夕日の松原(秋田県)
「あきたこまち」の産地に来た。
9月8日付秋田魁新報に「今年のコメ自給率は秋田が全国1位」との記事。
初めて見た八郎潟干拓地には、立派な内陸防風林があることを知った。
男鹿半島の付け根、干拓地南端から秋田の港まで松林が14㎞続く。
その多くを占める潟上市は、宅地も水田も海岸林に寄り添っていた。
秋田火力発電所も周囲は松。金足農業高校も恩恵を預かる後背地にある。
幅800m~1,500m、面積860haの壮大な規模の「夕日の松原」。
後背地から幾重の砂丘上にある保安林を越え、浜に出ると海岸浸食防止の離岸堤があり、
平成16年の台風で被害を受けた最前列にはクロマツが再び植えられていた。
日本海の海風が吹き付ける。ここに来れば、生活を守るために松があることが一目瞭然。
2日間の松くい防除講習と週末の時間を使い、現場を歩いた。
最前列は下刈・つる切り・除伐が徹底されているクロマツ純林。
海沿いの国道を完全に守る設計となっている。
第2列以降は下層に自然に侵入したクロマツと広葉樹を活かし、
上層のクロマツがダメージを受けた場合に備えた長期を見据えた設計。
第3列以降はアカマツが占めて、広葉樹林に遷移している箇所も多い。
これは人の手で成したこと。秋田県立大学や行政と市民の協働による保育。
その気になれば、ここまで整然とできるものか。
見事としか言いようがない。
負けてもうれしい背くらべ
松枯れ防除実践講座in秋田(主催:日本緑化センター)
9月6日、佐々木統括は種苗組合の全国大会、岡山へ。
私は松枯れ防除実践講座(主催:日本緑化センター)のため秋田へ。
「松くい虫はその気になれば殲滅できる」
理論上は・・という意味含みですが、佐々木統括はそう言って送り出してくれました。
防除研究は、例のないスピードで進められてきたと聞いたことがあります。
宮城中央森林組合は最前線で結果を出しています。
東日本でも若齢、また抵抗性のクロマツが枯れた事例を見聞きしてきました。
「それは確かだと思います。若齢でも入る可能性があると思ってください」
抵抗性は100%保証されているわけではありません。
「宮城の海岸林も、いつ襲われてもおかしくないです」
第一人者の講義と、宮城に関する意見を伺いたかった。
雨でも意にも介さず、講師も事務局も熱意のある方ばかりでした。
防除は通年スケジュールが大事だと、一層実感しました。
「薬剤散布や伐倒駆除の工期を守らねばカネの無駄」
6月、カミキリムシが飛ぶ前にすべてやり終えなければならない。
通年、とくに夏、周辺地域の枯れマツ探しは重要。
9月頃、センチュウの侵入によるマツの最終枯死が見えてきます。
松くい虫なのか、そうでないのか・・・簡易な見分け方も教えていただきました。
完全枯死せず、センチュウに抵抗中の個体も見ました。
秋田県では、まずプロ中心に専門調査員を養成。夕日の松原内の秋田県立大学は市民参加の核。
「県立大は今後も松枯れ研究、松原の保全活動は必ず続けます」と小林学長。
宮城でも市民の眼は戦力になり得ると確信。(薬剤がらみや伐倒は市民には無理)
プロ向けはすでにあると思うが、公募やボランティアリピーターにも講習。
実感として、2日ぐらいちょっと講習受ければOKとは思わないですが。
最大リスク要因の松くい虫でも、宮城全体の官民連携のイメージが見えてきました。
行政と連携して行動に移したいと思います。まず次は、宮城中央森林組合の現場に行かねば。
将来のマツの可能性 Part2
こんにちは、国際協力ボランティアの中川です。
今日は、以前の記事の続きということで、マツの落ち葉の利用方法について、さらに理解を深めていきたいと思います。今回は、マツの燃料・肥料に焦点をあてて、特徴と有効活用方法について考えたいと思います。
