災、防風、防砂、坊潮などに大きな役目を果たしてきたことを、つまり「海岸林は重要である」ことを認識していたのです。そして私たちとともに、海岸林再生を図るために、100ヘクタールに50万本のクロマツの植栽をするプロジェクトを立ち上げました。10カ年で計10億円の大プロジェクトです。
紆余曲折を経て、昨年、2014年5月に植樹祭を行い、15ヘクタールに約8万本の虫に強い抵抗性のクロマツを植えました。海岸沿いで潮風も吹き付けるクロマツの生育にとっては過酷な環境にも関わらず、献身的な活動のおかげで補植をちょっとしただけで100パーセント元気に育っています。
ここ北釜は、震災前、メロンとチンゲンサイの産地でした。
海岸林は海からの冷たい潮風から農作物を守る効果もあります。
そういった意味において農業に欠かせない海岸林が植え始められたことにより、再び産地と成るべく立ち上がる機運も生まれています。隣地の農地整備も進み、約300棟のビニールハウスが建設されて、生活の新しい基盤整備にもようやく光がみえつつある状況になってきました。本年、いよいよ野菜の生産準備に取り掛かります。
海岸林再生プロジェクトは、防災、防風、防砂、防潮など「もの・機能」の再生にとどまらず、自らの手で自らの地域を再生しようという「心」の再生にも大きな効果をもたらしています。
海岸林再生プロジェクトは早くも5年目に入りました。しかし、クロマツは一朝一夕に育つわけではなく、これからもまだまだ続けなければならない、大変息の長い取り組みですが、「白砂青松」の復活へ、世界の皆さまと共に頑張りたいと思っています。
ぜひともこのプロジェクトへのご支援・ご参加をよろしくお願い申し上げます。
2015年3月11日
名取市海岸林再生の会
会長 鈴木 英二