初お一人様、名取出張 第3弾 「お一人様、名取出張の考察」
国際協力ボランティアの木村です。
ついに初お一人様、名取出張も最後の第3弾です!
今回はこの出張を通して自分が考察したことを綴っていきたいと思います。
再生の会のメンバーのお話を聞き、そして一人で名取の街、震災現場を視察し、強く感じたことは「震災の風化と開発の在り方」です。風化と書きましたが、 実際に震災復興は着実に進んでいる部分があります。
海岸林の再生に向けた盛り土工事の現場近くで、交通整理に従事している 60代ぐらいのおじさんが「ピーク時は1日で400~500台のトラックが走っていたが今は200台ぐらいまでに減っている」と話してくれました。工事も終盤を迎え、来年の春には植林ができる予定です。
海岸林再生に向けた前進はうれしいことですが、やはり、まだ地元の方々の中には、今後の生活拠点の選択など未だ不安が大きく残っているようです。
その方によると「被害が大きかった閖上地区の7割は地元に戻りたくない」そうです。戻りたい 人たちのほとんどが高齢者で自分たちの土地を手放したくないようです。
津波の被害が少なかったと言われる、「美田園駅」や「杜のせきした駅」周辺ではどんどん、
新しい家やお店が建設されてきています。最近は住宅展示場に行く方が増えているそうですが、
この名取市も例外ではありません。仙台空港を中心に「仙台のベットタウン」になりつつある状況です。
再生の会のメンバーも、海岸林の再生とともに気がかりなのは、若い世代の雇用問題だとおっしゃっていました。
雇用創出のため、仙台空港を民営化し、その周辺にホテルやテーマパークの建設を望んでおられる方もいれば、
今回の津波を忘れないためのメモリアルパークを望む方もいます。
今後の開発のあり方を慎重に考えていかなければならないと思いました。
プロジェクト担当の吉田です。 この2年、よく伺うご質問に対してクイズを交えてお答えします。 まず、下の写真をご覧ください。 震災直後に踏査した森です。美しい!と思いました。
で、クイズです。 Q1.ここでは最初から同時にマツとサクラを混ぜて植えた? Q2.大きなサクラとマツの樹齢は、それぞれ何歳ぐらいだと思いますか? ここは海岸波打ち際から600m以上も離れた内陸です。 海側には400m以上の幅のクロマツがあり、海からの潮風の影響を 受けにくい立地です。しかしここも当然、津波が直撃しました。
A1.同時に植えたのでも、交ぜて植えたのでもありません。 人が植えたのはマツのみ。サクラは自生です。
A2.マツは100年超(明治時代植栽。サクラは50年程度か。) 結論から言えば、同時に交ぜて植えることは考えていません。 海岸林の海側から200mほどは、潮風のストレスなどが強烈です。 それに対して最も抵抗力があるのがクロマツです。 全国各地で、長い年月をかけ、多くの先人が数ある樹種の植栽を試す中で選び抜かれたものです。
技術者はクロマツを評して「犠牲木」とよく言います。 私たちは、海岸林の存在意義を、農業や生活を守るためのインフラと考え、 その機能を果たすための森づくりを最優先に考えています。
場所を選ばず広葉樹を植えても、塩のストレスに耐えられないと考えます。 マツと広葉樹を同時に混植する(ランダムに混ぜる)と、 いずれ、マツは広葉樹に光を奪われ、枯死すると思われます。 場所を分けて、同時に植栽するとしても、200m以上内陸で、 クリ・ヤマザクラ・ケヤキ・コナラなどを植えるのが妥当だと考えています。
「マツとサクラは相性が良い」と聞いたことがありますが、 写真のヤマザクラは、人の手で植えたのではありません。 クロマツが間伐され、光が差し込んだ場所で、自然に生えてきたものです。 海に近い部分に植えられたクロマツの、「身を挺した犠牲」のおかげで クロマツに守られながら広葉樹は大きくなったのです。
写真の場所は、波打ち際から遥か内陸ですから、背丈の高い順に、 高:クロマツ、中:ヤマザクラ、コナラ、低:アオキ、ヤブツバキ、ヒサカキ。 下草も多数。4段構成。いい森でした。
