間伐をするなら、最初から少しだけ植えれば?・・・
吉田です。ボランティアの方が来るとほぼ確実に聞かれる質問です。短時間で簡単に説明し、またそれで理解してもらうのはとても難しい質問です。まずは我々が「風通しの良い防風林」と呼んでいる、この写真から。
【風通しの良い「防風林」になってしまう・・・】


そもそも幅200mのクロマツによって、海からの塩分微粒子の9割ほどを「漉し取る」。それが海岸林です。
ここでは、2014年に広葉樹とクロマツを混植。しかし、写真の通り広葉樹はまったく育たず。つまり、最初からクロマツを数少なく植えるとこうなるというサンプルそのもの。これでは、いつになったら海岸林によって守るべき、農地への飛塩を防げるのかわかりません。しかも、5年程度で卒業できるはずの草刈りが必要以上に長くなります。写真の通り、下刈を終えた跡にも関わらず、葛は松のてっぺんまで生え放題。長い意味で、これもコスト高、割の悪い仕事そのもの。
【海沿いの公園での風倒木被害】
次に、海沿いの「公園」(つまり「森林」ではない)で、よく見る「風倒木被害」を紹介します。




これが、よくある質問への答えと言うのは、すこし乱暴かもしれません。ですが、「森林」とはお互いが支え合い、風から身を守り合うことは、写真からも想像しやすいと思います。枝同士が触れ合い、地中でも根と根が絡み合います。上記写真のような「疎林」には、支え合う力はなく、木々それぞれに風からの負荷がかかります。大きくなればなるほど風圧の影響を受けます。
「そもそも何のために木を植えるのか?」それぞれの場所に植える理由と目標があるはずです。そして、「何のために?」ですべての在り様が違ってきます。そこから設計する人、苗木を作る人、植える人、育てる人などプロ同士のリレーが始まります。第1走者の設計がなにより重要です。伝言ゲームのように、第1走者がミッションを果たしても、第2・第3が第1走者の設計を理解できていないと、ゴールインが遅くなるか、途中棄権になります。最初の2枚の写真は、第3走者が「何のために?」を理解せず、地主の意向も、仕様書も無視して、自分の会社のためだけに植えた結果だと思います。
「公園」には美観、景観、憩いの場であることが求められます。「公園」には「森林」「保安林」のような〇本/haという考え方・目安はありません。何本をどのように植えるかは、設計者・発注者のセンスやデザイン次第。3枚目~6枚目の写真の場所は、第1・2・3走者がそれぞれ・・・場所が場所なのだから、今までのようなよくある「公園」ではなく、福島県のように「防災緑地」タイプのような「公園」を目指しても良かったと思います。
3枚目~6枚目の写真の場所で目についたのは、①根周りの小ささ、②枝・葉の少なさ、③樹高に比べた幹の細さ。植えた時の苗木は、公園緑化木。「苗」というより、ひょろっと高くて細い「木」、公園用の苗を、海岸林が晒されるような強風の海沿いに植えたということです。林業苗のように「太さ」にこだわりがある、ずんぐりむっくりの小さな「苗」ではありません。公園緑化木苗は、「強さ」より「高さ」が求められるのだと思います。育苗では長い期間、密植で、畑で育てられ、掘り取って出荷する時に、幹・枝葉すべてを支える支根まで全部切ってしまうのか根周りが小さい。したがって、「公園」や「街路樹」には、「森林」にはない添え木素材が必要になり、その運搬・設置諸費がかけられます。
海岸防災林のように「森林」のなかでも「特に多機能が求められる森林」、「守るべきものを持つ森林」では、森林法による「保安林」に指定されます。「保安林」とは、Eco-DRR(生態系を活用した防災減災)そのものと思っています。よく知られる水源涵養保安林のほか、防災面では防風、飛砂防備、潮害防備、土砂流出防備、土砂崩壊防備、水害防備、干害防備、防火、防雪、落石防備、雪崩防備、防霧など17種類あります。(残りは、魚つき、航行目標、保健(レクレーション)、風致)。(海岸林に特に求められるのは太字)。
東日本大震災前の海岸林の植栽の基本は、10,000本/haでしたが、震災後の復旧の基本は、5,000本/ha(ha=100m×100m四方。したがって、1.4m間隔)。半分に減らした主な理由は、①冬の季節風が日本海側より弱いから枯死率も低くなるのでは?、②林業種苗法に則ったマツクイムシに強いクロマツ苗の生産力に不安があった。ということかと。最初に5,000本/haと聞いたときは、不勉強だったこともあり、違和感はありませんでした。防風・潮害防備保安林として10,000本必要と言われたら10,000本植えていたと思います。それが「仕様書」というもの。
独り言ですが、現場を重ねて、各地を見てきたいまなら、2,500本か3,000本でもいいのでは?とは思います。その主な理由は、①今回の宮城の盛土は、海砂ではなく、粘土が混じった山砂だったから、②海側の巨大堤防、頑強な防風垣・静砂垣の存在で風害がなかった、③コンテナ苗の枯損率が極めて低かった、④予想より生長が早かったなど。初期コストも下げられます。

