県の林業用苗畑実態調査(春季)
6月26日午後、県の林業用苗畑実態調査(春季)が行われ、
県の担当職員2名と種苗組合専務理事さんがお見えになりました。
マツノザイセンチュウ抵抗性クロマツ種子に関しては、 宮城南部の蔵王町、亘理町、
そして我々。北部では加美町、栗原市 登米市、気仙沼市、東松島市の18件の農家で
206,550粒(4,590g)が播種されま した。
名取市海岸林再生の会・オイスカの 第1育苗場苗畑用地2,310㎡、
第2育苗場1,555㎡ 合計3,865㎡
平成25年度播種分 マツノザイセンチュウ抵抗性クロマツ 20,115本が発芽(発芽率89%)
普通クロマツ 47,500本が発芽(発芽率95%)
*以上の合計 67,615本が発芽・生育中です。
*極めて良好な発芽状況と評価されました。
平成24年度播種分 マツノザイセンチュウ抵抗性クロマツ 17,500本
普通クロマツ 59,150本
*床替後の枯死を取り除き、以上の合計 76,650本が生育中です。
*1年後の出荷目標は 68,000本。
調査の横で、今日も除草。 私も久々、少しだけ加わりました。
土の中から夜盗虫(ヨトウムシ)を発見。 虫の発生には細心の注意をはらいます。
夕方からは雨になりました。 依然として乾燥が続いていましたので、
農業に携わる方たちはとっても喜んでいます。
雨のため、草取りは16時で終えました。 地元の女性に、襟裳岬の海岸林造成の本と
マンガをお貸ししました。 (NHKの「プロジェクトX」で紹介された苦闘の歴史です)
「今日の夜は楽しみー」と喜んでお帰りになりました。
今年播種したクロマツ、しっかり発芽しています!!(6月15日撮影)
先日、工事が終了した名取市の防潮堤の一部を視察してきました。
大きな防潮堤の下で、ほうきを手にし、黙々と掃除を続けるお兄さんがいました。
言うまでもなくここは屋外。しかも砂浜にそびえ立つ建造物ですから砂だらけなのは仕方のないこと。それでも「工事が完了したからきれいな状態で引き渡したい」と説明してくれました。
明日になればこの写真のように、また風でこんなに砂が運ばれてくるのは分かっているのに、でもきれいにするというその仕事の姿勢に感心しました。お兄さんは仙台から来ていて約半年、この現場で仕事をしていたそうです。
ちょうど同じころ、東京でずさんな仕事(公共用地の草刈りをした業者が、草に埋もれていたゴミをそのままにしていました。草を片付けたのだからついでにゴミも・・・と期待するのは甘い考えでしょうか)を目にしていたので、まじめな仕事ぶりがとても素晴らしいことに思えたのです。
私がここの現場に初めて来たのは2011年7月でした。そのころは、海岸に近い集落もまだ家の基礎がそのまま残っていたり、チンゲンサイや小松菜を育てていたと聞くビニールハウスもなぎ倒されたままになっていました。この防潮堤は、海からの波ではなく、津波が海に引く際に防潮堤のコンクリートがかなり破壊されたようです(下写真)。
この時工事現場にいた方が「事故なく安全に、が第一なのに暑い中、休みなしの作業が続いている」と大変さをお話してくださったことが思い出されました。
あれから約2年が経過。たくさんの方々が暑い日も寒い日もこの現場で作業をしてきた結果がこの防潮堤。それを分かっているからお兄さんはこんなにきれいにお掃除をしているのだなぁと、皆さんのご苦労、まじめなお仕事に頭が下がりました。
先日、太田猛彦先生(東京大学名誉教授)に数ヵ月ぶりにお目にかかり、お茶していただきました。今回はスタバ。先生はいつも「豆乳ラテ」。
震災後、とにかく行政情報を収集しなくてはと、2011年5月に宮城県庁で開催された、 第1回林野庁「東日本大震災に係る海岸防災林の再生に関する検討会」にかなり真剣な思いで傍聴に行ったときに、初めて先生にお目にかかりました。
閉会後、緊張を振り切って駆け寄り、しばしお話を伺い、ご挨拶できたその勢いで、オイスカ会長と被災海岸林を歩いて、解説いただくくことをお願いしました。(20日後に実現)
以来、毎月のように「お茶」にお付き合いいただき、7月にはシンポジウムで講師・パネリストを。
加えて仮設住宅集会所で、のちに「名取市海岸林再生の会」メンバーなった方たちに講演もしていただきました。東京ではオイスカ本部職員に、それから名取でも、地方でも講演をお願いしてきました。
今日のテーマ本命は、いよいよオイスカの「顧問」にご就任いただくことに関する説明。
加えて、当プロジェクトの今後の1年先までのフロー説明、等々。
その上で、先生と我々それぞれの近況情報交換が重要で。
今回は、春先の気候の厳しさと、公共工事や、
NPO団体等の宮城南部のクロマツ植栽状況の写真報告に関心を持っておられました。
各所の広葉樹植栽の動向、コストも知る限り説明しました。
私は気になっていた、南海トラフに関する行政の動向について収穫が。
先生のコメント3点。
「やっぱり、昔からのやり方を忘れてはいけないんだ」
「手入れの要らない森はない」
「君は君に続く人を今から育てなさい」
先生からの情報です。
「かわさき市民アカデミー」で
(ノーベル賞候補もいる一流講師陣と、熱心な市民の聴講ですごいんですよ)
誰でも聴講できる講座を開催するそうです。
「森林飽和」 講師:太田猛彦先生 300名募集
11月14日(木) 16:30~18:00 江戸時代の森林荒廃
11月21日(木) 16:30~18:00 森林の荒廃と回復
12月12日(木) 16:30~18:00 その後の森林飽和
場所:小田急線「新百合ヶ丘」駅前・新百合21ビルB2
前3回分聴講費:3,150円
*先生の著書「森林飽和」(NHKブックス)は4刷に突入したようです。
皆さんはお読みになられましたか?
