NHK Radio Japanで16ヵ国語(英語を入れると17ヵ国語)で
放送された番組の日本語訳、②です。
東京に本部を置くNGOのオイスカがこの海岸林再生プロジェクトの推進を支援しています。
オイスカは、苗木を育て、植林を行うために企業や個人の支援者から寄附を募っています。
育苗は重要な部分を占めており、地元の被災農民達がその仕事を担っています。
オイスカの吉田俊通氏は、震災の直後からこのプロジェクトを率先して促進してきました。
吉田氏は、海岸林が被災農民達にとってどのような意味を持っているか十分認識しています。
(吉田氏):「農業の再生と自分の生活再建が第一ですが、次に来るのがクロマツです。
彼等は、何が何でもクロマツの海岸林を再生する覚悟です。
このことが、クロマツの林がいかに重要であるかを物語っています。
この地域の方々は、家、農地、トラクターなどの農機具、
また家族の誰かを失っています。
我々は、何としてでもこのプロジェクトを推進して彼等を助け、
将来に対して何か誇れるものを残さなければなりません。」
震災前、農民達の多くは同じ地区に住んでいました。現在、2か所の育苗場で苗木の世話をしています。
このプロジェクトを推進することは、農民達が集まれる良い機会となっています。
津波で家を失った大友氏は、奥さんと一緒にかろうじて被災を免れた納屋に住んで、
野菜を育てて生計を立てています。大友氏は、以前にはクロマツの苗木を育てたことはありませんでした。
しかし、海岸林再生事業が新しいやりがい、目標となっていると述べています。
(大友氏):「農家をやっていてクロマツを育てるなんてことはまったく考えていなかったね。
でも、マツの苗木は、髪にさわるように柔らかく、かわいらしいと感じるよ。」
オイスカは、プロジェクトのためにこれまで約300万ドル集めました。
この資金の一部が大友氏や他の農民達に対し給与として支払われます。
このプロジェクトは、震災で被災し、農業を諦めようと思っていた農民達に現金収入と希望をもたらしています。
オイスカは、今後、さらに690万ドルの寄附金を集め、
2020年までに5キロに及ぶ100ヘクタールの土地で約50万本の木を植え、
震災前にあった森林を復活させる計画です。
吉田氏は、被災住民達が海岸林を再生させることは、将来の世代のために保存することであると述べています。
(吉田氏):「農地を取り戻すためには
木を植えて海岸林を再生することが必要ということです。
地元住民達に最初から参加してもらい、海岸林を再生することが非常に重要です。
将来、住民達は、海岸林を尊重し、良く維持したいと考えるはずです。」
若い苗木が1.5メートルに成長するまでには10年かかります。
海岸林の再生には多分30年以上かかるでしょう。
大友氏は、海岸林が立派に育ち、再び日常生活の大事な一部になるように願っています。
(大友氏):「孫達が自分の年齢になった時には相当の大木となっているはずだよね。
孫達の孫達がマツ林の中で遊べる日が来るといいな。
私が亡くなる時には、どこか頭の片隅で自分が植えた木々が
自分の死後も残っていることを覚えているだろうな。」
震災前にあった海岸林は、400年前に植えられ、維持されてきました。
新しい海岸林がもっと長く、1,000年或いは2,000年間、維持されるよう願っています。
名取に隣接する仙台市では、来年の3月に国連の防災会議が開かれる予定です。
各国の閣僚達、政府代表団や国際機関の関係者が大勢集まり、
自然災害がもたらす被害をくいとめるための戦略について話し合いが行われることになっています。
吉田氏はじめオイスカの関係者は、
地元住民の復興に向けた並々ならぬ努力を国際的に広めたいと考えています。
海岸林が津波などの災害を減少させる効果がある点を強調しています。
NHK Radio Japan
小笠原よしお
北代ひろこ