千代の松とネグロスの繭

2015年1月30日( カテゴリー: 本部発 )

仙台で「千代の松」という銘のお菓子を見つけました。
伊達政宗が詠んだ歌にちなんだものでしょう。
“入りそめて国ゆたかなるみぎりとや
           千代とかぎらじ せんだいのまつ”
matsu
ちょうどフィリピンからスタッフが一時帰国していたのでお抹茶でいただくことに。
そのスタッフは、ネグロス島にあるバゴ研修センターの渡辺重美所長。
約40年間フィリピンで活動を続けている大先輩です。
ocha
ネグロス島はサトウキビ栽培がさかんで“砂糖の島”といわれるほど。
その島が“飢餓の島”と呼ばれるようになったのは、1980年代に
砂糖の国際価格が暴落してからのこと。
この島の農民たちが何とか自立して、貧困から脱却する道を歩めないか。
――そこからオイスカの養蚕普及プロジェクトが始まりました。
農民たちに養蚕指導をするのは、かつて日本の養蚕農家に泊まり込んで
その高度な技術を学び、国に帰ったフィリピンの青年たち。
彼らは時に農家に泊まり込んで、指導をしています。
今では第三国に指導員として招聘されるところまでに、彼らの技術は磨かれました。
プロジェクトでは繭の生産、製糸、機織りまでできるようになりました。
貧困の削減により「子どもを学校に通わせられるようになった」といった声もきかれます。
また、蚕を育てるのに欠かせない桑を植えることで土砂崩れを防ぐ効果も期待できます。
一家の大黒柱が年間を通して、街に出稼ぎに行くことなく自宅で家族とすごせる
ようになったこともプロジェクトの大きな成果と言えるかもしれません。
      ******************
「海岸林再生プロジェクト」を担当する吉田とはまったくタイプの違う渡辺所長。
穏やかな笑顔とおっとりとした口調でお話をしながら、菓子切りで切った
お菓子を口に運び「やっぱりいいもんですね。ほっとします」と。
茶碗も大切にそっと手のひらに乗せ、お茶を味わう渡辺所長の
その目の前でお菓子を手でつかみ、口の中にポイとねじ込む吉田。
ビールを飲むかのように片手で茶碗を持ち上げぐいぐいぐい「ぷは~~~うめぇ」。
      ******************
渡辺所長が「今年、大阪マラソン走りますから」と。
毎日ジョギングをし、トレーニングを積んでいるのだそう。フィリピン国内の各種レースにも
参加していて、3月には初マラソンにもチャレンジするそうです~~!!
可能であればフィリピンから数名ランナーを連れてきたいとも。心強いかぎりです。
今年はランナー募集目標100人。
渡辺所長が頑張るなら私も!という方、ぜひチャレンジしてください。
shigemi
 

復興報告会

2015年1月29日( カテゴリー: 本部発 )

昨日は都内で名取市復興報告会が行われました。
CIMG7047経済同友会との共催ということで、普段オイスカ主催では使えないような立派なホテルが会場となっておりました。
おかげさまで席が足らなくなるほどの大盛況。
今回の講師は名取市の佐々木市長。名取市で開催した報告会や視察ツアーなどにはお越しいただいたことがありますが、東京までお越しいただいての講演は初めてのことでした。
私が見ている被災地は名取市ばかりで、ほかの地域については年に1~2回視察をする程度なのですが、「復興」はどこでも少しずつではありますが進んでいるように感じます。もちろん地域差もありますし、そのスピードにも差はあります。
スピードが上がらないとしたら、それはそこに住む人たちの考え方が千差万別で、
どの意見も聞きながらみんなが納得できるように話し合いを重ね道筋を
作っていくことに時間がかかるからだと思っていました。
でも今回の名取市長の講演会では、復興にかかわるさまざまな制度の複雑さといった
別の要因も大きいのだということがとてもよく理解できました。
「生業の復興なしに復興はない」とおっしゃっていたのも印象的でした。
海岸林の再生が、生業の復興につながり、名取市全体の復興につながるものとなるよう
しっかり取り組んでいかねば、そう感じた講演会でした。

三本松

2015年1月28日( カテゴリー: 現場レポート )

名取の海岸線は約5㎞。
そこに植栽基盤となる盛土が造成され、その上に海岸林がつくられます。
林野庁によるその造成工事は今も続いています。
完成している盛土は名取市の南側。工事は北上していきます。
数ヵ月ぶりに行くと、前回まで道路だったところが盛土になっている!
・・・・・・なんていうこともありまして、ちょっとびっくりしてしまいます。
現場に行かれた方でないとなかなかイメージできないかもしれませんが、
これまであった盛土の北端の北側には3本のマツがありました。
140428 植栽初日(22)
例えばこの写真。4月にスタートした植栽初日の写真です。
写真の右上の方に3本のマツが確認できます。
 
