Post2020雑感② 「基本計画」と「実行計画」の重要性
2015年8月から正式に「海岸林と地域の将来ビジョン形成調査」に取り掛かり、
じっくり時間をかけて、行政当局と、Post2020、将来のことを話し合う材料となる
「たたき台」を作りたいと思っています。
●宮城南部における植栽完了後の「基本計画」策定の重要性
唐津「虹の松原」では、所有者の国(佐賀森林管理署)が詳細にわたる計画を作り
目標や指針を定め、積極的に公表し、民間と共有していることに注目していた。
計画立案の時点で、第一線の専門家を交え、すでに「官民連携」だったと推測。
東北では、2011年林野庁「東日本大震災に係る海岸防災林の再生に関する検討会」
の指針に、現在の状況を踏まえた、詳細かつ具体的に深めた大方針が欲しい。
目標林形やゾーンニング、それに向けた技術の指針、将来の本数調整伐(間伐)
基本方針や、松くい虫早期微害化対策は、先手先手で。5年ないし10年ごとに、
計画を見つめ直す弾力性があればいい。明確な目標があってこそ、大同団結の
実践の道が開ける。特に宮城南部から福島北部は類似した状況・目標林型と思う。
●「実行計画」策定の重要性
同じく「虹の松原」では、基本計画に連動して「虹の松原再生・保全実行計画」を
官民のオール唐津のようなメンバーの「虹の松原再生・保全協議会」の名前で、
極めて詳細に立案している。地域の特徴を踏まえ、具体性を極めたものである。
幾つかの松原では「基本計画」はあるものの、実践シナリオがなく、場所によって
は、民間の手で「基本計画」を立てたものの、法的根拠や拘束力がなく、事実上、
お蔵入りしている事例もあった。唐津の立案に当たっては、各セクター第一線の
専門家集団を編成して立案していた。「実践計画」は各地区ごとの実情に合わせて
立案するのが良いと考える。
●「再生の会」と「オイスカ」の立場
Post2020は、あらためて官民各主体の役割分担を確認し、互いの力を持ち寄りたい。
まず、再生の会も、オイスカも地権者ではない。出しゃばってもいけない。
地権者には地権者の役割があるのだから。
少なくとも私たちオイスカは、林野庁「海岸林検討会」の2011年議論を全て傍聴し、
事実上の「基本計画」となった検討会「報告書」に納得し、「行政が立案した計画
そのものに協力する」事を原則とする「助っ人」の立場。今後もそれを堅持する。
その上で、名取だけでなく他地区も念頭に置き、たたき台を提供し、「基本計画」
「実践計画」の立案にも可能な限り協力したいと考えている。
名取では、再生の会とオイスカが一体となり、実践を託される「Post2020 名取型
実働部隊」を立ち上げることを視野に、時間をかけて、万全の準備を重ねたい。
海外活動の永年の経験から「自助自立」の精神で。
つづく
Post2020雑感① 実力派の実践団体を参考に考える
明けましておめでとうございます。
新年にあたり、「海岸林と地域の将来ビジョン形成調査」に関して、
いま感じていることを、頭の整理を兼ね、数日かけて連載します。
2011年以来、地方出張を利用して各地の海岸林を巡り、地元でヒアリングしました。
まず、連載の冒頭として、宮城南部と同様に、大規模面積を抱えた上で、プロも唸る
ダイナミックなボリュームを実践している、東と西の2つの現場に絞って紹介します。
ただ、判断を誤らぬためには、さらによく学んだうえで、宮城南部とは置かれている
状況が全く違うぐらいの前提に立たねばならないと肝に銘じております。
1.北海道「えりも岬海岸林」(国有林約200haなど)
「えりもの緑を守る会」
森林組合、漁協なども含む「オールえりも」の官民各組織がメンバー。
事務局はえりも町産業振興課林務係。市町村が事務局を担うパターンは、各地で
見られるが、一長一短あると思う。造林の歴史的経緯などから、住民意識が
極めて高い稀有な現場。それゆえか、実践を重視し、きわめてスリム化し、
シンプルな組織形態を取れると感じた。樹齢も25年~40年生などが多く、実務は
ひだか南森林組合が中核を担う。目標林型はクロマツ先行ののち、実生の広葉樹
を自然に導入する点など、宮城南部の将来を考える上で非常に参考になった。
(やはり、試験的に実施した「広葉樹林間植栽」の成績は芳しくないとのこと)
襟裳岬になぜ海岸林がなくてはならないか(この地ではクロマツでなければなら
ないということでなく)、非常に長いスパンで考え、信念や技術を後世に継承し、
この地における海岸林の存在の目的を、極めて現実的に追及している。
植栽は小面積ながら今も継続。育樹祭は「枝おろし」(枯れあがった枝を鋸で
落とす)。ここには松くい虫はまだ及んでいないから拾う必要もない。
