こんにちは。
海外事業部の山本です。
5月17日に埼玉県三芳町の三富新田を訪れました。
訪日研修・トークイベントでタイからいらしていた、オイスカ・タイ駐在代表の春日さん、オイスカ・タイ事務局長のヤットさん、専門家のエウさん、タイ天然資源・環境省のカヤイさん、そしてオイスカ本部の吉田部長、グラゼン主任と共に視察をさせていただきました。
なぜ、このメンバーで三富新田を訪れたのかを説明するために、三富新田がどのような場所なのかを簡単に紹介します。
三富新田は300年ほど前に、水に乏しく、やせた土壌であった土地を開拓してつくられたところです。短冊状に区画されており、その細長い敷地は通りに面した側から、「屋敷地」「耕地」「平地林」に分割されています。
三富新田はこの短冊状の敷地の中で循環して暮らしができるようになっています。例えば、屋敷地には竹やケヤキが植えられており、農具の材料や家を建てる材木となったり、平地林のコナラやアカマツなどは、その落ち葉が耕地の肥料となったりしています。
それだけでなく、秩父おろしと呼ばれる季節風が吹きつけるこの地域において、屋敷地や耕地、平地林に植えられている木々は、防風林の役割も果たしています。
このように、この場所は、土地の特性にうまく適応しながら暮らしを豊かにする知恵が詰まっているのです。そのため、タイやフィリピンなど各地で植林や地域づくりを進めるにあたり、学びになる要素がたくさんあるということで視察が行われました。
タイ、フィリピン、国内の海岸林のプロジェクト、それぞれを担っている方々と行動を共にしたことで、私にとってはたくさんの気づきがありました。
第一に、「地域をどのように観察するか」ということです。
たとえば、グラゼンさんは行く先々で花の香りを嗅いだり、カヤイさんは土を触ったりしていました。そこで私もまねをしてみました。それによって、花の香りは同じバラでも意外と違うということや、三富新田の土は粒子が細かくて、指でつぶすと皮膚にすりこむような土であるということがわかりました。地元の方も、ここは砂が細かくて風でよく飛ぶとお話していましたが、それを体感することができました。
吉田さんからも「とにかく何でも触ったり、匂いを嗅いだり、食べてみたりして、五感で地域のことを知るのが大事」と言われましたが、まさに、一緒に行ったみなさんはそれをやっていて、地域のことをいかに知ろうとするか、という姿勢を学びました。
第二に、「応用する」ということです。
明確な目的を持った視察は、こんなにも具体的な議論につながるんだなと感じた場面があります。
地元の古民家を訪れたときです。古民家の中には三富新田について説明されたパネルがあり、それを見ながら、タイでの活動を今後どうしていくのか、という議論が繰り広げられました。
「三富新田では多様な樹木を植えることで暮らしに活かしているが、タイにもこのコンセプトは合うと思う」「タイにもさまざまな土地利用の事例があるから、そうした事例をたくさん見て考えてみたい」などなど。
また、グラゼンさんも、常にフィリピンではどのようにできるだろうかということを考えて意見交換や観察をしていました(グラゼンさんのブログからもそのことが感じられます)。漫然と経験や知識を得るのではなく、自身が取り組んでいることにつなげていくことによって、活かすことができるのだなと思いました。
第三に、「世界の見え方が変わる」ということです。
ちょっと大げさな言葉を使ってみましたが、自分が見ているものは、知っていること・考えていること・関心があることなどにとても左右されているということです。今回、この視察に誘ってくださった吉田さんは、電車から外を眺めていると「ここの土は赤いから、こういう土地なのかもしれない」といったことを思うのだそうです。私は電車に乗っていて、そんなふうに考えたことは一度もありませんでした。同じものを見ていても、見えている世界が全然違うのだなと思いました。
そして、今回の視察で、私は地域を見る目をひとつ得ることができました。屋敷地には、竹、ケヤキ、スギなどが植えられているということを知り、同様の木々が植えられている場所をみると、「もしかして、三富新田のように土地利用をしている地域なのかもしれない」と思うようになりました。今までは何とも思わなかった場所に対し、違う見方をできるようになると、自分にとって世界がちょっと広がったようで、楽しくなります。
今回の気づきを活かし、次に視察をするときには、さらに有意義なものにしたいと思います!