どんな人が何人受講するのか、敢えて聞かずに当日を迎えた。
2011年11月28日、宮城県中央部の大衡村の県林業技術総合センターで講習会が開催された。
トヨタ東日本が稼働した場所としても知られている。我々にとっては、
5月26日に調査団でマツノザイセンチュウ抵抗性クロマツの採種園を見た場所だ。
受講費用は14,000円。講習会は終日。
講習が始まり、受講者は11人。そのうち10人がオイスカの関係者だと知った。
本当に拍子抜けした。
しかし、よくよく考えてみれば、私たちに対し、育苗をしたいとの申し出の大半は、被災地外の方だった。
とてもそういう状況ではないのだと思った。
講義は海岸林・クロマツに限らず、山のこと、杉・檜も含まれる。林業種苗の産地と系統、
種苗の生産技術、宮城県の森林・林業の現状、森林法・林業種苗法などの法令、
病害虫とその駆除、宮城における育苗の暦など多岐にわたる。
事前に、県職員のご担当が地元の人に「テストはないから」と繰り返していたから、
我々は「何か掛け合いがあるな」と楽しみにしていた。
朝の集合で、最後に「逆質問」をやると発表。平たく言えばクイズを難しくしたようなもの。
昼食の時間も我々は盛り上がった。何故なら一人、9時10分には居眠りを始めた人がいたから。
もちろん、メールでオイスカ本部に速報済み。
一日の最後の「逆質問」を無事こなし、免状を頂くことになった。
地元の方たちも真夏に何度も通った技術センター。
名取の農家の方たちがいただく場面を写真にしようとしたが、妙に手が震えて、ひどくピンボケした。
技術センターの部長さんが、「心強く思っています」とはっきり言ってくれた。
その一言は本当に嬉しかった。いよいよ現場が始まるんだという実感が湧いた。
県知事のお名前と公印が押された免状を手に「記念撮影だー」とひと騒ぎ。
騒ぎの中、先程頂いた自分の免状を見失った。(後日無事発見)
*いつもいつも、長文で、内輪の振り返りをすみません。
長い仕事になるので、記録にしておきたくて。

スギ・ヒノキ・マツなどの針葉樹は、経済林として日本の経済を支えてきた。それらの種子「林業種苗法」の規定のもと、各県によって採種され、種苗組合など定められた林業事業体に加盟している人に県から払い下げられ、そして2年~3年はかかる育苗が先を見通して計画的に実施される。採種先が管理され、遺伝子攪乱などの諸問題の歯止めにもなっている。
「そういう法律は取っ払えば良い」、「既得権益保護だ」という意見をよく聞いた。非常に複雑な心境だった。知られざる世界とはいえ、その分野を支えてきたプロを「ないがしろ」にすることではないだろうかとも心の中で思った。森林・林業の分野で生きる人の生活、プロ軽視の傾向の最たるものだと感じた。しかし、知られていないことに起因しているため、説明すれば多くの人が納得してくれた。
2011年5月、行政当局との初協議の折、林業種苗法に則った育苗への参画を表明し、宮城では新規参入希望者がないが為、数年開催されていない「登録講習会」開催を宮城県に申し入れた。当時は震災直後。宮城県も当然、半信半疑であった。         
また、種苗組合にとっては、我々が組合員として受け入れ難い存在であれば、理事会で加入を否決すれば、講習会を修了しても意味のない存在になる。従って、オイスカにとっては①講習会の開催、②組合への加入が我々の折衝のポイントであった。
しかし、既存農家を圧迫する存在ではないことと、被災地の雇用とするという我々の趣旨に共鳴いただいたこと、そしておそらくは、宮城中央森林組合や、国や県のご担当などの目に見えない後押しのおかげで、「肩を組んで、ともに海岸林を再生しよう」との種苗組合組合長の言葉を頂き、8月には、今秋の講習会開催を県が決定した。既に育苗をしたいという問い合わせは、国・県にも、オイスカにも多く寄せられていた。県との折衝では常に、「講習会開催を広く公示してほしい」と申し上げた。

森づくりは人づくり

2013年1月30日( カテゴリー: 本部発 )

