タイ南部・ラノーン県駐在員の高木です。(前回のブログ)
7月29日、初めて「海岸林再生プロジェクト」が進む宮城県名取市の海岸林を訪れました。
来年予定している、タイからの訪日研修の計画を立てることが目的でした。
オイスカで仕事を始めて1年。
山育ちの私は、海岸林やプロジェクトについて知らないことばかりです。
海岸のマツが保安林で国や自治体が管理する公共事業だということも、そもそも日本中の海岸林が歴史的にすべて人の手で植えられたものだということも、聞いて驚きました。
恥ずかしながら、海辺にはマツが自然に生えるものだと思っていたのです。
プロジェクトを担当する吉田部長の説明を聞き、小林省太さんの「松がつなぐあした~震災10年海岸林再生の記録」を読んで、オイスカ流の住民参加型植林プロジェクトが、海岸林では異色なものだったということを改めて認識しました。
タイのマングローブ林はもともと天然林ですが、1970~80年代にエビ養殖田の開発等で顕著に減少しました。これを受けて、国は1989年にすべての天然林の伐採を禁止。マングローブ域を保全林に区分し、回復のための植林を進めています。
そうした中、オイスカは2000年から延べ2,000haのマングローブ植林を行ってきました。2021年から行っている日本NGO連携無償資金協力事業では、マングローブを植えるだけでなく地域産業を発展させることを目的に活動しています。名取市の海岸林と農地の関係や復興への姿に通じるものがあると感じ、研修先に決めました。
訪日研修で訪れる予定の人たちは、役人でも学者でもなく、小さな漁村のちょっとしたリーダーたちです。日本で自分たちとかけ離れた暮らしを見るのではなく、震災後、住民やボランティアが主体になって海岸林や地域を復興してきた様子を体感し、交流することで、自分たちの活動や地域を再発見してもらえたらと思っています。外国に出ると、国内で学ぶより客観的に自国の文化や暮らしを見つめなおすことができるものです。
7月30日は海岸林再生プロジェクトのボランティアの日でした。私もクズやツルマメ抜きに汗を流しました。なんでも草を刈ればよいというのではなく、松葉にちゃんと日光が当たるようにしてあげればよいのだということも初めて知りました。常連の方、初めての方、さまざまでしたが、大変な作業を一緒にすると一気に距離が縮まります。普段の仕事とは違う充実感も味わいました。松林ももうただの風景ではありません。参加された方が「いつかこの林が災害を食い止めたとき、自分も誇りに思うだろう。子どもにもそうした思いを感じてほしい」と話したことが印象的でした。
2日間の海岸林体験の後、七ヶ浜や松島へ足を延ばして、地域おこしや特産品づくりの事例を見て回りました。吉田さんがすでに下調べをして、宮城県森林整備課からもいろいろな情報提供、アイデアをいただきました。
さあ、どんな研修になるか。計画を立てている時が一番楽しいかもしれません。