ここは仙台市太白区坪沼の、およそ仙台と思えない山奥。
我々が広葉樹の母樹林として使用許可を受けた市有林で、傾斜の少ない部分2haを目処に整備します。
天然記念物のニホンカモシカも、クマも、イノシシも「たくさん」います。特にに今年は既に、仙台の郊外で「クマ出没」が極端に多いと言われています。三井物産環境基金の助成を受けて、広葉樹母樹林整備や育苗を行います。
第1育苗場から北東に40分。
道中の中間に第2育苗場があります。
「広葉樹林の方が荒れている」と、東京一の林業家が昔、話してくれました。
経済林として研究されてきた針葉樹に比べ、整備方法が確立されていないのです。
6月13日、宮城中央森林組合の鈴木班(なんと女性が班長!)が
除伐を済ませ、伐採に入っていると聞き、挨拶に行きました。
5月18日の播種もしかり。班長さんには定年退職まで長くお世話になります。
鈴木さんは、まさに「何でもできる方」。
カモ撃ちの名人ですが、我々はよくイノシシを戴き、毎冬「大しし鍋会」。
車はある。でもチェーンソーの音は聞こえない。
ちょうど休憩だな。急ごう。
40年生ほどの太い広葉樹は、数多く見られた枯れた立木も含めすべて見事に選木・伐採され、無数のモミの若木で、林床が暗かったのがウソのよう。
おそらく、業務部次長の佐々木さんから、目的地まで車で行ける本当に良い立地なので「森林教室などで市民が入りやすい森」にという指示が出たのでしょう。
下刈りの刈り高は「5cm?」(普通は10cm)と思えるほど低く、上手な人が手を入れたことがわかります。
これは種子も拾いやすく、苗の採取もできる。 除伐・伐採木の「集積」も丁寧でした。
「きれいになったでしょー」
「モミばかりでねー。伐っても伐ってもあるのよー」
枝も多く、集積の時の「枝払い」の仕事量が多い。
しかも葉はチクチクする。
カタクリなどの群生も見られ、そのゾーンは言わずとも気遣われていました。やはり、プロのやる仕事です。 スピードと丁寧さに加え、余裕や森への愛情を感じる伐採作業でした。
次の春には「埋土種子」の発芽、伐採木からの「萌芽更新」も見られ、樹種も草木の種類も増えるでしょう。
市民が親しみ、母樹林として新たな価値を持った森になるでしょう。
まとめシリーズ⑥ 全体概況(経済同友会での発表より)
6月6日(木)経済同友会メンバーへのプレゼンの機会をいただきました。
その際の佐々木・吉田の発表等より、現在までの実績を抜粋してお伝えします。
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来年2014年4月からの植栽開始を見越して、これまでの2年間準備を進めてきた。
来年春・秋植栽分として、約20haに相当する苗木の供給体制が整った。
来年の出荷目標はクロマツ95,000本。広葉樹は2,500本。
震災後半年の調査・協議期間を経て、2011年9月末より募金を開始。
現在、約1億6000万円の寄附金・民間助成金をいただくことができた。
2年間の支出総額は4,500万円。
「将来の植栽・育林のための積立金」(特定費用準備資金)は、
計画通り5,000万円を積み立てることができた。
寄附者数内訳は、個人1,000人以上、法人300社以上。
この他、西友の「レジ募金」、高島屋カタログギフト等の「寄附つき商品」、
三菱UFJニコス等の「ポイント寄附」、ANAの「マイレージ寄附」、
東急ストア・三菱UFJニコス等の「顧客との省資源化努力に伴う寄附」など
支援企業・団体等の協力を得た広報啓発活動を並行させている。
その分、実質的協力者数をカウントするのが難しい。
名取市は国の治山工事(盛土等)が急ピッチで進められており、
名取市海岸林全138haのうち、工事対象は126ha。
そのうち90haの盛土等の工事が既に発注されている。
(植栽はまだ行われていない)
名取の大変厳しい寒風害・乾燥などの環境、植栽後に枯死した箇所の補植も計算し、
来年の苗木必要量は最大15万本と見込んでいる。
昭和40年の名取市内の県有林植栽では、50%が枯死した歴史もある。