「5,000人の住民5人に1人が植樹祭と育樹祭それぞれに参加する。正直言って、
参加者数が多すぎて・・・。仕事を理解できているから、開始と言う前に
すでに仕事が始めている人がたくさんいる」(関係者)
2.佐賀県唐津市「虹ノ松原」(国有林約200haなど)
「虹ノ松原保護対策協議会」
事務局は唐津市観光文化スポーツ部観光課(虹ノ松原室)。日本三大松原であり
玄界灘国定公園内(自然公園法)であり、その上、国の「特別名勝」に指定され
ている(文化財保護法)ことが大きな特徴。その再生・保全は、地権者はほぼ国
にも関わらず、県・市・民間を含む「オール唐津」で担おうという考えで構成
されているのが第1の特徴である。
最も注目している点は、「虹ノ松原再生・保全基本計画」と、それを受けて
協議会が作成した「実行計画」が存在している点。まず、佐賀森林管理署
と「レクリエーションの森協定書」(国有林の制度)を締結し、全体計画・年間
計画を立案。国・県・市・民間が各役割を分業。松くい虫対策、密度管理など
高度な専門性を要する点でも、森林総合研究所九州支所なども深く関与している。
多くの主体が分業するにあたっての制度設計、実践の理論的根拠が、シンプル
かつ、緻密に整理整頓されている点も際立っている。
「松くい虫による伐倒駆除は、年間1本程度/haに抑えられている」(関係者)
「団体が乱立状態になるのは良くないから、すべて協議会のテーブルで決める」
(田中明 佐賀大学名誉教授)
NPO法人「唐津環境防災推進機構」(KANNE)
協議会内「レクリエーション部会」事務局を入札で受託し、市民参加による再生
保全活動の運営を託されている。年間6,400人の市民・企業・団体が、①アダプト
方式、②自由参加方式の2種類で、松葉掻き、落ち枝拾い、芽かき、除草、清掃に
柔軟に参加できるよう、市民・企業団体の参加の窓口として大車輪の役割を担う。
これぞNPOともいうべき。この覚悟は、とても簡単に真似できるものではない。
「年間2,555tの木質バイオマスの処理・利活用など全体の大きな課題もある」
(①リターフォール(落葉・落枝など)200haで年間1,110t、②広葉樹伐採1,125t、③下草刈り155t、
④松の過密林伐採110t、⑤松の伐倒駆除55t)
cf. このような先進的な取り組みは、多くの実務関係者がじかに触れるべきかと。
五月雨式に行くのではなく、いつか、行政とともに視察団を編成できたら・・・
つづく
本年もよろしくお願いします
育苗場がオープンしたばかりのころから、
車止め(というのでしょうか?)に
プランターのお花を飾れるようにしたスタンドを置いています。
左が新しい状態。右がリニューアル後。
今、お花が入っていないのがちょっとさみしいかも・・・・・・。
来年はクロマツ播種とあわせてお花の種も播いてみましょうか。
それにしても、もう右の状態に目が慣れてしまったので、
過去の写真を探してみて、これが出てきたときにちょっと驚きました。
こんなだったんだなぁ~と。
ついでに同時期(2012年4月)のほかの写真も見てみると
まだ盛土工事が始まる前の植栽地には、クロマツがなぎ倒された状態で残っていて、
防潮堤も工事中で黒い大きな袋が積まれている状態でした(下の写真は2012年3月撮影)。
いろんな変化があるものです。そして、私自身、当時は今よりだいぶほっそりしていました(笑)
よい変化変身を積み重ね、よい成長をしていきたいと思います。
今年もたくさんの方にさまざまに支えていただきました。
皆さまどうもありがとうございました。
来年も「海岸林再生プロジェクト」をどうぞよろしくお願いします。
育苗場でネズミのフン発見!
・・・・・・ブログ読者の皆さんはご存知ですよね。
これが“ネズミのフン”ではなくて“ネズミのフンのようなもの”であることを。
はい、これはネズミのフンではなく、
育苗場の周囲に風よけのために植えられた
ネズミモチの木の実です。
ネズミモチを植えたのは2012年4月の育苗場お披露目式の時でした。
参加者の皆さんに記念植樹として植えていただきました。
植えた時はこんなに細かったんですね。
しかし、今は立派な風よけに成長していますよ。
(手前の2本はマサキの仲間で、向こうに見えるのがネズミモチです)
特に太い木の根元はこんなに太くなっています。
カメラのレンズキャップは直径5.5㎝ほど。
(Nikonが見えるように置けばよかった・・・・・・。ニコンさんごめんなさい)
ネットで調べてみると、ネズミモチは漢方薬として使われるのだとか。
しかも老化に効くそうで、老眼なども改善されるとのこと。
煎じて飲んでみたくなりました。
クリスマスプレゼント??
