10月25日晴天に恵まれた名取、朝は気温7度と身の引き締まる思いで松島森林総合の佐々木勝義さんと
お手伝いの高橋さんとで現場へ向かいまいした。今回はニセアカシアの枯殺試験の結果の調査でした。
はじめにニセアカシアにまつわる話を。
ニセアカシアは外来種、日本には1874年(明治7年)に北アメリカから輸入されたといわれています。
正式な和名は、ハリエンジュ(マメ科ハリエンジュ属、学名Robinia pseudoacacia)。
輸入された当初はアカシアと呼んでいましたが、後にアカシア(ネムノキ亜科ネムノキ属)の仲間が日本に輸入されてニセアカシアと呼ぶようになりました。ニセアカシアの花は、美しくそれだけでなく天婦羅にしても美味です。またハチミツの大事な蜜供給源にもなっております。
余談ですが、有名な西田佐知子の「アカシアの雨が止むとき」、石原裕次郎の「アカシアの花」その他歌に出てくるアカシアと歌われているのは、100%ニセアカシアで間違いないと思います。
さて、ニセアカシアのようなマメ科植物は、根に根粒を持ち、内部に根粒菌が共生しており、
この細菌が空中窒素固定能力を持っております。このため空中から窒素肥料を作ることが出来るのです。
そのため、肥料分の乏しい土でもよく育つため、早期緑化に用いられ植栽されてきました。
森林の形成が進んでくると、消ゆく運命にある先駆植物と考えられて導入されてきましたが、
その野生化、繁殖力は旺盛で、他の樹種を寄せ付けないアレロパシー(他感作用)を
持っていることが分かりました。河川敷では特に野生化し問題にもなっておりますが、
海岸林においてもクロマツを衰退減少させニセアカシアの単純景観構造を形成し、
また生物多様性の面からも問題になっている樹種です。
震災後、植栽地以外に下刈りをせず放置した場所では、下の写真のように3年も経つと2m以上にもなる
ニセアカシア林を形成し、しかもクロマツ植林地にも侵入している場所もあるのです。
では、本題に入りましょう。我々はニセアカシアの枯殺を目指して効果的な防除試験を試みております。
これまでの文献では、除草剤による枯殺が明らかにされてきておりますが、今回、効果が高くしかも出来るだけ
経費、労力を軽減することを主眼に、除草剤試験を行いました。これまで万能除草剤とし早くから用いられてきた
アミノ酸系グリホサートイソプロピルアミン塩(商品名ラウンドアップ)の効果は明らかでしたので、
今回はその①ラウンドアップと、ラウンドアップより価格的に1/3の
②ハヤワザ(成分グリホサートイソプロピルアミン34%+MCPAイソプロピルアミン塩6.5%)
それにさらに価格の安い③グリホエース(成分グリホサートイソプロピルアミン塩41%)の
三種の除草剤を用いました。7月末に下刈りをしてニセアカシアの切り口に原液塗布と十倍希釈液塗布を行い、
また下刈りのみの対象区を含め11か所のプロットを設置しました。
詳しい結果は、データを分析して報告しますが、今回は調査の感想を述べます。
どの調査区でも塗布したニセアカシアの切り株は褐変して萌芽は認められません。
特にハヤワザ塗布の区では(右上の写真)、細い切り褐変株をゆすると根腐を起こしているらしく
地際から簡単に抜けました。したがってラウンドアップのような価格の高い薬剤でなくとも
ハヤワザが最適ではないかとの感想を持ちました。ハヤワザはラウンドアップの34%液に
ホルモン系MCPAイソプロピルアミン塩6.5%が含まれている薬剤ですから、
MCPAイソプロピルアミン塩が相乗的効果を発揮していると思われました。
ちなみに刈り取っただけの対象区では根元直径の10㎜以下では、萌芽が見られない個体は多いものの、
右上の写真のように直径が太ければ太いほど旺盛に1mも達する萌芽枝もみられました。
根に貯蔵されているN養分量によるものと思われます。
ニセアカシアは根の萌芽性の強い樹種です。場合によっては50m以上にも根が伸び萌芽して
繁殖しているとも言われています。処理株が褐変枯死し、そこに萌芽枝が見られないといっても
根まで枯死しているのか気になるところで、その辺は春の開葉の時期でわからない言えなくもありません。
そこで、事業的にラウンドアップを塗布している場所で、褐変枯死した株を掘ってみました(写真左上)。
砂地の株から水平に1.4mも伸び硬い粘土層で直角に曲がってさらに伸びていました。伸びている根の茶褐色の
表皮が簡単に剥け、また根を折ってみると簡単に折れてしまいます。しかし根の中は水分をふくんでおります。
そこで健全なニセアカシアの根を掘り、その根と、除草剤塗布株で1m以上も伸びた根の一部分を
切り取りとった根を比較しました(写真右上)。右が除草剤塗布木から伸びた根、左が健全木からの根です。
除草剤塗布由来の根は、写真でもわかるように根内部の組織の色も少し褐色化していることが分かり、
やはり瑞々しさも違いますし、また根を折った時の弾力性も違いました。そういうわけで、
除草剤切り株塗布処理は、水平伸長しているランナー根まで枯殺に至らせていることが予想されました。
なおクズ繁殖地でも同じように試験を行っておりますが、ラウンドアップ、ハヤワザの除草効果は100%でした。
ニセアカシアを撲滅し、健全なクロマツ林を育てたいと願っています。
来年は下刈り時に、ボランティアの皆さんでハヤワザ塗布に協力していただくことになるでしょう。
その時はよろしくお願いいたします。