宮城南部沿岸部の「極相林」(植物遷移の行き着く先)はヤブツバキなどです。 潮風の影響を受けにくい海岸林の内陸側では、長い年月をかけて クロマツ→広葉樹とゆっくり遷移するのでしょう。
私には、森づくりはスケールの大きな子育てに思えます。 大きくて、長い気持ちで森づくりを見据えたいと思います。 拙速に遷移を進める考えはありません。
出張の大半は新幹線で移動しています。
仙台駅から仙台空港アクセス線に乗り換え、仙台空港駅に。
空港内の事務所でのアポイントには少し余裕が。
「そうだ。設置されてるかな?」
するとすぐ目に入ってきました。
先日、空港関連会社の社長さん、部長さんと、仙台空港アクセス鉄道㈱に行き、 プロジェクトについてじっくり説明させていただきました。
時間を下さったトップのお二人は、海岸林というより、従来のオイスカの海外協力を ご存じで、空港駅、美田園駅、杜せきのした駅への、海岸林再生プロジェクトの「ご寄附のお願いチラシ」設置をしようと決めてくださいました。
「チラシはどんどん無くなるというわけじゃないけど、 地元の人には、まず知ってもらわないとね」
名取市内には、酒屋さん、美容室、市役所、市民会館、駅前駐車場など
すでに置いていただいていますが、まだまだ。
でも、協力者が増えるのは嬉しいですね。
現在チラシを設置できているのは、北海道、宮城、東京、神奈川、埼玉、
富山、山梨、長野、静岡、愛知、奈良、兵庫、香川、愛媛、広島、福岡。
もちろん、「点」でしかありませんが。設置個所は、宮城がダントツ。
広島、愛知、香川には割と多く設置できています。
東京は少なく、まだまだ努力不足。
設置個所と、寄附者数は明らかに比例しています。
初お一人様、名取出張 第2弾 「the 第2育苗場!」
国際協力ボランティアの木村です。
初お一人様、名取出張の第2弾です。初めて行ってきた第2育苗場について書きたいと思います。
第2育苗場はあまり広くはなく、点在しているのが特徴です。
第1育苗場から車で20分ぐらい。田んぼのど真ん中にあり、たどり着くのに苦労しました(汗)
今回は再生の会メンバーの高梨さん、森さんのインタビューが目的でしたが、
もちろんクロマツの様子も見てきました!
ここでは、少し趣向を変えてマツの育苗に取り組んでいました。
森さんは「マツの育苗は野菜の苗を育てるのと同じ」と考え、自ら、土の配合を調整し、それを写真に収め、記録しながら育苗をしています。
また、これからの草取りの作業が欠かせない季節を前に、発芽した苗の近くにもみ殻を播き、草を抑えたり、コンテナ苗が発芽しなかった場合に備えて、 小さい種苗箱に予備を作っていたりとさまざまな工夫をされていました。
そして高梨さんから面白いことを聞きました。
「木村君みたいな苗が必要だ。マツも人間もライバルがいて競争して強くなっていく。だから、コンテナ苗よりも露地播きで競わせて強くて、太い苗を作らないといけない。マツの種は貴重だが、間引きをして捨てる覚悟も必要だ」とおっしゃっていました。育苗でも植林でも間引くことが増えるとなると多くの種が必要になります。コスト面では大変ですが、しっかりとしたマツの苗、そして海岸林を作るには「捨てる」覚悟も必要だと知りました。
今まではまだ、春到来という気があまりしませんでしたが、 さすがに6月。市内でも半袖の姿を見かけます。
仙台空港駅から降りると、目に緑(雑草)が飛び込んできました。
防潮堤・盛土工事も、目を見張るほど進んでいます。
育苗場に来るたびに、草取りに精を出す地元の皆さんの姿。
6月3・4日は終日10人態勢で。
床替移植のストレスに、マツが対抗できるよう、 活性剤を撒いたことが雑草を助長しているのです。
これから10月頃まで、一にも二にも草取り・観察です。
雇用時間数は昨年の6倍以上の見込みですが、 その大半が、畑の使用面積が広がったことに伴う、草取りです。
視察いただく方にも、短時間でもお願いし、
なりふり構わずということになるかもしれませんね。
吉 田:草取りするとき、注意しなければいけないことは?