マツの落ち葉の有効活用方法の主な使い道として、燃料・肥料が挙げられます。実は、マツの落ち葉は昔から人々の生活の暮らしに身近なものなのですよ~。ガスや灯油が普及する1940年代~1950年代の半ば頃までは、薪や炭が庶民の暮らしを支えていました。特に松の落ち葉は火がつきやすく、かまどや風呂の焚きつけに重宝されていました。固めて縄で縛った松葉を売り歩く商売もあった程だそうです。現在では、家庭からかまどが消えつつありますが、夏の京都の風物詩、五山の送り火には松の薪と松葉が使われているそうです。他にも、陶磁器を焼き上げる登り窯としても使われています。マツは、他の木材と比較しても単位重量当りの燃焼熱量が高いんですね~。
他にも、マツの落ち葉が燃料・肥料として有効活用されている事例があります。例えば以前の記事でもご紹介した、松野菜です。松野菜は和歌山県美浜町で作られているもので、マツの枯れ葉と籾殻が発酵されてできた、松堆肥から栽培され、松トマト、松キュウリと呼ばれています。煙樹ヶ浜松葉堆肥ブランド研究会事務局は、「松葉は環境にも優しいバイオマス資源であり、その堆肥を撒いた土壌は通気性、保水性に優れ、植物の根に良好な環境を作り出す」と述べています。他にも、ガーデニングなどでよく使用されている、クロマツペレットが挙げられます。クロマツペレットは熱量が高く、灰分1パーセント以下の燃料用として非常に優れた特徴があるそうです。
このように、クロマツの落ち葉は、特徴を活かしながら、燃料・肥料として有効活用されているのですね。マツ初心者の私には、調べ進めていくことがすこし難しかったですが、マツの新しい可能性を垣間見えることができました。ぜひ、クロマツの特徴を活かしながら、新しい有効活用方法を考えたいものですね。そして、読者の皆さん!もし、なにかクロマツの落ち葉の有効活用方法を知っておりましたら、ぜひぜひ教えてください~。
おやつ……ではありません
広報室の林です。
今日はお休みなので、ちょっと緩いお話を。
8月末のボランティアの日のこと。
地元のMさんがたくさんスイカを持ってきてくれました。
うれしいおやつ。食べる前に撮影するのを忘れてしまいました!
でも食べ終わった皮だってカラフルでキレイ!
ご自宅の畑で息子さんが育てているものなのだそう。
甘くておいしかったです!
一方こちらはおやつのフランクフルト。
…ん?? 細身のホットドッグ??
……ではありません。
なんだかおいしそうに見えてしまったのは私だけ??
これは、植栽地に生えているガマの穂。
ガマは通常水辺に生えるんですけどね……。
ガマの穂から綿状の種子?が吹き出すように
出てきているのを見たことがありますか??
私は、そうなる直前にギュッと穂を握り、
手のひらの中で綿がはじけるようにムニュムニュっと
広がっていく感覚が好きで、早くその時期が来ないかなぁと思っているのですが、
植栽地に種子が広がったら、来年はさらに草刈りが大変になってしまいますね……。
8月26日、ボランティアの日に“4年ぶり”の女性が参加してくれました。
現在大学生の彼女が前回ここに来たのは、
仙台に単身赴任中のお父さんの誘いで、
千葉から小学生の弟を連れて参加してくれた時のこと。
当時のことは「姉弟ボランティア」というタイトルでブログにしました。
かわいい高校生だった彼女、すっかり大人の女性になっていました。
そんな娘がひとり暮らしをしているお父さんのところに来たものだから
ちょっとお父さんもドキドキしてしまったようです(笑)
お父さんは一昨年、大阪マラソンのチャリティランナーとしても
プロジェクトに貢献してくださいました。
小学生だった弟君は、受験勉強が忙しく、今回は不参加。
でもお姉ちゃんだけでもこうしてまた現場に来てくれたこと、
とてもうれしかった!
普段一緒に過ごせない親子が1日、こうして作業を通して
どんなことをお話しているのか、とっても気になりましたが
休憩中も仲良く(ちょっと距離を置きながら?)並んで
防風柵に腰かけているお二人を遠くから見て勝手にほっこりしていました。
来年は高校生になった弟君と一緒に来てくれたらいいなぁ。
ステキなKさん親子、いつもありがとうございます!