じつは私、大学生当時、オイスカで働く決め手にしたのは「人づくり」という言葉でした。                                 私が所属していた体育会ソフトテニス部と共通していると思ったのです。                                          近年最弱と言われながらも、目指すチームの姿に達しようと毎日必死でしがみつき、                                                      あれ以上ないと思う限界近くで戦ったこと、薫陶を受けた監督の顔を、                                           今でも苦しいときに思い出します。(そういうお正月でした。)
「お金を残すのは下、仕事を残すのは中、人を残すのは上」とも言いますね。                                        私、この仕事を通じた最大の目標はそこです。                                                       オイスカがこの仕事に取り組む究極の意義はそこにあると思ってます。
ですが目下の日常は、崇高な「人づくり」などとは程遠く、                                                         業務に追われ、最近は、ヨソのことを考えてウワの空の時もあり、                                                   大事なものをモノをなくすことも多く(携帯、名刺入れ×2、家の鍵、シャチハタ)、                                   ゆとりのない毎日を何とかしようと努力している程度の毎日です。
先日、現場の佐々木さんに、別れ際で言われました。                                                「生半可じゃない仕事だけど、お互い、何があっても平気な顔をしてような」と。                                                             自己鍛錬が出来ていない、感情むき出しの人間なので、全くなっていませんが、                                            我にかえったような、ほっとしたような、落ち着いたような気持ちになりました。                                       私の中の「佐々木語録」がまた増えました。
正直なところ、そういう日常です。                                                             我々、今はまずきっちり海岸林を再生することに全力を挙げていきます。                                           しかし、それに加えて心の奥底で、「森づくりは人づくり」という我々の信念を、                                        苦しくても復唱し続けようと思います。
わが社の現場の大ベテランの方で、外部の人から「オイスカってなんですか?」と聞かれて、                                    「俺がオイスカだ」と言ったという伝説があります。(笑)                                               まさに人づくりをしてきた人です。                                                             組織の理念を、体と行動で体現する後ろ姿に深く共感してきました。
今年のテーマは「植栽が始まる前の準備」。                                                            人づくりが含まれます。                                                          我々の居場所は緒に就いたばかり。                                                              道のりは長く、目指すは高い。ですが、一歩ずつでもしっかりやってゆこうと思います。                                  寝ても覚めても思い続け、狂ったように考えれば、本願は必ず達成できると思っています。
これから作る森は、我々が死んだ後も、愛されながらしっかり生きてほしい。                                                心底そう思うから、今後のために、恥ずかしいですが記録として書いてみました。

2011年7月のシンポジウムを開催した頃から、日々問い合わせが相次いだ。
実に様々なお相手、内容であった。中でも圧倒的に多かったのが
「自ら苗木を育てたい」というお申し出。
今も断続的に続いている。る。皆様の考え方は、一般市民からすれば至極もっともなことだと思う。
手帳をもとに少し振り返ってみた。
「キャンペーンでドングリを配布し、お客さんに育ててもらい、植えさせてもらえないか」(都内)
「工場の空き地で労組組合員に苗を育てる指導をしてもらえば協力できる。」(都内)
「息子がクロマツ種苗農家を営んでいる。買ってもらえないか。」(東北日本海側)
「常緑広葉樹を4万本育てている。買いませんか。」(四国)
「子どもたちに苗木を育てさせ、一本●円の寄付を募る手伝いをしたい」(都内)
「限界集落の耕作放棄地を使って、地元の老人で育苗したい」(中部)
「潜在植生である木々を植える趣旨で是非一緒に」(関東)
「費用の支援と、広葉樹を育てる指導にきてくれれば有志で」(中部)
個人的な感想を言えば、種苗生産の現実や、海岸林の復旧計画など
知られざる状況は、一般の方には 理解しようにも、無理がある。
できるだけ丁寧に答える努力をしたつもりだ。
震災前から苗木を育てて生計を立ててきた種苗農家の人たちの顔を思い浮かべながら。
私たちも2011年5月頃までは、クロマツ・広葉樹の育苗シュミレーションを一応検討した。
しかし、「海岸林」はクロマツが主林木となろうこと、林業種苗法の存在、
担い手は誰が相応しいか、支援者側への技術指導や諸費用、ロジスティックなど総合的に考えた。
対象地は「保安林」に指定されている場所でもある。苗木は仕様書に沿うことが求められる。
従って、あくまでも行政が立てる復興計画への協力を大原則とし、担い手としては
被災地農家の有志に対し、雇用を通じて生計支援しながら実施することを5月末には決めた。
お問い合わせには応じることはできなくても、精一杯説明する努力をするのも
先陣を切るものの責務と考えた。このお問い合わせがきっかけで、大変熱心に協力して下さる方もいる。
ブログでたびたび登場する神奈川のIさんはその代表の一人。
しかし、それは稀なこと。やっぱり皆さん自分がやりたいのだから、仕方ないことだと思う。
今後長期間にわたり、行政・種苗農家は総力を挙げて海岸林再生に対処することになる。
我々はその一員として努力する道を選んでいる。