サボっていてごめんなさい。
新米の浅野です…いつの間にか年の瀬を迎えてしまいました。
今年の半分以上アフリカで過ごしていたので(そのあとはアジアを少々)
日本で過ごしたのは3か月。とっても慌ただしく過ぎました。
勉強しなければいけないことがたくさんです。来年は勉強する年にします。
さて、話は変わりますが
先日ブログで話題になっていた12.5kgのしし肉。
宮城の佐々木勝義さんと鈴木純子さん、山師二人からのプレゼント。
しし鍋に始まり、しし雑炊になり、しし焼き肉になりました。
こんなにしし肉を堪能できるとは…びっくりです。
でも、なによりびっくりだったのが吉田副部長。
手に持っているもの…
林室長がかわいくリボンをつけてくれましたが… 全然かわいくない。
これがクリスマスイブのおみやげです。
みんな口をそろえて「はじめ人間ギャートルズ(ゴン)に出てくるやつみたい」と大笑い。
これをリュックに入れて満足そうに家に帰って行きました。
新潟&唐津&名取の松原 情報交換会
こんにちは 海岸林担当 鈴木です。
今年も残すところあとわずかになりました。みなさんにとってどんな1年だったでしょうか?
私は大量の仕事を来年に持ち越して仕事納めを迎えることになりそうです。
12月22日、オイスカ事務所に遠方からお客様が2組お見えになり情報交換会を開催しました。
(吉田の報告はこちら)
おひと方は、新潟県から新潟市北区の区長さん、産業振興課の2人、もうひと方は、佐賀県からNPO法人 唐津環境防災推進機構(KANNE)の2人です。
今回の情報交換会は、新潟市北区からお話があったのがきっかけでした。
日本海に面している新潟市北区には211haに及ぶ海岸林(飛砂防備保安林)がありますが、近年、松くい虫被害よる松枯れ、ニセアカシアが生い茂ることで本来の保安林という機能が低下していること、区内の若い世代が区外へ転居してしまい、人口が減少しているという課題に直面しているとのこと。
この課題を解決しようと発案されたのが、地域の「産」「学」「官」「民」共同で地域活性化のために海岸林の下草刈りの作業を担うロボットを一から作り上げていこうという事業です。
新潟市北区の区長さんは経済産業省の出身ということもあり、この事業を国家プロジェクトとし、保安林管理ロボットが完成したあかつきには、全国に販路を広げていくというとても大きな構想となっています。
普段オイスカ内で、海岸林のパンフレットは道の駅ならば置いてもらえそう・・・などと考えている私には到底及ばないスケールの大きさに驚きました。もっとひろい視野で物事を捉えることも必要でした・・・反省
佐賀県からいらしたNPO法人 唐津環境防災推進機構(KANNE)のお2人は、玄海灘に面し、福岡県との県境にあり、国の特別名勝に指定されている「虹の松原」の松原再生事業を実施しています。
「虹の松原」といえば、11月に吉田はじめ関係者5名で視察に訪れた場所です。
こちらも新潟市北区の規模とほぼ同じ220haの面積に1,000,000本の松が植えられています。年間1,110トンにも及ぶ松葉や枝などの回収作業もさることながら、下草の繁茂に頭を悩ませており、作業を機械化できないものかと思案していたところへ新潟市北区の話があり、光を得た思いで遠く佐賀県から飛んでこられました。
約2時間、お互いの情報交換を行いました。時間が足りず、多少消化不良の感もありましたが、これがスタートということで、今後も交流が続いていくものと思います。
情報交換会の話を聞いた後の感想を、私と、同じく海岸林担当の浅野との会話でお届けします。
<浅> KANNEさんはアダプト制度(団体ごとに一定の区画を割り当てる里親制度)を取り入れていて、この制度ならば好きな日の好きな時間に落葉掻きなどの活動ができるから市民の方も参加しやすいよね。今のオイスカのボランティアの日は第3土曜日と日にちが決まっているとから参加できないこともあるしね。
<鈴> アダプト制度は確かにいい制度だと思うけれど、オイスカのように日にちが決まっているからこそ、その日に合わせてスケジューリングするというのもあるよね。
<浅> でも、将来的に名取でも取り入れられるかもね
<浅> KANNEさんの行っている幼稚園や小学校などへの出前授業は、ゆくゆくは名取でもやりたいね。
