啓発普及部のグラゼンです。
8月26~29日まで、宮城県に出張してきました。
今回の出張は、ウズベキスタンでのオイスカの緑化プロジェクトが成功するかどうかの鍵となる、とても大切な出張でした。
ウズベキスタン人のティムールさんは、この4月に来日して西日本研修センターで有機農業研修を中心に、日本語や日本文化の研修を受けました。
オイスカは、2030年までにウズベキスタンで4万ヘクタールの緑化事業を実施することを表明していて、この目標を達成するには、プロジェクトの中心的役割を担う人物の育成が重要です。ティムールさんは、そのプロジェクトの中心人物となる予定です。
今回の出張では、100ヘクタールの海岸林の再生に取り組んでいる宮城県名取市の海岸林再生プロジェクトの現場を訪れて、植林技術の講義はもちろん、プロジェクトの現場を統括する佐々木さんの話を聞いたり、ボランティアさんと作業を共にすることで、ウズベキスタンでの緑化事業のアウトラインを一緒に考えることが目的でした。
「20世紀最大の環境破壊」
ウズベキスタンとカザフスタンにまたがる塩湖「アラル海」は、アラル海にそそぐ川の上流に位置するロシアで、綿花と水稲栽培のために大規模に灌漑をしたことが原因で、1960年ごろから少しずつ水量が減少。1970年ごろからは急激に水量が減り湖底が見えるようになり、わずか半世紀で湖の面積が10分の1にまで小さくなりました。
かつて湖底だった塩分を含んだ乾いた砂が巻き上げられて、周辺の住民や家畜に健康被害が発生しています。「昔はなかった病気になる人が増えました。塩分を含んだ砂がついた葉っぱを食べた牛が、病気になってたくさん死にます」と、ティムールさんは言います。
アラル海についてはこちらの記事が参考になります。
朝日新聞デジタル「干上がったアラル海のいま 環境破壊、報いの現場を歩く」
海岸林再生プロジェクトの現場に滞在した3日間、プロジェクトを担当する吉田俊通部長と現場を一緒に歩きながら、プロジェクト全体の戦略をどのように立てたか、どのように課題を乗り越えてきたかを聞きました。現場を統括する佐々木統括からは、造林のプロとして条件の悪い場所では植林しないことも大事な判断だというアドバイスもありました。
規模や国、植える植物は違うけれど、同じ乾燥地での地元を巻きこんだ造林という点で、共通するものがあり、今回の滞在は、ウズベキスタンでのプロジェクトの成功に欠かせないと長部長は言います。
ティムールさんに、プロジェクトの現場で最も印象に残ったことを聞くと、いくつかあげてくれました。
▶「2011年に津波で被害を受けた海岸林を、オイスカを中心とするプロジェクト関係者がすぐに再生させることができたことに驚きました。ウズベキスタンでは、アラル海の干上がりの問題は60年前からあって、みんな問題だと言うけれど、言うだけで、対策はほとんどされてきませんでした」といいます。住民も地元行政も問題とわかっていても、動く人がいなかったのだそうです。
▶「ボランティア活動に一緒に参加してみて、炎天下で8時間も活動しているボランティアさんたちの姿勢には本当に驚きました。交通費やお弁当代もボランティアさんが負担していると聞いて、さらに驚きました。ウズベキスタンでは、ボランティアにかかる経費はすべて受け入れる側が負担しなければなりません。
(仙台空港に拠点を置くエアライン)IBEXさんの役職が上の方がボランティアに参加していたことにもびっくりしました。私の国では、地位の上の人はボランティア活動には参加しません。ボランティア活動をする必要があれば、自分の代わりを雇うこともあります」
▶「19歳の娘さんとお父さんが一緒にボランティア活動に参加していたことにもとても驚きました。ウズベキスタンでは、宗教上、父親と娘が一緒にいるところはあまり見ません」と文化の違いも教えてくれました。
名取の100ヘクタールとウズベキスタンの40,000ヘクタール。
ウズベキスタンで緑化に取り組もうとしている規模の400分の1の規模なのに、あのスケールの大きさ! 40,000ヘクタールはとてつもなく広い。
自分に本当にできるのだろうか?と不安な気持ちがよぎったようです。
40,000ヘクタールは本当に気が遠くなるような広さです。もちろん簡単なことではないと思います。でも、一人ではない。もちろん私も協力しますし、オイスカみんなで応援します。40,000ヘクタールの緑化はきっと実現できると思います。
3日間、ティムールさんと一緒に行動して、「ウズベキスタンの砂漠化の危機を解決したい」という彼の真摯な姿勢が伝わってきました。ウズベキスタンが抱える水問題や呼吸器疾患などの話を聞きながら、私もその解決の一端を担いたいと思います。