Mさん:「草と一緒にマツも抜けたり、浮いたりするんだよね~
それを忘れたままにしないことだなぁ。ただそれだけ。
やっぱりしっかり植えてあげることだね~」
仙台の他団体の海岸林再生の仕事も拝見しましたが、
それぞれの団体ごとにさまざまな肥料が撒かれていました。
すでに苗の周りから、草が出ていました。
まとめレポート⑤ 収支概況
平成24年度の収支概況を少し早目にお伝えします。
寄附金・民間助成金収入総額は約8,500万円(平成23年度約5,500万円)
育苗実務初年度の支出総額は約3,000万円(平成23年度約1,500万円)
そして、今後の大規模な海岸林植栽と育林に備えるため、内閣府に提出した計画である
「特定資金準備金」として、計画通りの5,000万円を積み立てることができました。
2年間の活動レポートと収支報告は、当法人決算理事会後、6月下旬までにHPにて公開いたします。
今年度は震災の風化に正面から向き合うことになるのは間違いありません。
これは元より覚悟していたこと。
そのなかで、育苗事業について被災地住民の就労の観点で言えば、
雇用時間数は6倍以上増、育苗使用面積で言えば約6倍増、
雇用者として関わる人の数も既に増えております。
そして、平成26年度からは本格的な植栽が開始されることでしょう。
その上、平成28年頃から県有林の植栽が開始され、事業量ピークを迎えると想定しており、
種苗組合の一翼を担う我々には、育苗においても最大の期待が寄せられることでしょう。
キャッシュフローとの闘いはまさに現実化することになると思います。
先を見て、先を見て、必死に資金獲得も行います。
これまでの多くの皆さまのご厚情に深く感謝するとともに、
今後、信頼を裏切らぬよう、日々の実務を着実に行ってまいります。
道のりは長いですが、必ずできるんだ!と、毎日強く思い続けて。
これからもご支援のほど、よろしくお願いします。

ここの会場も会員です
6月4日、宮城県支部幹事会と活動報告会があり、 東京から永石専務理事と我が部署のフレッシュマン中西君、 現場統括の佐々木さんと出席しました。
会合は最低年2回あり、会員110件のうち常に5割が出席する盛況です。
もう2年毎回出ていますが、とにかく「賑やか」。
オイスカには全国15の支部があり、宮城は30年を超える歴史があります。
特に、海外からの農業・工業の研修を受ける青年(オイスカでは研修生と呼ぶ)や、 台湾からの短期農業視察団の受け入れを続けてきました。
現在も素晴らしい受け入れ農家「日向養豚」さんのおかげで、養豚研修生が毎年学んでおり、今はフィリピンの青年がお世話になっています。
震災後は、海岸林再生プロジェクトの最前線で、まさに陰に陽に 支えていただき、我々と「ともに」歩んでいる実感があります。
空港関連会社の社長さんと部長さんが、一緒に外回りして下さったり。
仙台中心街を歩いていても声を掛けられたり。
ふらっと訪ねた居酒屋で、ここで熱心に海岸林を語った会員さんの噂も聞きました。
その居酒屋さんは、ご寄附を手に、育苗場まで来てくださいました。
正直なところ、会員ほど心強い存在はありません。
プロジェクトだけでなく、我々の50年の歩みも、 オイスカの国際協力も、いわば、全体をご理解いただいているから。
海岸林再生プロジェクト10ヵ年計画をきっかけに、 自然に会員が増えたかどうかが成績表と思っています。 (究極の目標の一つ)
やはり、そういう一群ですから、基本的に底力があります。
事務局長の小野さんは、宮城テレビ放送の副社長をされた方ですが、 幾年も完全手弁当で、ほんとうに高齢にもかかわらず、毎日フルタイム。 小野さんを筆頭に、多くの方が、コツコツと協力してくださっているのは 東京に居てもよくわかるのです。一体感、感じます。
当プロジェクトの寄附者数は、宮城県がトップ独走、続伸中です。地元に理解者が増えるのは、本当にうれしいです。
ついで、東京・愛知・香川・福岡など。東京は金額では圧倒的。いずれも、オイスカの会員が多い地区です。