また皆さんでいらしてくださいね。
まずはアナウンスから。
9月3日、河北新報社夕刊、名取出身のイラストレーターicoさんのエッセーでプロジェクトを
紹介くださいました(8月30日、東京本部来訪、第1迎賓館の餃子屋にも行きました)。
https://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201809/20180903_13060.html
(河北新報社・まちかどエッセー・物江麻衣子で検索すると他のものも読めます)
台風21号で関西空港滑走路が水没した9月4日、名取は翌朝まで暴風雨。最大瞬間風速22m/s。
当然事務所は揺れに揺れました。翌日朝、「22mぐらいなら防風垣が飛ばされないだろう」と
思いながらも、念のため、被害がないか確認に行きました。
南南東の突風が吹くと何か起こりやすいので。
地元農家は、早朝から排水機の門のごみを取り除いています。水路はかなりの勢いで流れています。
私が通った農地は大きな水没はなさそう。この10日で約115㎜の雨でも、これまでの少雨が幸い。
多くの関係者・ボランティアのおかげで気になっていた場所は即排水され、
防風垣など全体とくに異状なく、途中からランニングで海岸林公共工事を見ながら岩沼二ノ倉まで。
オイスカの現場の変化は、2018年植栽地の苗は、北西に向かって斜めになっていたこと。
2014年植栽地南東端も、よく見ると煽られた跡がある。
風衝樹形の始まりかな。
明日から2日間、「松くい虫防除実務研修」秋田に向かうため、
11時から歩いてレンタカーの空港受付まで。朝見えなかった部分を点検。
朝から誰より忙しいのは「トンボ」のカップル。
クロマツ林床から排水された水溜まりに、ひたすら卵を産んでいる。
1日どのぐらい産むんだろう。昼寝したかったけど、つい、トンボ観察に代わってしまった。
水色の顔のは、朝ゲート開ける時にいきなり発見。
トンボの中でも今日忙しいのは、ギンヤンマとイトトンボの2種類のカップル。
そのほかのトンボは、まだカップル成立ではないのかも。
写真撮れるのはカップルが卵を産んでいるときだけ。
そのほかのトンボは、休みもせず飛んでいるので撮れません。
やっぱり虫取り網が欲しくなった。次の日曜日やろうかな。
トンボだけでなく、防潮堤で吹き上がった風がどの辺に吹き付けるのか、
林内を歩きながら点検してみたい。マツが倒されている可能性もなくはないし。
宮城県庁の方がいらっしゃいました!
こんにちは、インターン生の大和田です。
9月4日に宮城県庁の方がいらっしゃいました。
今日いらっしゃっていたのは職員の方2人と宮城県庁のインターン生(しかも同じ大学!)なので常に専門用語が飛び交っていました。
名取市にも台風が近づいてきており雲行きの怪しい中、海岸林を南から北まで見てまわりました。
今日は育苗場から見ていきました。
種まきは2012年から始まっており、被災された地元の農家の方々の力をお借りしながら種まきと育苗が行われ続けているそうです。
ここで2年間過ごしたマツは育苗場を卒業し、植栽されます。
マツの保育園のような場所ですね。
晴れて1歳になったマツたちは根を地面から離され、地面から水分と養分を取れなくなり、一層根を出してたくましくなります。
小さい頃からとてつもないスパルタ教育をされているのです。
人間で言うと小学生になる前から一人暮らしするようなものでしょうか……。
南側に一本だけ立っているマツも見ていきました。
こちらのマツはなんと約120歳!
育苗場のマツもいつかこれくらい大きくなるのでしょうか。
数十年後、数百年後まで見届けたいものです。
吉田さん曰く、伊達政宗の頃、つまり400年近く前から海岸林がつくられたそうです。
400年前から海岸林は必要だと考えられていたとは思いませんでした!
2011年に海岸林はほとんど流されてしまいましたが、その中には伊達政宗と同じ時代を過ごしたマツもあったのかもしれませんね。
生物多様性についてのお話もありました。
マツ以外の植物を全て切って潔癖なマツ林にするのではなく、これからもずっと残る林にすることが重要というお話が印象的でした。
実際にマツの周りを雑草が囲んでいる場所や防風垣に葛が絡みついている場所も多々あります。
植物だけでなく、様々な動物、鳥、昆虫が海岸林にいます。
海岸林を飛ぶ猛禽類はなんと6種類もいるそうです!
さらに最近は珍しいトンボも多いようで、顔の青いトンボが3種類ほどいるのだとか。
私は写真に収められなかったので、見たい方はぜひボランティアに参加してください!
