緑化技術参事の清藤城宏です。久しぶりにプロジェクトサイトに行きました。
その日、宮城県も梅雨入りが発表されたというのに猛暑、ペットボトルの水は離せませんでした。
植栽地を見て回って驚いたことに、植栽木の今年の春の伸びは全体に素晴らしいです。
生育が芳しくなく心配だった2016年度の場所も急激に伸びだしておりました。
春の最低気温が高かったのも影響しているのかもしれません。
今年の植栽地1.56haでは、多くの苗が下枝の枯れ上がったひょろひょろ苗を植えたにもかかわらず、
ここも恐らく活着率99%以上で、しかも新植にもかかわらず新芽の伸びが良いのには驚きで嬉しくなりました。

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2020年植栽地


さて、浅野さんのレポートにつづいて、誰が食べたのに答えます。
新しく建設中のサイクルスポーツセンター付近では、ポツンポツンと真っ赤になった枯損木が見らました。
良く見ると地際から4~5㎝くらいのところで一周して食害にあって枯死しているではありませんか。
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食害による枯死木


同行した浅野さんは、「ネズミの害だ!」と(すごい直感!)。
私の経験では、野ネズミは地際に巣穴をよく作り、新植苗の地下部の根を食害また地際の食害での枯損がほとんどでした。
食害位置が高いので野兎か他の獣類も考えられるとも思いましたが、調べてみるとやはり野ネズミの被害だということが判明しました。
彼らは、まず樹木の外側の樹皮をかじり落としてから、木に張りつくようにして内側の樹皮をそぎ取って食べる。
食べているのは形成層を含む細胞層で、内樹皮と呼ばれる植物の生きている細胞組織を食べ一周して食べたものは枯損に至っています。
外側の樹皮は死んだ細胞の集まりですから、普通それだけかじる食害はほとんどないのですが、その奥の内樹皮が露出する形成層あたりの生きた細胞が美味しいとなれば丸かじりしているものと思われます。
でも少しかじってその後放棄している軽微な食害で生存している植栽木もあるのです。
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この植栽地では写真のようなわずかな、かじりかけの植栽木も結構見受けられました。
そこで、
「なぜ途中でかじるのをやめたのだろうか?」
という疑問が沸いてきました。
北海道では野ネズミの好む樹種は、カラマツが圧倒的で、そのため、カラマツの野ネズミ被害の研究が進んでおり、私の抱いたその何故かが明らかにされてきています。
樹皮に含まれるエーテル類可溶性物質の量が、無被害木での抽出量は被害木より多く、またネズミの被害を受けやすい冬季にその差は大きく、被害の有無と樹皮成分のエーテル類の可溶性物質量の違いは一致していたことが明らかに示されていました。
クロマツが植栽された被害地を調べてみると、激しくかじられて枯れた木がある一方、被害のなかった木もよく見てみると、わずかなかみ跡がついていることが結構見られます。
ネズミは同じ樹種の木でも個体ごとに味見してから、かじっているのではないか?
コロナウイルス騒ぎで、消毒・殺菌剤としてエタノール70%溶液をよく使用しますが、野ネズミも生きるためには心得ていて、ここでもクロマツのエタノール抽出物の少ない個体をかじっている、かじりかけのクロマツ個体は恐らくエーテルが多かったのかもしれません。
今後、被害を観察しながら秋に殺そ剤を撒くかどうか、検討していきたいと思います。
最後に余談ですが、今回の出張で意外な方にお会いしました。
私は実はフィリピンの英会話チューターと会話を楽しんでいるのですが、その方から
「私の教え子にオイスカの海岸林ボランティアに参加したことのある方がいる」と聞かされ、びっくり。
コンタクトをとり、会うことにしました。なんと海岸林の強力な地元支援企業「仙台トヨペット」に務めている方で、
新入者研修で参加したということでした。全く不思議な出会いに話が弾み、お酒も美味しくいただく時も持てました。

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