震災から間もなく2年が経過しますね。                                                              会員企業でもあるH.I.Sより海岸林視察ツアーのご提案をいただき、                                                      3月9日(土)に実施することにいたしました。                                                           翌日は大河ドラマ「八重の桜」の福島を訪問する企画です。
当プロジェクトに初めて訪問される方をイメージして、予定を組んでおります。                                             オイスカのパーツでは、被災海岸林と、国の治山工事の様子(工区には立ち入れ                                               ないですが)、育苗場や、被災した農家の方からお話を伺う予定です。                                                精一杯説明しようと思います。
育苗を共にする地元の農家の皆様は、日々ご自身の農業にフル回転で従事し、                                               その上でクロマツに情熱を注いでいます。                                                                 今回は第1育苗場班長ご夫妻が説明する予定です。この機会をぜひ活かしていただければ。                                        地元自治会長もされており、まさに地域のために奮闘されている人です。                                            (ブログで度々出てくる「とんちゃん」には100%関与しています)
当ツアーにご関心の方は下記をご覧ください。                                                       http://www.his-j.com/tyo/eco/japan/eco-tohoku_2013_3.htm
http://ameblo.jp/his-eco/entry-11455844999.html

オイスカ愛知県支部からの今後の支援への熱い期待が込めて、                                     1月17日・18日と海岸林再生プロジェクトを視察・業務調整に行きました。
今後の活動への熱い期待を込めて。
私にとっては、2回目の視察でしたが、                                              今も元の住宅地が何もないさら地になっている事に想像を超えた                                       被害の大きさを改めて感じました。
名取市立閖上中学校を見ましたが、校門を入ってすぐのところに                                       碑があり、碑の隣に勉強机が置いてありました。                                                      机の上には、亡くなった子供たちの名前が書かれてありました。                                               友達が書いたようです。                                                                    子を持つ親として、子供を天災で突然に失う痛みに思いを馳せました。
現在のプロジェクトは、苗場でのクロマツの育成です。                                                     第一育苗場と第二育苗場があり、2箇所に分かれています。
第一育苗場に事務所(プレハブ2棟)が隣接しています。                                                       苗場は、雪に埋もれていましたが、クロマツの苗木が15cm程に元気に育っていました。
平成26年の春までに30cm位まで伸ばして海岸に植える予定です。                                            国によって高さ3.5m、幅200m以上の盛り土をした後、植える予定だと聞きました。                                     とんでもない大きな事業です。
滞在中に、(株)ニコン・読売日本交響楽団とJTBコーポレートセールスが縁を繋いで、                                     3月6日(水)に読売日本交響楽団さんによる復興支援特別講演「きぼうの音楽会」in名取と                                    海岸林再生プロジェクトの写真展を名取市市民会館にて                                        同時開催する準備をしていました。地元住民による名取市海岸林再生の会、                                         名取市などの行政、企業・個人などとオイスカが協働している舞台裏でした。
同じ志の団体や個人が縁を繋ぎながら、夢の実現の為に活動しています。
愛知県豊田市では、2月9日(土)に豊田市民会館において                                            「白砂青松の海岸林を再び」というテーマにてコンサートと講演会を行います。                                         名取市海岸林再生の会の会長である鈴木英二氏も現地の報告をしていただきます。                                       http://www.oisca.org/kaiganrin/751                                                  お近くの人は、是非ご参加下さい。
ご連絡先:オイスカ中部日本研修センター 電話0565(42)1101
オイスカ愛知県支部  森田