7月は過去8年最少、8月は過去8年最多の降水量、お盆明けから連日雨の名取。
海岸林北端、広浦沿いでは、林野庁発注の静砂垣設置の建設会社約10人、
南端、北釜ゲート前では、名取市発注の旧宅地の基礎撤去工事数人。
今日は建設会社の杭打ちを見学しながら、ドリルで穴掘りする手応え、
杭打ちの感触など、多くの従業員からじっくり盛土の情報収集。
「14工区北側が固いね。南半分と穴開け方法変えたよ。石交じりだけどドリルなら砕ける。
マツなら大丈夫だと思うね」(社長)
「雨がたくさん降った後だから、杭が水に跳ね返される。反発だね」(職人さん)
滞水改善についても、現場代理人さんや、協力会社の社長さんに僕の意見を聞いてもらった。
「ずっと温めてたんだけど、まだジャストアイデアだから、統括と相談してからにします」(吉田)
中央部北寄りでは、森林組合の若いT兄弟が黙々と下草刈り。2人は4月以降ほぼ毎日名取。
「ハチに刺されてない?」(吉田)
「スズメバチに初めて刺されました~ 別の現場ですけど」(兄)
お茶を飲みながら、作業指示と、ボランティアの進捗状況の確認。
「刈り高は力枝の下だからね。丁寧過ぎて赤字にならないようにな。
誤伐すれすれで、幹周りを攻め過ぎるなョ(笑) 草も蔵王おろし対策になるから友達だよ。
いっつも言うけど、防風柵周りは、刃はこの部分だけ使うんだぞ。キックバックわかるよね。
(刈払い機による重大災害防止のために)」(吉田)
ゲートを閉めて戻る時、お揃いの水色Tシャツを着て虫取り網を振る2人を発見。
「息子が珍しいトンボを探していて・・・ここにいるって言うんで・・・」(父)
「なんって名前ですか?どんな色ですか?」(吉田)
「〇トンボ・〇トンボ・〇イトトンボです。色は・・・」(息子さん)
http://tombozukan.net/ym-marutanyanma.htm
http://tombozukan.net/ym-madara.htm
http://www.tombozukan.net/ito-kobaneaoito.htm
「それ、ここで見たかも!こんな綺麗な色のトンボ見たことないと思ったですよ」(吉田)
「ほんとですか?!どのへんでしたか?!」(父)
「うちの息子、3歳のころからトンボ好きで、50種類ぐらい確認してるんです」(父)
「イトトンボもいろいろいますよ。よく見るのはココです」(吉田)
「入っても大丈夫ですか?」(父)
「歩いてはいる分なら大丈夫ですよ。何か困ったら連絡してくださいね。
トンボ、僕も注目してるんだ。教えてほしいなあ。さすがにこれは分からないんで」(吉田)
名刺を息子さんに。
いい親子だな・・・惚れ惚れしました。虫取り網、本気で買おうかなぁ。
お盆挟んで、統括とも菅野さんとも会うのは1ヵ月ぶり。
「福島大学理工学部、今年は9月に4回植生調査するそうです。私いませんが」
今日の情報交換は多岐。雨、風、土、水のことも、先枯れ病(今週ちゃんと調べます)や
生き物のことも。短時間で結構な広範囲の話題を一気に。
今日の統括の生き物系各種コメント
「ミサゴ・・・これがいるってすごいんだぞ」(チヨウゲンボウも今朝見ました)
「広葉樹・・・やっぱりここじゃ難しいよな。2mに育っても枯れる。よそで大きな声で言ってくれ」
「キツネの巣穴・・・鳥の卵は随分食われただろうな」
「ちゃんと森林整備して50年単位でちゃんと植生を見れば、すごいことがわかる。
生物も多様化、植生も豊かになる。こういうことを証明したいな」
広葉樹にとっては過酷な土壌に加え、例年以上に過酷な条件が加わりました。
でも、今年は過去8年で一番少ない降水量。急がなきゃ葉が全て落ちてしまう・・・
9月2日、広葉樹生育「予備調査」的に、671本すべて見てきました。
多い順からコナラ・ケヤキ・ヤマザクラ・ウワミズザクラ・オオシマサクラの5種が全数の9割。
これまでの経緯を記した海岸林ブログ内カテゴリー「広葉樹」はコチラ
http://www.oisca.org/kaiganrin/blog/?cat=18
5月の開葉確認では極めて好成績だったが、葉の状態が非常に悪く、例年以上に6・7月を乗り切れない。
充実した溝切りを経て環境が良くなったクロマツが、真横で青々としているのに対し、
広葉樹は蒸散量を減らすために葉の周りから枯れ、樹種によっては7月に落葉も始まった。
粘土質で多湿の市有林の201本は、葉の変色が酷いものの、枯損は少ない。
2016年10月の最終補植木の生育率は90%以上だろう。
ただ、去年のような上方生長はない。根元径は太くて希望が持てるが。
砂質壌土、排水溝にガマが育つ国有林の470本は、強いはずのサクラ3種が予想以上に枯損。
サクラほどひどくないがケヤキも厳しい。辛うじて・・・という感じ。
この少雨を旺盛に生き抜いたのはコナラ。ただ、去年の上部が枯れて萌芽更新を経たため、
ハイマツのように低く横ばいに伸びている。とても見栄えが悪い。
エノキ50本は全数生存しているものの、2年間上方生長の気配なし、太くもならず。
2016年10月の最終補植木の生育率は、生長不良のものを入れると80%程度。
夕飯の定番、ラーメン「ねぎっこ」で今日を振り返って、
今秋の保育と現場管理を10種類、来春の仕事2種類を考えました。
一人じゃ大変だな。松島森林総合に手伝ってもらおう。
植えて2年は辛抱というのが定番。来年こそ「おがる」といいのだが。
とにかく、この場所で広葉樹は厳しいのは明白。