雪の中でもマツは頑張っています
こんにちは。浅野です。
今年初!名取に行ってきました。
というのは、1月24日の話ですが…更新が遅くなってしまいすみません。
先月の大寒波で名取も雪に覆われていました。
今回、いくつかの業務のために現場に来たのですが、その中の一つに
「3月13日の歩こうツアーの下見」がありました。
植栽完了地を端から端まで歩こうというツアーなのですが、
説明をしながら歩くということで、どこがどのくらい成長してるのか、
といった確認をしてきました。
雪の中、てくてく歩くこと数分…何かの足あとが。
さらに数分…また足あと。しかも違う種類。
動物・鳥…大小さまざまな足あとがいたる所で見られました。
約3kmの中にこんなにたくさんの生き物が帰ってきてることをすごくうれしく感じました。
それと同時に雪の中でも力強く生きているマツたちに元気をもらいました。
ということで、みなさんにも見に来ていただけたら…と思います。
3月13日に歩こうツアーを予定していますので、ぜひご参加ください!
Post2020雑感⑨ 資金をどう調達するか
●2020年以降は、官が出来ることは官で、民が出来ることは民で
あと5年で復興交付金は終わる。東北はいつまでも国税をアテにしてはいられない。
地主の応分の負担、自らの出費を覚悟いただかねばならない。オイスカも協力継続が
大前提だが、あらためて、地権者の「自助」の覚悟、応分の負担を再確認しなければ
ならない。「自助自立精神」に協力するのが、オイスカ創立来55年の不文律。
その上で、当方も覚悟して協力させていただく。これまでは民間資金で実施していたが、
今後は行政の施策・制度を駆使することも考えねばならない。
官が出来ることは官で、民が出来ることは民で。
●収入源の分散化
Post2020は、宮城県南部に広大な面積に植栽された海岸林が生まれる。
しかし、あまりに広大。十分な公的資金が、名取に供給されるとは思えない。
まず、毎年、下草刈りを行わねばならない。公的資金はNPOに投入されるのではなく、
地権者が所有する森に直接投入される。しかし、まずそれを第1の収入源と考える。
行政から林業事業体への委託の他、NPOに委託される部分もあるかもしれない。
第2に民間努力による収入。まず、名取には育苗~植栽~2034年までの育林費用として
10億円目標で募金を募っており、最低でも2億円は、オイスカで管理する「積立金」
(内閣府にも「特定費用準備資金」として計画を提出している。
それは、「仮称)名取市海岸林を守る会」の活動資金・運営にも活用する。
この積立金が第2の収入源となる。
そして、第3の収入源は、寄附金・民間助成金収入。寄附金募集は半永久的だろう。
収入源の分散化・多様化は、運営の独立性・安定性の意味で重要と考える。
●地元NPOの自己資金率
全国の地場NPOの自己資金率(公的資金に頼らない部分)は、依然として「極めて低い」
というのが、NPOコンサルの多くの所見。志で立ち上げても、公的助成、委託事業
による補助金収入が大半を占めるという状況。
①公的助成・補助金収入、②寄附・民間助成収入、③事業収入
以上の3本柱が考えられる。収入源の分散、②③が半分以上となる高い自己資金率が
安定経営には理想的。しかし、②だけでも相当の労力が必要となる。
また、③については、海岸林の諸資源による取り組みで、ビジネスベースに乗った
事例は聞いたことがない。
●資金獲得の手法
どのような目標を掲げ、どのような経過で目標に辿り着こうとするかと、資金獲得
の手法は大いに関係があると考える。結論から言えば、名取の海岸林の場合、
「出来るだけ多くの方から少しづつ」という手法で森づくりの労力も、資金も募るのが
妥当だと考える。しかし、きれいごとばかり言えないので、官民にある良い施策に
アンテナを張り、あらゆる制度を駆使しながら、やり繰りすることになるのだろう。
また、オイスカを通じて東京をはじめ国内外のパイプを利用してゆく必要もある。
10月の大阪マラソン、私と一緒に出場しませんか?