今は国土交通省の防潮堤工事のダンプにも増して、                                         林野庁の表示を付けたダンプの数が目立ちます。                                          目に見えて工事が進捗している印象です。                                            ちょっと工事を近くで見ようとするのも明らかに邪魔です。
名取市南部は8工区71haの工事が落札され、                                            約500,000m3の盛土工事と、「東北森林管理局HPの入札情報」で公開されております。
10tダンプで約15万台分の購入土、津波堆積物、コンクリートがら等が持ち込まれ、                             今年度中工事完了を目指しているのだと思います。
名取南部だけで15万台のダンプとは圧倒されます。
地下水位が高く、排水も悪く、今は湿地状になっている箇所の多い                                 宮城南部の海岸林再生の最大の特徴は「盛土」です。                                       海岸林の主林木となるクロマツの深根性を発揮するため、ここでは生育に必要な高さと                         見込まれる3.5mの盛土が設計されました。
人工物の上で木を植えるのですから、今は違和感がありますが、                                    後々は、その昔、人の手で造られたと言われている空港近くの北釜地区の高みと、                           津波を経ても、今もそこに生える木々のように、生活も守るインフラになると思います。
*技量が追い付いていないため、写真添付はまた後日。
ごめんなさい。

東京のバレー教室の子どもたちにも募金を協力して頂きました。
こんにちは。
私は小さい頃、上海にあるオイスカ幼稚園に通っていました。
園内には、たくさんの木や、木で作られたおもちゃがあったり、
プールの中にお魚をはなして、その中で一緒に遊んだり、
楽しかった思い出 が沢山あります。
オイスカの幼稚園で本当に良かったです。ありがとうございました。
今回海岸に木を植えるプロジェクトに参加出来て本当に嬉しいです。
大好きなバレエを踊って、自然のため、人のために役に立てました。
木が大きく育ってくれるように願っています。よろしくお願いします。
ps. 10ヶ年のプロジェクト、今11歳の彼女が20歳になっていますね。
      子供の成長と松の成長が重なる思いです。     
      小さな苗がいづれ彼女たちを守ってくれるのですね。
      子供も苗も健やかに育ちますように。宜しくお願い致します。
      ご紹介されていた「森林飽和」も読ませて頂きます。
      新聞で松が発芽しているのを見て、改めて植物の生命力の強さ、
   またこのプロジェクトの確かな信頼を感じました。
   今回このようなかたちで参加させていただき、ありがとうございました。
   今後もクラスの皆とともに、松の成長、復興を願っております。
                                                              *先生より。

国土交通省の防潮堤工事に加え、林野庁の治山工事も始まっているため、                                      工事現場に近寄るのは全くはばかられる雰囲気が現場には漂います。
視覚的にも、とてもわかりやすい資料を国土交通省仙台河川国道事務所HPで                               偶然見つけました。                                  http://www.thr.mlit.go.jp/sendai/kasen_kaigan/fukkou/pdf/121102.pdf                                                     ご関心があればぜひご覧ください。
それにしても、みんな資料を作るのが上手でうらやましい。

国の「治山工事」が目に見えて進んでおります。 *海でも「治山」といいます。
全体を掴むのに良い資料を東北森林管理局HPにあります。
http://www.rinya.maff.go.jp/tohoku/koho/saigaijoho/h23_higasinihon_daisinsai.html
特に
●「海岸防災林の再生について(宮城県沿岸域現地連絡調整会議H24,11,7開催)
●海岸林等の復旧の考え方 *各地域の方針
この資料が視覚的にもわかりやすいです。
名取市の海岸林は全体138ha。
大まかにいうと、海側より県有林、市有林、国有林の3列になっており、
北部は依然「がれき置場」ですが、南部約70haは10工区に分けて
昨年から随時入札がかけられ、治山工事が始まっております。
そのうち8工区が落札済みです。
ここでの治山工事とは主に、「測量」、「生育基盤造成工」(盛土工。倒伏木処理含む)、
「作業道工」「防風柵工」などから成り、仙台の七北田川以南~福島県境の山元町までの
宮城南部に関しては、被害程度があまりに甚大なことなどから国・県・市有林の違いを問わず、国によって施工されます。
*これを民有地直轄治山事業(通称:民直)という。大災害後に年数件実施されています。
この治山工事の費用は復興交付金が原資です。
「平成24年度から概ね5年で基盤造成を行い、10年以内で植栽を完了する」
というのが大方針です。
参考)盛土工事の状況は東北森林管理局HP「入札情報」
http://www.rinya.maff.go.jp/tohoku/apply/publicsale/index.html
*一般競争入札一覧、契約に関する情報

名取にも盛土が出現しております。
明日以降、レポートします。

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