 
 
 
 
140526 DSC_0083 (11)
こちらの写真はどうでしょう。
ある植栽ポイントから北の方に向かって撮影した写真にもうっすらとですが3本のマツ、見えますか??
 
 
 
 
そして、道路(といっても工事車両用通路ですが)だった三本松の周辺は今、盛土になりました。
この写真でお分かりいただけますか??
これまでの盛土の北端と新しい盛土の南端がつながったのです。
150124-25 (248)
マツの根元はこんな感じに養生されていました。切り倒されなくてよかった~!!
150124-25 (258)
 
 
 
 
 
さらに、私が楽しみにしているのは、このマツが種子を飛ばしてくれること。
150124-25 (262)
たくさん落ちていましたよ~マツボックリ。
仙台や岩沼などで海岸林再生の現場を歩いていると、近くのマツ林から飛ばされてきた種子から芽を出したかわいいかわいい赤ちゃん苗に遭遇することがあります。・・・・・・というか、ついつい探してしまいます。実生(地面に落ちた種子から生えてきた苗)は強いんです!
海岸林再生の会の皆さんが丹精込めて育てた苗と、この三本松がここに子孫を残そうと産み落とした実生苗とが一緒に仲良く育っていってくれたらいいなぁと想像を膨らませています。
新しい盛土への植栽は再来年以降。
もしかしたら実生の方が早く根を下ろすことになるかもしれません。
また現場歩きの楽しみが増えました!!

あしあと その2 吉田編

2015年1月27日( カテゴリー: 現場レポート )

今日の足跡はこちら
150124-25 (14)150124-25 (13)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
はい。ご覧の通り、吉田の足跡です。
でも、ただ防潮堤に向かって無目的に歩いているというわけではありません。
実はプロジェクトの植栽地が新たに増えることが決まり、そのエリアの面積をざっと割り出し、
植栽本数を計算するため、歩数で距離を測っているのです。
その場所は、下の図の赤線の部分。
zu

以下、足跡の主より。

 

防潮堤の真後ろ、道路と防潮堤までの間にも、クロマツを植えることになりそうです。
我々、そうなるとはあまり思っていませんでした。
ですが、旧来の県有林の敷地内です。
ということで、幅を、ザックリ測ってみました。
東西幅20m×南北全長5km=10ha 
 *工事次第では幅25mぐらいかもしれません。
1ha×5,000本=50,000本
これは来年1年間で植える本数と同じ規模。
ここの植栽は、クロマツにとっても高ストレスで難しい。
天候が良くても、半数枯れることを本当に覚悟しなければならない。
苗を倍用意することなど勘案すると、H28年度には可能な限り着手し、
枯れても枯れても、補植するねばりが必要です。

あしあと その1 通り道編

2015年1月26日( カテゴリー: 現場レポート )

広報室の林です。
2ヵ月ぶりに現場を歩いてきました。
いろいろ発見があったので、吉田の難しい話の合間の息抜きに
あれこれ小ネタをご紹介していきたいと思っています。
しばらく続きますのでお付き合いください。
今日と明日は足跡のお話です。
 
育苗場にも、植栽現場にもタヌキと思しき足跡が無数に見られます。
CIMG7006
日中彼らの姿を見かけることはありません。どこにいるのでしょうか。
植栽現場では、排水のための溝が通り道になっているようです。もっとも、クロマツが植えてある場所にはチップ(津波で流されたマツを粉砕したもの)を敷いているため、足跡が見えにくく、植栽地に掘られた溝には海岸から飛んできた砂が堆積し、その足跡が分かりやすいというだけかもしれませんが。
よく観察しているとほかの足跡も見られます。
↓鳥ですね、これは。
何の鳥でしょう?分かる方、教えてください!!
CIMG6999
 
 
↓ さらにこちらは、CIMG7012鳥とタヌキが並んで歩いたかのような足跡。もちろん並んではいなかったと思いますが、同じ通り道を歩いていることがわかります。
ついつい楽しくてどんな動物がどんなところを歩いているのか気になって足跡を追いかけてしまうのです。
明日はもう少し大きな足跡をご紹介します!!

