「生物多様性調査報告(林野庁)」種数の増減抜粋
こんにちは!インターン生の嶋村です。
私は、国際基督教大学の三年生で、開発学を専攻しております。オイスカでのインターンに応募したきっかけも開発学を実践する方法を学びたいという想いからでした。開発学では困難に直面している国や人々をいかに豊かにしていくかを学んでいます。そこで、実際に海外開発協力など開発に直結する活動を行っているオイスカで、その学びを実践に活かす力が身につけられると考えたのです。
オイスカで行われている様々な取り組みに関わらせていただく貴重な機会を沢山頂きました。海岸林再生プロジェクトの仕事にもご縁がありましたので報告させていただきます。
東日本大震災が発生した2011年、私は11歳でした。テレビで放送される津波の様子を目にし、状況を理解できないままに恐怖を感じたことを覚えています。11歳の私にとってその映像は衝撃的で、約10年たった今でも鮮明に思い出すことができるほどです。震災発生当時、これほど大きなショックを受けた私でしたが、振り返ってみると記憶に残っているのは震災それ自体の衝撃ばかりで、被災後のことをしっかりと考えたことはありませんでした。テレビでの放送を見て、復興支援のことはなんとなく知っている、その程度でした。
そんな私ですが今回、クロマツ植栽地の生物多様性についてのブログへの掲載を手伝わせて頂くことになりました。これをきっかけに、被災地の復興についても、改めて多くの学びを得ることができました。
「2019年度 名取地区生物多様性調査報告書」( 仙台森林管理署)より、プロジェクト開始して間もない2013年から2019年までの生物の種数の遷移が掲載されている箇所を抜粋しました。ものすごく分厚い報告書です。「公式な調査が名取でおこなわれたことは、ものすごく光栄だし、幸運。このような調査は、オイスカのような民間団体単独ではとても出来ない。毎年、結果をとても楽しみにし、仕事の励みにしてきた」と吉田さん。
【名取地区全データ】
2013 | 2019 | 増加数 | |
植物 | 299種 | 369種 | 70種 |
昆虫類 | 286種 | 362種 | 76種 |
鳥類 | 36種 | 48種 | 12種 |
哺乳類 | 5種 | 3種 | -2種 |
両生類 | 3種 | 3種 | ±0種 |
爬虫類 | 2種 | 1種 | -1種 |
魚類 | 8種 | 4種 | -4種 |
底生動物 | 4種 | 15種 | 11種 |
*鳥類、哺乳類、両生類、爬虫類、魚類、底生動物の2019年データは、内陸側保護スペースの調査。
*最終調査報告(要旨)は、今秋、林野庁東北森林管理局のHPで公開される予定です。
全体を見ると、生物種数がかなり増加しています!
*これまで現場で確認した生き物の話題(ブログカテゴリー「いきもの」)
本プロジェクトの担当部長である吉田さんのお話によると、正しい施業を心がければ多様な生物がそれに伴って育つそうです。この調査結果から、クロマツが丁寧に育てられていることが一目でわかります。防災林としてだけでなく、生物多様性を保全する役割も担っているのです。
今回、このように海岸林再生プロジェクトに関わらせていただきましたが、オイスカで活動させていただく以前は、このような活動が行われていることすら知りませんでした。そこで、プロジェクトについて丁寧に教えて下さったのが、担当部長の吉田さんです。何も知らない私にとって、驚きの多いものでした。特に印象的だったのは、このプロジェクトが被災された方々にとって、「防災林の植栽」以上の意味を持つというお話です。活動が現地の被災された方々のコミュニケーションの場所になっていることや、震災により壊滅的な打撃を受けた場所に種から緑を育てること自体に、復興の希望が感じられていることを知り、意義の大きさを感じました。
また、吉田さんの言葉の一つ一つには熱がこもっていて、関わっている皆さんが強い想いを持って活動されていることが伝わってきました。「月面に植物を植えるようなもの」とも言われた被災地でのクロマツの植栽ですが、約10年でここまで立派なクロマツが成長したのは皆さんの強い想いがあってこそだと感じさせられました。
このように、私のように「何も知らない」という人もいると思います。少しでも多くの人にこの大切なプロジェクトが伝わればと思います。