国際協力ボランティアの木村です。
三井物産環境基金様の助成金によって、今年度広葉樹の意育苗を開始します。 先週の出張で広葉樹の播種(種まき)を地元の方、 宮城中央森林組合の方とともに、
今後の練習を兼ねて行いました。
種子は前年の秋に、名取と仙台市内で拾い、一冬冷蔵保存しました。
本当は採り播き(採種直後に播種)する方が、15%以上発芽率が良い様です。
クロマツに加えて、なぜ広葉樹を植えるのかという疑問がありました。
そもそも海岸林は、海岸の最前線で必死に風、砂、津波などから人、建物、農作物を守る
「社会インフラ」であり、そこに植える木として先人が数ある樹種を試した中で、
消去法でクロマツが「先駆樹種」として選ばれたと教わりました。
幅200m以上にわたって植えられたクロマツ林があると、大半の砂や空中塩分が内陸に及ぶのを阻止するそうです。
植栽後、数十年たつ中で、クロマツがあることで沿岸部の植生は多様性を増し、
広葉樹なども育つようになり、ゆっくりと自然豊かな森へと移り行くということです。
宮城県南部の海岸林再生の植栽樹種としては、クロマツに加え、
塩などのストレスが比較的少ない内陸部に限り、
クリ、ケヤキ、ヤマザクラ、コナラなどの広葉樹も選ばれております。
海岸林の大半は国、県、市の土地です。すべての関係者とじっくりと話を進めて、最終的に素晴らしい森を目指したいと思います。
まず、広葉樹の種蒔きの結果は、以下のようになりました。
種類 |
Kg,本数 |
面積(㎡) |
コナラ種 |
3.6kg/約3,600粒 |
7.0㎡ |
クリ種 |
3.5kg/約1,000粒 |
7.0㎡ |
コナラ苗(土付き) |
35本 |
1.6㎡ |
コナラ苗(ポットなし) |
63本 |
3.0㎡ |
コナラ苗(ポット付き) |
70本 |
3.2㎡ |
コナラ苗(無肥料、山砂) |
数本 |
|
コナラコンテナ(種) |
0.072kg |
24ポット×3コンテナ |
クリコンテナ(種) |
0.072kg |
24ポット×3コンテナ |
※ケヤキは、昨年が不作で、入手できず
※マザクラ種子は、今後仙台・名取市内などで採種予定。
露地の種まき、コンテナへの種まき、苗木の植え替え、それに加えて、少し時期が早いのですが、
ヤマザクラの挿し木を試しにやってみましたので大忙しでしたが、だいたい半日で仕事を終えました。
各、作業の要点だけまとめました。
露地の種まき
種は基本的に一晩、水につけておき、浮いた種は捨てます(選種)。
種をまく、路地はレーキでならして踏み固めます。
そこに均等になるように種をまき、土を種の二倍以上になるようにやさしくまきます。
その後は敷き藁をしてたくさん水をまきます。寒冷紗をかけて終了です。
コンテナへの種まき
コンテナに土を入れて、4cm程沈めて、固めます。
その後、種を入れ、土をかぶせ、水を与え、もう一度、土をかぶせ、完了です。
苗木の植え替え
試験的にポット付き、ポットなしで行いました。
要領としてはクロマツの床替え移植と同じで、深く、土を掘り、そこに苗木を埋めます。
最後はクロマツのように踏みつけはしません。代わりにネキリ虫予防としてネキリアースという農薬をまきます。
ヤマザクラの挿し木
第一育苗場から歩いて50mのところにある、ヤマザクラの枝を使いました。
まず、半熟枝か熟枝のヤマザクラを選定し、水につけておきます。
その間に台所用品である水切り容器のようなものに水はけの良い土を入れます。