不足分は、我々も加盟している宮城県種苗組合の傘下にて需給調整、購入する。
前年度から比べ、
育苗場使用面積は10倍。
農場雇用人数は前年度の22人から、現在は30人を超え、年間雇用時間は最大8倍になる見込み。
除草などのボランティア活動も、夏場から実質的に開始する。
将来の植栽は2014年から2020年の7年間にて約60万本を実施。
その後の下刈り・つる切り・除伐等の育林は「2033年」まで継続。そのための全体経費10億円を、前倒して集めていく。
引き続き、ご理解・ご支援のほど、よろしくお願いします。
海岸林再生プロジェクト視察ツアーのご報告
国際協力ボランティアの木村です。
6月14日、15日に海岸林再生プロジェクトの視察ツアーが 行われました。
両日、天気予報では雨。
しかし、両日とも 雨は降らず、14日は霧がかかり、遠くが見えない状態ではありましたが、
14日は43名、15日は57名の参加者に現場を見ていただくことができました。
最初は仙台空港にて説明会と楽しいクイズ大会を行いました。
全問正解者には「名取市海岸林再生の会」の大友英雄さんが育てた新鮮な小松菜がプレゼントされました。
大友さんが丁寧に小松菜を包装しているのを見ていたので、とても想いのあるプレゼントだと思いました。
視察では、海岸林防潮堤工事、津波で壊されてしまっている「再生の会」会長の鈴木氏の旧宅を見て回りました。
防潮堤は普段、一般人の立ち入りが禁止されている場所で、現場を管轄している国土交通省の方の許可を取っての視察となりました。
海と防潮堤の間にはなにもありません。海からの潮風を直に感じていただき、海岸林の必要性を感じていただけたのではないかと思います。
第一育苗場に行き、現場統括の佐々木廣一さんの 説明を受けた後、参加者全員で草取りをしました。
初対面同士の参加者も多かったのですが、草取りをしながらのおしゃべりでみんなの距離が縮まるのを感じ、草取りは地味でつらい作業だけど、こういった作業を通してみんなの気持ちもひとつになっていくのだと感じました。
この視察を通して、現場を理解してくださる方が増え、支援の輪が広がることを期待しています。
5月18日に第1育苗場でクリ・コナラの播種を行いましたが、
6月10日に発芽しました!
薄紫色。
緑色でないのです。
とても新鮮でした。
しかも何とも弱々しい。
これもまた、「めんこい」。
まず、土から出たばかりの芽は、目立たない。
山なら、まず分かりません。
クリ・コナラはとても似ています。
敢えて言えば、クリの方が少し太いか。
①最終的に、非常に良い苗のみを大胆に選別
②間隔を広めにとって太く仕立てる
以上の方針で予定より多めのクリ1,000粒、コナラ3,600粒を播きました。
ヤマザクラは6月20日に採種、消毒・冷蔵保存し、
今後の播種に備えます。ケヤキも植栽対象です。
我々の計画では、広葉樹は海岸林全体の1割。 海岸林の最も内陸側に植栽する予定です。
クロマツは5,000本/ha、広葉樹は3,000本/haの植栽方針です。
しかし、広葉樹はお金がかかります。驚くばかりです。
クロマツよりも充実した土壌が必要ですから。
広葉樹を植えてみて、育て方の違いからクロマツの強さを再認識することが多い日々です。
こんなに熱のこもった質問攻めは初めて。
再生の会の鈴木会長も、私も、取り囲まれ、気迫で一歩後ろに退いてしまったり。
外務省の方も驚いているほどですから。
連日、矢のように母国に記事を送っていたようです。
6月4日、外務省とフォーリンプレスセンター(FPCJ)からの依頼で、横浜で開催された第5回アフリカ開発会議(TICAD Ⅴ)の会議参加を終えた記者5名の視察対応をしました。
今回は、ケニア、南スーダン、モザンビーク、ウガンダ、マラウイの主要紙。
これで外国記者団の対応は4度目。
35ヵ国、49名がプロジェクト訪問されました。 アフリカからの記者団の来訪は2回目(合計8ヵ国)です。
一面の荒野を見て、そのうちの二人が言いました。
「僕のふるさとみたいだ」
洪水で流されたという事でした。
その話をもっと聞きたかったのですが、どんどん次の質問が。