初お一人様名取出張 第1弾 それぞれの思い…「混ざらねーんだ」
国際協力ボランティアの木村です。
5月30日~6月1日、名取市で海岸林再生の会のメンバーへのインタビューをしてきました。
4月からこのプロジェクトに携わるようになり、
これまで3回現場に行きましたが、今回が初の一人出張でした。
インタビューの目的は今後の広報活動への活用ということもあるのですが、
大きな目的としては現時点の思いを忘れないための記録です。
と、同時に自分自身としては、勉強という意味合いもあり、これが一番大きかったと思います。
出張の報告をシリーズ編でお届けします。
第1弾はこの出張の仕事であるインタビューのことです。
今回は会長の鈴木英二さんをはじめ7名の方にお話を伺いました。
その中で第一育苗場の班長、大友英雄さんの話が自分にとって、とてもインパクトがありました。
大友さんは誰もやりたくない班長という立場を引き受けた頼もしい方です。
再生の会のメンバーはそれぞれ、自分たちの農業、生活があって、それで精一杯です。
そのためなかなか育苗の作業日程が合わないし、それぞれの農家としてのプライドで
育苗に関しても意見をぶつけ合いながら作業をしているそうです。
大友さんは「混ざらねーんだ」ということが課題だとおっしゃっていました。
それでも、飲みの話になるとすぐにみんな、集まるそうです(笑)。
実際には、気心の知れたメンバー達なので、
おしゃべりしながら、作業していると疲れないし楽しいと感じているそうです。
インタビューを通じて、メンバーの思いを強く感じることができました。
作業に向かう皆さんの背中を見て、何か奮い立たせるものが湧き上がってきました。
メンバーは口だけではなく、作業を通しても語ってくれているのだと感じました。
来年の大仕事に向けた準備は、やはり自分の身の回りから。
マジメなハナシ。
我がことですが、どうも体調が思わしくなく……
一気に体力が落ちてしまいました。
かつていた林業会社では、腕はともかく、
脚力だけは褒められました。
「うりぼう」(猪のこども)を
障害物だらけの山の中で捕まえる寸前まで追い詰めたし。
「あれだけ」は親方を唸らせた。
今は平らな所の仕事ばっかりで、
その面影はどっかに消えてしまった……
植栽をする場所は、砂の上。
前に進みません。
疲れます。
今のままでは、先頭切れないなあ。
まず毎日1万歩歩いて、少しずつ鍛えよう。
とりあえず階段は「一段飛ばし」で。
体力でもリードできるように、
よく寝て、よく食べて、強い体を取り戻そう。
今日も、一駅手前で降りました。
初めまして。今年4月に「名取市海岸林再生の会」に入会した菅野です。
入会したきっかけは、自分も大震災の被災に遭い、名取市に引っ越ししてきたのが始まりです。仕事場が被災し、仕事を失いハローワークに行ったときにこのプロジェクトの事務員募集を目にして、引っ越し先から近いことから応募しました。来てみてびっくり、ちょうどその日がクロマツの種播きとは!!生まれて初めてマツの種を見ました。五十数年生きていて初めてです。
5月9・10日には、第一育苗場で、コンテナへの抵抗性クロマツの播種作業が行われました。
コンテナ1台に24個穴がありますから、565台で13,560粒の播種作業です。すべて手作業のため、時間がかかりました。
種まきに参加したメンバーが、「マツの種は大きい方だ。レタスより播きやすい。何でもおんなじで手がかがるがあどは、めんこぐなんのしゃ(手がかかるけど、その分後からかわいくなるんだよ)」とおっしゃいました。
本当にその通り! 農家出身ではない自分にとっては初めての体験だったので、楽しくて、芽が出るのが本当に待ち遠しくて、今朝、現場責任者の佐々木さんに「今日、こも、はがすがら(上に掛けていたわらを取り外す)」と言われた時はうれしかった~!
そのコンテナ苗が発芽しました。場所によっては芽が出ていないところもあり、ちょっと心配なところもありますが、土がこんもりしてきているので大丈夫かも。今後そんなところも見ながら、楽しみながら見守りたいと思います。