<鈴> 再生・保全活動の推進キャラクター ゆるきゃらの「虹松まもるくん」を使って活動をPRしているところも参考になるよね。松林が維持管理されていくのは地元の人たちの力があってこそだから、地元の人に小さいうちから理解してもらうというは必要だね。
<浅> KANNEさんでは小学校などの体験学習の場としても活用しているということだけれど、名取でもクロマツがもう少し成長したら体験学習の場としてぜひ活用してもらいたいね。今はまだ1mにも満たないクロマツがほとんどだから、環境教育的な面での活用は難しいだろうけどね。
<浅> 新潟市北区の取り組みは、官民という括りだけでなく、地域の学校・企業と連携して進めていくのは海岸林を守るという点で重要だと思うし、地域をあげて何かに取り組むのは一番成果が出やすいと思う。
<鈴> 産学官民のネットワークは、NPO単独ではできない規模だし、あれほどの規模で地域が一丸となって事業を進めることができ、軌道にのれば地域に魅力が生まれるだろうね。
<浅> どの木を刈って、どの木を刈らずに残すのかの判別をロボットがするのは難易度が高いような気がするけれど、日本の技術レベルなら作ることは出来るはず。
<鈴> 開発されたけれど使われないロボットが多いという話もあったけれど、区長は軽トラックに載り、軽トラック1台分の価格で開発したいということを念頭においていて、どんなロボットが出来上がるのか楽しみだよね。
<浅> 林業は植えて終わりではなく、植えたことがスタートなのだということ今回改めて実感させられたよ。保全管理にこそコストをかけるべきなんだよね。昔は松葉を燃料にしていたから、特に管理しなくても松林はきれいに保たれていたけれど、燃料が薪からガスや電気に変わってしまった今は、松林は人の手で管理しなければならないんだよね。
<鈴> このことを多くの人に知ってもらうために、もっと啓発活動に力を入れていかないといけないんだね。地域で住んでいる場所を守っていく気持ちを育んでいく・・・私たちの仕事ってなんて壮大なんだね~
まだまだ話は尽きませんが、この辺りでひと区切り
来所いただいた5人の方からは熱い気持ちを感じました。みなさんのエネルギーをいただき、新年1月からもがんばります。
今年も、とても多くの方々にご支援いただき、ありがたい気持ちでいっぱいです。
みなさん どうぞよいお年をお迎えください。 鈴木
思わぬご縁 風変わりな会合
12月22日、楽しみにしていた、風変わりな会合を行いました。
「新潟市北区・佐賀県唐津・名取の松原 実務レベル情報交換会」と称して。
私達も「海岸林と地域の将来ビジョン形成調査」が緒に就いたばかり。
まさにタイムリー。新潟・唐津の強烈に懸命な人たちが、
わざわざオイスカ本部まで。
前日、佐々木勝義さんから宮城県産猪肉12.5kgが偶然届き。
再生の会の鈴木会長からの宮城県産ササニシキ30kgも精米したばかり。
遠路の来客をお迎えする最高の体制が整った。
まず、新潟市北区役所のご紹介。
少し前に、オイスカ本部1階女性陣が「これはちょっと、かなりノリのいい」、
「オイスカっぽい方」から電話があったと、出張直後に報告がありました。
オイスカみたいなって、あーそういうね・・・
資料も拝見、電話したら、まさにうちの女子が言う通り。
目が覚めるような、従来イメージがぶっ飛ぶ「行政マン」。
焦点は「下刈の機械化」。
名取の現場訪問を希望。
残念ながら、再生の会も、私たちも誰の都合もつかない日。
ですが、地図をFAXし、各行政の「この方」を紹介。
弾丸出張で、現場実踏も行政との面会もすべて1日で。
「(普通なら)これで役目は済んだかな」と内心思っていたら、
オイスカ本部にも来訪を希望。凄まじい行動力。
この人たちは並の覚悟じゃない。
そして、11月にお世話になったNPO法人唐津環境防災推進機構。
「こういう話があるんです」とシェアしたら、
すぐさま「私たちも聞きたい。出張を至急検討します」と女性事務局長の藤田さん。
「・・・・」
「理事長と行きます」と連絡が来て。びっくりしました。
太田猛彦先生(東大名誉教授)も、オイスカの清藤城宏緑化技術参事も、
「都合をつけて行く」と即決。こちらもさすがの嗅覚。
オイスカ広報アドバイザーの菅文彦さんは、当日子どもが病気になってしまっても
スカイプで参加。
渾身のプチ海岸林サミットと思っていたら、
新潟からは、なんと北区の区長さん自ら・・・
一同、さらにびっくり。