2023年5月30日

タイから学ぶプロジェクトを成功に導く対話力【タイ訪日研修同行レポート】

  • タイ
  • 本部スタッフ
  • オイスカ本部のグラセンです。

    5月12日から5月16日まで、タイ南部で進む「ラノーン県のマングローブ林再生を通じた社会的弱者層生計向上プロジェクト」に携わる3つの村のグループの代表が視察研修のため来日しました。

    最終日には、プロジェクトの背景や地域コミュニティとの関わり方、プロジェクトが彼らの生活にどのような影響を与えているのかなどを紹介するオンライントークイベントが開催されました。私はその配信会場にいた数少ない一人で、至近距離で直接現地の人たちの声を聞き、学ぶことができたのは幸運でした。

    言葉の壁もあり、彼らが伝えたいメッセージを十分に把握できたかは自信がありませんが、印象の残ったこと、学んだことは以下の通りです。

    1.タイの人たちの話を聞いていて、なぜかどこかで読んだアフリカのことわざが頭に浮かびました。「速く行きたいなら、一人で行け。遠くへ行きたいなら、一緒に行け」
    確かに、一人で行く方が自分のスピード、自分のペースで目標に向かうことができるので楽です。逆に、他の人を連れて行けば、ペースは遅くなるかもしれませんが、最終的には目的の結果を得ることができます。まさに彼らはメンバーが一丸となって進んでいるのだということが伝わってきました。


    2. 実際に活動に従事している村の人たちの口から、プロジェクトに参加して人生がどう変わったのかが語られ、会場やオンラインで聴いた人全員が、プレゼンテーションの力強さ、彼らの言葉が持つ説得力にひきつけられていたのではないかと思います。自信をもってイキイキと活動について話す姿が印象的でした。

    3.タイの活動と私の国、フィリピンでのオイスカ活動を比較せずにはいられませんでした。どちらも現地では非常にうまくいっていると感じています。ただ、タイの場合は、プロジェクトで生産した製品をどのようにパッケージングして販売しているかという点で、上回っていると思います。また、映像や写真、ブログで現地の様子を伝える技術や今回のトークイベントの構成の仕方など、現地でのストーリーを日本にいる会員や支援者の皆さんに共有する姿勢についても同じように感じました。

    4.地域コミュニティの希望やニーズに基づいたプロジェクトを策定することがいかに重要であるかが強調されていたように感じました。私もまったく同感です。私は今、オイスカがフィリピン北部で取り組んできた植林プロジェクトを含む複数の活動を一つの大きなプロジェクトとして再構築する仕事に取り組んでいます。その初期段階でさまざまなステークホルダーとの対話を繰り返す中、企画立案に最も重要な情報をどのように引き出すかが、私の課題でした。数十年にわたる活動で培った豊富な知識と経験を持っているスタッフにどのように質問を投げかけたらいいのかといった難しさにも直面しました。しかし、ミーティングを重ね、さまざまなキーパーソンに話を聞くことで、少しずつその壁を乗り越えている気がします。

    トークイベントのアーカイブはこちらからご覧いただけます

    また、トークイベント以外でもタイのスタッフたちの真剣に学ぶ姿に触れることもできました。
    プロジェクトの代表らと一緒に来日していたタイのスタッフと専門家がしばらく日本に残り、今後のプロジェクトに向けた情報収集をするということで、17日には埼玉県にある三富新田(さんとめしんでん)を訪問。私も同行する機会を得ました。

    視察した埼玉県三芳町では、落ち葉をコンポストにしてサツマイモ畑に利用するなど、300年以上前から現在まで、地元の農家が利用可能な資源を最適な形で活用している様子などを視察しました。

    丸一日かけて、地域づくりの戦略的な計画を理解することができました。 この視察を調整したのは「海岸林再生プロジェクト」を担当してきた吉田部長(部長が書いた三富新田に関するブログはこちら)です。部長は、日本各地で日本人が培ってきた知恵は、Eco-DRR(森林などの生態系を活用した防災・減災)に通じるものがあると、多くの現場を歩いてその手法を学び、海外の現場で生かしたいと考えています。今回もお茶の木が植えられているところでは、「お茶の生産のためでもあり、お茶殻をたい肥に使うなどの利用もしているが、そのためにだけに植えられているのではなく、風で土が飛ばされないように意図的に植えられている」との説明をしてくれました。

    そうした説明に真剣に耳を傾け、知識や技術を学ぼうとするタイのスタッフや専門家の姿が印象的でした。また、彼らはほとんどの訪問先で、お土産などを手に取り、買っていましたが、これは、主にパッケージや製品が持つストーリーをどのように伝えているのかを現地のグループメンバーと共有するためです。どんなものからでも積極的に学ぼうとしていました。

    最後に、タイで森林火災の問題にどのように取り組んでいるのか、情報交換の機会を持てたことに感謝しています。地域コミュニティによって作られ、常に維持されている防火帯に、バナナの木を植えることで、すぐに火が燃え移らないようにしていることを知りました。バナナの幹やバナナの葉は水分を多く含んでいるため、火災の際には簡単に切ることができ、火を止めるための道具となるのです。

    このブログを書きながら、2日足らずの間に学んだことをあらためて振り返り、多くの学びを得られたことに感謝しました。人生とは、まさに学び続けるプロセスです。この学びが本当の意味で役立つように、早く実践につなげたいです。

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