なければ、発泡スチロールなどで代用。水が下の穴から染み出すぐらいに水を入れます。
挿し木の方は枝底に切り込みを入れ、基部の葉は切り落とし、先端の葉を半分切ります。
挿し木するときは挿し木する位置にあらかじめ、穴をあけてから挿し木をします。
挿し木後はミスト状態を作るために、ビニール袋をかぶせておきます。後は毎日、水をかけます。
つたない説明でしたが、以上、ご報告とさせていただきます。
クロマツの発芽 第2報
今日は草取りと水遣りにお二人が。
いつも本当に熱心に来て下さる。
*HPの動画(最上段)「芽生え」にも、二人の気持ちは紹介されています。
「仮設(住宅)に居ても、しょうがないからねー」
「今年は草取りが大変だぞー」
年に一度の種蒔きは4月20日。
それから24日が過ぎ、5月13日に発芽を確認したとの連絡を受けました。
私自身は5月17日に自分の目で確認しました。
こういう時は、何もかも忘れ、本当に無心になります。 なーんにも考えない。
二人は次々に仕事を進めます。
次は、コンテナ苗に水遣りを。
この下には、300ccの土が入った24つ穴があるトレイのような「コンテナ」が 565台あります。第2育苗場には375台あります。
マツノザイセンチュウ抵抗性クロマツ約75,000粒・500gを連休明けに播種しました。
今年は水遣りも大変です。
お二人の服装見て下さい。名取は、まだ少し冷えますね。
従来から、スギ、ヒノキという日本の木材を担ってきた針葉樹を植栽するための苗は 畑に直接播種する「露地栽培」で育苗されております。
露地栽培の場合は、完全に気候・天候に100%向き合う必要があります。
日本の林業は各方面からダメ出しばかりされてきましたが、技術者はそれでも より良い方法、低コストの方法を全国各地で模索し、研鑽を重ねているのも事実なのです。 林業も全産業の例外ではありません。
例えば育苗。
露地栽培に代わる更に良い方はないものかと。
私、オイスカを一度退職した2007年、三重県でヒノキの苗をどこの家庭にもある ビニールホースで育苗しているのを見ました。それまでは、根が裸で山に来た苗か、 ポットに入った苗しか知らなかったため、意味が分かりませんでした。 宮崎県などでも独自の方法を模索しています。
これから東日本大震災からの海岸林復旧は、マツノザイセンチュウ(松くい虫に対する)
抵抗性クロマツを、コンテナで育てるという方法が大きな位置を占めてくると予想しています。
東北地域では特に、その過渡期に突入するタイミングと、東日本大震災がぶつかりました。
名取市海岸林再生の会の代表3名が属する、宮城県農林種苗農業協同組合もすでにコンテナ育苗に取り組んでおり、従って、我々も、コンテナでの育苗に取り組みます。
技術改良の過渡期です。
露地・コンテナの両者を比べると一長一短。
使用する設備も異なります。クロマツ育苗自体初めての我々。
流動的要素や読めない点も多く、不安はもちろんありますが、
国や地方自治体の計画に協力するのが、基本スタンスです。
実践部隊として、独自の情報や知識を常に入手し、 果敢に挑むつもりです。
コンテナって何?
それはまた、明日以降のブログにて。
東京にもあったんだ…
国際協力ボランティアの木村です。
日曜日に友人と一緒にお台場で散歩&ビールを楽しんできました。
お台場海浜公園を散歩しながら自分の目に飛び込んだものは、 なんと、青々とした「マツ」!