以前紹介したイラストレーターのico.さんが都内で個展を開きます。
期間:1月29日(木)~2月18日(水)
会場:自家焙煎珈琲店 梅ノ木 十条店
(東京都北区上十条2-24-10 2階)
時間:AM8:00~PM9:00
   ※月曜はPM7:00まで/日曜・祝日はAM9:00から

ico.さんのブログで申し込み方法など紹介していますのでご覧ください。

植樹祭にご参加くださった皆さまへ

2015年1月25日( カテゴリー: 本部発 )

2014年5月24日、プロジェクト初の植樹祭が開催されました。
地元の方々を中心に300名を超える参加者の手で植えられたクロマツ、
ほぼ枯れることなく、みんなしっかりと根付いています。
150124-25 (225)
この盛土は比較的状態がよく、また指導員の皆さんのリードも素晴らしく、そして何よりご参加くださった皆さんの海岸林再生への思いがこのような成果につながっているのだと思います。
今年もまた5月に植樹祭を開催する予定です。昨年同様、地元の宮城県民の皆さん、名取市民の皆さんを優先して募集します。
今年度、4~11月の間、全国から1,500名以上の方が育苗場での草取りや植栽現場での保育管理作業にあたってくださっていました。そういったボランティアの皆さんも「植えたい」と思っているのですが、私たちの「植栽は地元で」という考えをご理解くださっています。
地元の方が植え、守り、育む。
その大きな流れをつくらなければ何百年もこの森を育てていくことはできません。
今日の河北新聞の“とうほく一番物語”のコーナーでは秋田県能代市の「緑の長城」が紹介されています。
日本最大級の海岸防砂林「風の松原」のこと。
地元には「風の松原に守られる人々の会」の会長さんの言葉が紹介されていました。
「守る人々の会」ではなく「守られる人々の会」というのがいいなぁと思いました。
海岸林を守り、育むと、その海岸林が内陸に住む人々の生活を守り、育んでくれるのです。
宮城県民、名取市民の皆さん、ぜひ今年もお仲間とご参加ください。
そして植えた苗木のお世話を全国からのボランティアの皆さんと一緒に体験してください。
4月以降11月まで、毎月第三土曜日(8月のみ第五土曜日)の朝9時から夕方5時までです。
ご参加お待ちしています。
ボランティア詳細はこちら

補植苗

2015年1月24日( カテゴリー: 現場レポート )

現場を歩いていると周囲と比べてとても小さな苗に出会うことがあります。
あまりにも小さくてかわいらしいので、どれほど小さいか比べてみました。
150124-25 (158) 150124-25 (157)これは上から見たところ。
マツの下の黒いものは私の長靴です。
 
 
 
 
150124-25 (165) 150124-25 (161)こちらは高さで比べてみました。
小さいマツはひざ下、大きいマツは太ももあたりでしょうか。
幹の太さも枝の張り方も大きく違うのが分かると思います。
実は大きな方は昨年の春に植えたもので、小さな方は秋に補植したもの。枯れてしまった苗の代わりに新しい苗を植えたのです。今年度は天候にも恵まれ、ほとんどが枯れずに生育していますが、毎年このように育つとは限りません。
今年も順調に育ってもらいたいものです。
 

残念ながら枯れてしまう苗があるのです……

残念ながら枯れてしまう苗があるのです……


 

気温1℃の名取より、佐々木統括ととも情報収集した結果や、
今年度事業の振り返り・分析を速報いたします。
ここまで来たのも皆さんのおかげです。
●「オイスカ方式(自家生産)は、原資が寄附金に相応しい低コストを実践した!」
【植栽コスト(1haあたり苗木代・植付人件費のみ)】
・オイスカ式 153万円(育苗・植栽雇用約1,000人工/年の見通し)
・苗木購入式 228万円
*おかげさまで、雇用を生みながら、低コストを極めることができました!
*宮城中央森林組合と名取市海岸林再生の会の「両輪」のコンビネーションのおかげです。
*オイスカ植栽後の生育率98.4%。の超好成績。(補植済み)
*コスト削減分を施肥人工代に回し、肥料は「住友化学・労組」から寄贈。
 下刈りはすべてボランティアで16haを4往復。従って今年度は支出なし。
*もし、今年度が厳しい天候で、海岸林でよくある「枯損率5割」などという
  事態だと、1,000万円程度の追加予算が必要。失敗しない=低コスト。
  「蔵王おろし」は甘くなく、好成績がずっと続く保証はないと思います。
*広葉樹にはあえて触れませんが、苗はもちろん、腐葉土などの諸資材、
  クロマツより手がかかる人件費などのすべての価格高騰を考えればなおさら、
  比較にならないコストの差があります。コスト面からも、また、荒野に最初に植付けても
  生育の確立が高く、防風・防災効果を早期に発揮するのは、国の指針通り、
  やはり沿岸に最強のクロマツと考えます。
●「海岸林植栽工事全体の進捗における、オイスカ植栽シェアは26%!
H26 植栽工事完了面積61ha(1/15東北森林管理局発表)のうち、オイスカは16ha
*今後も行政当局との密な協働を継続し、復興の一端を担う存在となるスピードと
  ダイナミックな手法を失わないようにしたいと思います。
●「育苗場の生育率 2年連続トップ!」(1/15県発表)
【育苗場におけるH26春播種の抵抗性クロマツ苗生存率(11月県調査)】
*県内種苗農家平均  61%
  再生の会・オイスカ 92.3%
*被災農家の努力と、ご指導いただいた種苗組合・先輩育苗農家のお陰です。
*来春播種の種は、大不作とのこと。非常に貴重。
*針葉樹は、林業種苗法に則り、資格を取り、種苗組合に加入し
県に生産者登録しないと扱うことが出来ない。
●地元への浸透じわり
名取市町内会連合会、宮城県立農業高校(名取市内)OB会から
温かく心強い協力の申し出をいただきました。
来月、市職員対象に活動報告会も予定しています。
また、来週の「市長復興報告会in東京」の要旨は、HPで公表します。
●苗木の「生長量」は苦戦の見通し

