プロジェクト担当の吉田です。
この2年、よく伺うご質問に対してクイズを交えてお答えします。
まず、下の写真をご覧ください。
震災直後に踏査した森です。美しい!と思いました。

クロマツとヤマザクラが見事に混交林となっている海岸林。 (仙台市内国有林 撮影:2011年7月)

クロマツとヤマザクラが見事に混交林となっている
海岸林(仙台市内国有林 撮影:2011年7月)


津波を被っても、ヤマザクラは生きていた。

津波を被っても、ヤマザクラは生きていた

で、クイズです。
Q1.ここでは最初から同時にマツとサクラを混ぜて植えた? 
Q2.大きなサクラとマツの樹齢は、それぞれ何歳ぐらいだと思いますか?
ここは海岸波打ち際から600m以上も離れた内陸です。
海側には400m以上の幅のクロマツがあり、海からの潮風の影響を
受けにくい立地です。しかしここも当然、津波が直撃しました。
A1.同時に植えたのでも、交ぜて植えたのでもありません。
  人が植えたのはマツのみ。サクラは自生です。
A2.マツは100年超(明治時代植栽。サクラは50年程度か。)
  
結論から言えば、同時に交ぜて植えることは考えていません。
海岸林の海側から200mほどは、潮風のストレスなどが強烈です。
それに対して最も抵抗力があるのがクロマツです。
全国各地で、長い年月をかけ、多くの先人が数ある樹種の植栽を試す中で選び抜かれたものです。
技術者はクロマツを評して「犠牲木」とよく言います。
私たちは、海岸林の存在意義を、農業や生活を守るためのインフラと考え、
その機能を果たすための森づくりを最優先に考えています。
場所を選ばず広葉樹を植えても、塩のストレスに耐えられないと考えます。
マツと広葉樹を同時に混植する(ランダムに混ぜる)と、
いずれ、マツは広葉樹に光を奪われ、枯死すると思われます。
場所を分けて、同時に植栽するとしても、200m以上内陸で、
クリ・ヤマザクラ・ケヤキ・コナラなどを植えるのが妥当だと考えています。
「マツとサクラは相性が良い」と聞いたことがありますが、
写真のヤマザクラは、人の手で植えたのではありません。
クロマツが間伐され、光が差し込んだ場所で、自然に生えてきたものです。
海に近い部分に植えられたクロマツの、「身を挺した犠牲」のおかげで
クロマツに守られながら広葉樹は大きくなったのです。
写真の場所は、波打ち際から遥か内陸ですから、背丈の高い順に、
高:クロマツ、中:ヤマザクラ、コナラ、低:アオキ、ヤブツバキ、ヒサカキ。
下草も多数。4段構成。いい森でした。
宮城南部沿岸部の「極相林」(植物遷移の行き着く先)はヤブツバキなどです。
潮風の影響を受けにくい海岸林の内陸側では、長い年月をかけて
クロマツ→広葉樹とゆっくり遷移するのでしょう。
私には、森づくりはスケールの大きな子育てに思えます。
大きくて、長い気持ちで森づくりを見据えたいと思います。
拙速に遷移を進める考えはありません。

							
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