大きいものは10mぐらいのものも。
東京に住むのは初めてで、あまり東京を知らないのですが、こんなところにもマツがあるのだと驚きました。普段は、育苗場でまだ小さいマツの苗を必死に「海岸林再生の会」やボランティアの方と育てているので、フジテレビを前に堂々と立つマツはまるで日本の遺産のように感じられました。ただ、調べたところ、このお台場のマツは誰がいつ植えたのか文献がないそうです。
おそらく、「海岸林再生プロジェクト」に関わっていなければ、素通りしブログの記事にもしなかったことでしょう。
なんか、ブラブラ、歩いていても、ふと、仕事のことが気になってしまうんですね(笑)
日曜日の夕方にマツを背に芝生で寝転んで海風を感じ、つい、福山雅治の「東京にもあったんだ」という曲が頭の中で流れていました。 だから、このタイトルです!(笑)
その後はビールをビアガーデンで飲んで、気持ちよくなって帰りました。
皆さんもこんな休日を過ごしてみては…
まとめシリーズ③ (速報)クロマツの床替移植結果
今回の床替移植は、昨年播種をして育ててきた9万本の苗の根を15cmに切り詰め、 スペースを広げて植え替えを行ったものです。
機械を使い、またボランティアさんも借り、一部人力で丁寧に植え替えました。
この9万本というのは苗木専門の業者さんでもこんなに広い面積 で栽培しているところは稀です。
その床替の結果を5月中旬に見てきました。
残 念ながら、1ヵ月後の結果をみると約3割が枯損しておりました。
普通は1割程度ですので、少し高い枯損率です。その原因はいつか考えられます。
①土壌の「乾燥」に 耐えられなかった
②床替直後、雪が降るほどの寒波など、「気温の乱高下」に見舞われた
③スギの植付機(マツ用はない)にあわせて「根を切り詰め過ぎて」、
水分養分を吸収する能力が必要以下となった。
④機械植え の為、苗木の床固めが不十分(植える穴と苗との間に隙間が多い。
人力の場合は足で踏み固めます)なため根からの水分養分吸収を妨げた
今後、窒素肥料 の追肥をおこなって体内の充実をはかることが必要です。
真心を込めて、初めてクロマツ育苗に取り組んだ被災地関係者一同、 枯れた苗を見て胸を割かれるような思いをしました。私自身、落胆した声 も聞き、顔も見ました。
そもそもの海岸林再生の厳しさに加えて、津波で遮るものが一切なくなった荒野で、 種子から稚苗を育てる現実と改め て向き合いました。ですが、障害を経て経験を積み、心豊かになると思います。
今後も数々の困難が待ち受けていると 思いますが、今回の反省を十分生かし、 誠心誠意取り組んでゆこうと考えております。
「ハジメちゃん」を超えるか?
当プロジェクトに新人選手、木村肇さんが入りました。
海岸林の本場、遠州灘を擁する静岡県浜松市出身。
現場に9ヵ月駐在した秋山君に続く20歳代です。
オイスカの「国際協力ボランティア」制度で採用され、
1年間オイスカの活動に従事しますが、当プロジェクトには当面7月末まで。
その後、国内外にて研修を行い、双方の合意があれば職員採用の流れ。
東日本大震災の時にはパプアニューギニアで青年海外協力隊の一員として、
2年間稲作の普及に従事していたそうです。津波はパプアにも到達したと彼から聞きました。
4月に着任して以来、すでに3回現場に入っておりますが、
来週は一人で現場に入ってもらい、再生の会メンバーからひざ詰めで話を聞いて来てもらいます。
目下、企業であれば、決算発表、株主総会、CSRレポート作成時期でしょう。
我々も似たようなものです。
振り返り、取りまとめ、計画など諸々のバージョンアップの時期です。
彼もその業務を一部担っていますが、出張レポートは、ブログでもアップします。
ご期待ください。
まとめシリーズ② 名取市沿岸部、春の気候
海岸林として育苗する、植栽するという業務で最も難しい時期の
「春」について、この2年間感じたことをまとめます。
その厳しさを「襟裳岬の造林(NHKプロジェクトXでも放映)」
に例えて語ってくれた専門家もいました。
1「蔵王降ろしの凄まじさ」
寒風害そのもの。
蔵王降ろしとは、11月から5月第3週頃まで吹きすざぶ西風。
日本海を渡り、奥羽山脈を越え、風速を増し、刺すように寒い。
春先には瞬間風速30mを超えることも稀ではない。
その西風による、内陸からの飛砂の影響を思い知りました。
津波で周囲のすべてを失った荒野の真ん中、さえぎるものがない場所に 植栽された木を顕微鏡で見ると傷だらけという話も聞きました。
宮城南部は、地形的に山からの距離が離れており、 風の影響を受けやすいと感じます。
風が比較的静まる夜、工事の都合で一晩だけ育苗場防風ネットを 外したら、マツ苗が砂で埋没してしまいました。
名取沿岸部にだけ、内陸防風林が造成されたのが、よくわかります。
2「乾燥」
春先は降水量が特に少ない。寒風害に加えて、乾燥は海岸林造成の難敵。
床替移植したばかりの露地播き1年生クロマツを枯死させる元凶。
特に今年の3月は、0.5mmしか降水がなかった。
3「寒い!」
という人が多い。当然、東北より西から来られた方。
視察に来ても耐え切れなく、車に逃げ込んでしまう人も。
5月第3週ぐらいまでは防寒着が必要です。
宮城の内陸は気温21度、名取に戻ったら14度ということも度々。
また、気温の乱高下も激しさを感じた春でした。
来年以降は、この時期に皆さんが植栽するんですよぉー!