「住宅の補償は?」
「震源地からここは何km?」
木への愛情も強かった。
再生の会の方10数人と除草を一緒に。
自然、全く打ち解けて。 一生懸命質問して。通訳の方はフル回転。
我々が何をやろうとしているのか、理屈抜きで分かっていただいた気がしました。
ほんとうにいい雰囲気でした。
お受けしてよかった。
FPCJスタッフの皆さんの深い理解のおかげで、
ほんの些細な事ですが、アフリカ開発会議に関わることができました。
木のレクチャー in 日比谷公園
国際協力ボランティアの木村です。
先日、名取事務所、現場統括の佐々木廣一さんが上京。経済同友会主催の報告会、林野庁への報告が目的です。
さすがは佐々木さん!!現場の人間として熱い情熱と豊富な経験を語ってくださり、 会場の人は聞き入っていました。
そして、移動の途中で日比谷公園に寄りました。佐々木さんは未熟な私にいろいろ、 木のことを説明してくれました。ここでは親切なことに木のところに名前や特色が 書いてありました。
最近は佐々木さんに宿題を出されます。
「樽と桶の違いは何か?」
「木が水分や養分を引き上げる理論とは?」などいろいろあります。
自分自身、佐々木さんに会うたびに成長しているような気がします。
毎日が勉強。現場を知らないといけないということが日々感じられるようになってきた今日この頃です。
よくある質問 クロマツは根が浅い?
長いブログになります。すみません。
何件も質問が来たので・・・。(汗)
「クロマツは根が浅いため、津波で流され、被害を拡大させた」
これまで2年間、この質問(意見?)を何回聞いたことか…….(笑)
特に宮城県では、噂が異常に広まったので、特に耳にしました。
クロマツが悪いのでしょうか?……
我々、2011年5月の初調査、この地域のクロマツの、ある根の特徴に注目しました。
話しは変わりますが、2011年夏、宮城地元誌で「仙台空港周辺は水はけが悪い」
という記事を読みました。
また、出張時に、仙台の古本屋で見つけた古地図を見たら、沿岸部は池だらけ。
2011年秋の台風以降も、全く水はけが悪く、いつまでも干上がらない。
排水路やポンプ場も多い。我が育苗場の井戸も、ほんの2~3mで水に到達。
林野庁「東日本大震災に係る海岸防災林の再生に関する検討会」の、
「宮城県南部沿岸部は地下水位が高い」という指摘の裏付けは、
この他にもまだまだあります。
余談ですが、名取の定食屋のおかみさんの話では、
かつての仙台空港周辺の田んぼは「深い田んぼ」で、
腰まで入らねばならないから、嫁入りを嫌がられたとか。
話を元に戻します。
重要なことは、本来、クロマツは他の樹種と比べ、 根がまっすぐ下に伸びる「深根性」であるということ。
これ、疑いありません。
しかし、基本的に根っこは水を吸い上げる訳ですから、地下水位が高ければ 深くまで根を伸ばす必要がなくなるため、クロマツの特徴である太い直根は深根性を活かすことなく、下の写真のように途中で90度曲がってしまいます。
しかし、かつて造林したときは、盛土などできず、元々の地形の上に
植えたのです。そこに地震があり、液状化や地盤沈下の影響もあったでしょう。
津波が来たわけです。
強く根を張っているわけではないので、津波の力に強烈に抵抗して
「幹折れ」するのでなく、じわりと「倒伏」した状態を多く見ました。
クロマツが悪いのではありません。
このように地下水位が高く、被災地域の海岸林で壊滅的な打撃を受けた約1,100haのうちの
多くを占める宮城南部では、国が直轄事業として、とくにクロマツの深根性を活かすための
「盛土」を含む工事を行うのが大きな改善策です。
名取市下増田北釜地区(仙台空港真東)にも、その模範となる地形とともに 生き残り、今もなお役割を果たすクロマツ林がわずかに残っています。
我々、2011年5月の初踏査2日目、クロマツ、広葉樹ともに、「微地形」という わずかな高低差で生死を分けたことを結論付け、 その後も、林野庁「東日本大震災に係る海岸防災林の再生に関する検討会」の議論の方向や、最終的な国の方針に間違いないと自分たちなりに判断しました。