昨年植栽したクロマツ 海岸林の現場で逞しく生育中。

昨年植栽したクロマツ 海岸林の現場で逞しく生育中。


太田猛彦先生が「月面に木を植えるようなもの」と評した栄養のない無機質の土での植栽のため、葉が黄色化(窒素不足)。(良い土は農地に優先されます)枯れずとも、生長は通常より時間がかかる可能性がある。
さらに、冬・春の乾風・寒風「蔵王おろし」で、今後どのぐらい生き残るか。。。
今後も「自助自立精神の塊」の再生の会とともに頑張ります。

出席者のうち再生の会は4名

出席者のうち再生の会は4名


黄色の線が内陸防風林

黄色の線が内陸防風林


名取市主催:下増田南原・北原東地内塩害被害保安林(内陸防風林)の植栽に関する
説明会が1月21日に下増田公民館で開催されました。
名取市には「蔵王おろし」に対抗する内陸防風林がありましたが、津波で大きな被害を
受けました。宮城南部沿岸では内陸防風林の存在は名取が唯一です。
説明会には、共有林地権者(のべ405人)代表の町内会長・区長15名が出席。
下増田村から名取市に統合され共有林となった経緯や、各町内会・行政区からの管理状況共有、
当プロジェクトに対し「我々はみな、感謝しなければならない」という言葉や
温かく心強い言葉が続き、会議は1時間半もかかりましたが、議事は問題なくシャンシャン。
市への「委任状」用紙が出席者に配布されました。
佐々木統括からは以下を説明。
「境界が不明瞭。施業前には必ず境界測量すべき。それが成されなければ実施できない」
「後々のトラブルを避けるためにも、境界から3尺下がって植栽するのが常識」
「生存木は当然生かすので、植栽本数は2割程度減る。場所によっては5割減」
「場所によって3種類の地拵え(じごしらえ・植栽前の地ならし・準備)がある。
3種類とは、①全刈地拵え、②散布地拵え、③筋置き地拵えがある。下刈りは年2回」
「また、場所によっては地盤沈下、陥没があり、国の補助などを利用し、盛土すべきでは?」
「内陸だから、クロマツに限る必要はなく、岩手県産マツノザイセンチュウ抵抗性アカマツが良い」
「植栽後、5年下草狩りをした後、ヤブツバキなどを種でばら蒔き、林帯幅の狭さを補い、防風効果を上げる」
「地権者の皆さまには、現場に実践にご協力いただきたい」
私からは
「この事業は全額、国内外・全国からの寄附者のお陰で成り立っている」と一言だけ。
HPにも掲載している決算報告や、3月の歩こうツアー・シンポジウムをご案内。
国土交通省仙台空港事務所からも、空港民営化の状況報告、「航空法」に絡む立木の高さ制限
などの説明がありました。
市議会で「内陸防風林もオイスカに」と話し合われてから、復興業務の多忙さゆえ
ここまで1年強かかりました。近々、県・市・オイスカ・再生の会で海岸林に加え
「追加協定」して来春から植栽が始まる見込みです。
地権者の同意、境界明確化が済んだ場所から協定締結。
最終的に追加協定面積は5~10haの見通し。

2025年11月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
月別アーカイブ

ページトップへ