動いていれば寒くないのでご安心ください。
ただ、休憩のとき、避難する場所がない…… (どんまい)
仙台駅弁は日本一○○が多い
仙台の駅弁は日本一「種類」が多いのだそうです。
テレビの受け売りですが。
本当かな?
でも、多いのは事実。
このお弁当、仙台駅の駅弁屋さんで、ひときわ目立っていました。 テレビで取り上げられているのを見たので、帰りに食べようと決めていました。
出張の帰路、緑化技術参事の清藤先生、木村君もこの弁当を食べたそうです。 石巻で被災した水産加工会社等が手を取り合い、 季節に応じて、具の一品一品を出し合って この弁当を作っているのだと放送されていました。
気がついたら食べ終わっていました。
売れ筋、新名物に間違いないでしょう。
「具」一覧
・石巻産アナゴ焼き
・くじら大和煮の天ぷら
・三陸産いくら
・三陸産つぶ貝煮
・宮城産炙り牡蠣
・石巻産金華さば酢〆
・三陸産花小エビ
国際協力ボランティアの木村です。
先週の金、土曜日と宮城に出張してきました。
今回は海岸林再生プロジェクトで広葉樹(クリ、コナラ)の試験的な種まきを主に地元の方、 専門家、森林組合の方々と行ってきました。
育苗場での作業を終え、昼ご飯を食べ終わり、片付けなどをしていた時のこと。
「ゴゴゴーガタガタ」と音がして、急に地面が揺れ始めました。立っていられる程度でしたが、プレハブの事務所が「ガタガタ」と揺れたときは飛び跳ねるぐらいに驚きを感じました。
ラジオをつけたら、震度5で津波の心配はないということで、避難はしませんでしたが、東大日本震災規模の津波が来ていたら流されてしまったことでしょう。もし、名取事務所にいる時、地震がきて、津波警報が出た場合はやや高い位置にある美田園駅に逃げると助かります。
震度5の揺れには、正直、ビックリしました。しかし、なんの被害も遭わなかったため、そんなに地震に対して恐ろしさは感じませんでした。おそらく、そんな気持ちでいると命を落とすのだろうという気持ちもあります。
改めて思ったのは、海岸から近いところに位置する第一育苗場での仕事は、
命を落とすかもしれないという恐怖が少なからずあるということです。
未だに余震が続く東北、今後もアクシデントがなくプロジェクトが成功することを祈るばかりです。
昨年に続き今年も、山形のさくらんぼの販売収益の一部を当プロジェクトに ご寄附いただけることになりました。
販売元は全日空商事。ANAショッピングサイト「Astyle」からは、 2013年度「機窓」カレンダー収益の一部もご寄附いただいています。
http://www.astyle.jp/category/gourmet/sp/yamagata_cherry.html#02
我々にはこういう広報の力、気が遠くなるほど多くの顧客の輪はありません。
多くの企業や団体が、それぞれの持ち味を活かして、
「なぜ海岸林が必要なのか」を広報啓発してくださっています。
大きな組織だけでなく、全国の多くの方のあたたかい支援の輪が 広がっていることを、
寄附に添えていただいた一言やお手紙・メールなどから感じています。
今日からまた名取の現場に出張します。
たくさんの支援者の皆さんに支えられていることを、
いつも通り、現場の皆さんにもしっかりシェアしてきます。
できるだけ多くの方に少しづつご理解と協力をいただく。
できるだけ多くの組織と歩みをともにする。
そういう全体コーディネートをしてゆきたいと思います。
皆さん本当にありがとうございます。