先日、「名取市海岸林再生の会」が実施した研修会に参加した
宮城中央森林組合 業務部次長の佐々木勝義さんからレポートをいただきました。
プロの視点でのレポートご覧ください。
秋田県能代市「風の松原」、由利市「由利海岸林」視察研修に参加して   
    

「風の松原」(能代市)日本最大規模の海岸林。林帯幅1.2kmの部分も


名取市北釜地区・杉ケ袋北地区などの会員で組織された「名取市海岸林再生の会」
主催の研修会に私も同行させていただきました。オイスカの全面的支援により実施されたものです。
昨年夏にここを訪問したオイスカ職員一行が、地域住民が早朝からサイクリングやランニング、ウオーキングなど森と親しむ姿を目にし、諸団体の管理協力を聞き、造林・育林の桁違いの厳しさや長い歴史を知り、その時に企画を決めたと聞いていました。
北釜地区の被災者の強い思いもあり、地元雇用と地域活性化と共に、藩政時代から営々と培われ、育まれて来た海岸林が壊滅状況になった今、被災前の白砂青松を早期に取り戻すため先進地での視察研修を実施したものでした。
現在、秋田県の海岸林は、松くい虫の被害や暴風・積雪等の自然災害と悪戦苦闘し、
安定的な海岸林造成のために、日夜植林や保護事業に取り組んでいます。
その中で、米代西部森林管理署が実施している全国白砂青松100選「風の松原」保護事業及び
現在松くい虫等で激害区域での植林や天然下種更新により、クロマツ林造成事業に取り組んでいる
由利森林管理署の事業状況を視察しました。
宮城県南部の海岸林再生事業は、仙台・名取・岩沼・亘理・山元地区の海岸林を「民直」(民有林直轄治山事業)
として林野庁自ら行う事業であり、一部林帯造成事業も発注されていますが、仙台の一部地域から平成25年秋頃から植林も実施される運びとなっています。特に名取地区は、数年間で100ha以上の造林実施を目指しており、名取市海岸林再生の会メンバーは、長期的な育林の手法、住民の協力方法を非常に熱心に質問していました。その姿を見たこと自体、大変参考になりました。
 また、由利署は過去に広葉樹を植林し、悉く失敗したその現場も視察して見ると、
飛砂・潮風・寒風・積雪・黄砂・酸性雨等の自然の猛威は広葉樹の侵入をも阻む厳しさでした。
最初にクロマツが育ち、その後徐々に広葉樹が育つ自然の生態と遷移は、
我々の先祖が成し遂げた海岸林造成の苦難の成果と良く似ています。財源も無造作にあるわけではありません。
必要最小限の経費と最高の技術と英知の賜物であり、今後の海岸林の再生事業を実現する上で、
歴史的先人の偉業と共に、現存する藩政時代の松原を見た時に、その先人の熱き思いと現代人としての責任を痛感しました。
宮城中央森林組合 業務部次長 佐々木勝義

肥料入りの客土をしても、ここでは広葉樹は育たなかった。(由利海岸林)

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