今年も大阪マラソンの寄附先団体に選んでいただきました。
一流の企画に参加できることは、私たちにとって財産です。
2年前、まったく選ばれると思っていませんでした。
それ以降、チャリティマラソンというオイスカ初体験の大きな企画を、
「大勢の人がそれぞれできることを少しずつ」というプロジェクトの基本方針を
文字通りで行った結果、「チーム大阪マラソン」となったようにも感じます。
「みんなが少しずつ」だから、今度は私の番。
今年も何か、少しでも Something Newが必要です。
ですから、プロジェクト全体を預かる者として、今年は走ります。
最初から走ってみたい衝動があり、もう堪え切れなかった。
昔の自分のイメージで考えちゃダメなんですが。
東北全体の復興完了を目指す2020年まであと5年。
これまで5年と同様、さまざまな、予想しない事が待ち受けていると思います。
それらを乗り切るために、私自身がもっと成長しなければ。
走るのはその一環。決意に弾みをつけるために。
まずは、一生懸命歩くこと、鍛えてゆくためのカラダの準備から始めます。
10年前、林業会社に入る準備もそうでした。
まずは昼休みも真剣に歩くことから始めました。給料のイイ、
山専門の測量会社にバイトで入り、自転車で通勤し、
20kgの機材を背負い、杭に沿って山を直登する毎日でした。
夏は休みのたびに多摩川で泳ぎ、昼寝して。
その甲斐あって、山ではウリボウを素手で捕まえる寸前の
運動神経になりました。
でも今はまた、典型的なオジサン。
故障はバカバカしいので、じっくり準備します。
smoking、drinkingは、断固継続します。
名取の海岸林は、僕のトレーニングの場にします。
どなたか、チャリティランナーとして、
僕と一緒に大阪に出場しませんか?
大阪のビールも、串焼きも、イイですよー。
チャリティランナー詳細はコチラ→http://www.oisca.org/kaiganrin/3048
お問い合わせはこちらまで。
kaiganrin@oisca.org
Post2020雑感⑧ 宮城南部では誰がどのように担うのか?
●宮城県南の重要な特徴
「海から幅数km、人が住まない海沿いが何十kmも続く、今の、未来の被災地」
全国の海岸林の多くは沿岸部に住む人に親しまれ、守られている。数km先に住む人が
わざわざ海まで行って朝夕の散歩をするとは思えない。依然、海に行くことを避けたい
心情が色濃く残っている。市民の中で忘れられた存在になるのが現実だと思う。
だからと言って、市民参画をあきらめていいのか?また、役所任せでいいのか?
東北魂をここでも示さないといけない。海沿いの賑わいを取り戻したいはず。
人口統計などのデータを見ると県南は、仙台・名取・岩沼は増加が続き、亘理・山元は
大幅減の傾向は明らか。市民参画力もまちまちであり、公共工事中心で進めるゾーンと、
市民参加を期待するゾーンと色分けできる。
「壮大な規模の育林実務が待っている」
実質6年の短期間で1,000haを超える史上稀な造林を行っているのが今。しかし、海岸林は
将来木材になる経済林ではない。木材からは永遠に何の収入もない。復興交付金もあと5年。
その後は、地権者の負担。すなわち市民の税金。なぜ海岸林が必要なのか、市民に理解を
促進し、あきらめず参画を求めなければならない。まずは下刈・つる切り・除伐を確実に
進めなければ、これまで投入された資金が無駄になる。置き去りにしては、将来必ず
マスコミから叩かれる。
「国・県・市と、地権者が分かれている」
これは大前提となる、最も基本的で、重要事項。また、連携が滞ることを前提に、それに
対応した構想が必要。「その連携は役所同士の責任でしょ」と言うのはその通り。しかし、
「コミュニケーションが悪い」のは民間も同じこと。世の常。何が何でも連携を強めなければ
●再生・保全基本計画の立案を望む
2011年に林野庁「東日本大震災に係る海岸防災林の再生に関する検討会」の報告が、
被災3県全体の再生基本方針となった。Post2020に関しても、壮大な規模の植栽が完了した
後の、堅実な育林を保証するための指針・目標が取りまとめられることを期待したい。
同じ場所で国有林・民有林が接する現場でもあり、しかも壮大な規模の復旧を今後も滞り
なく進めるため、各森林管理署や各県を中心に、地域の実情にあわせ、中長期基本計画が
つくられることを期待したい。佐賀署では日本森林技術協会に委託して調査を実施し、
その報告書が基本計画となった。
●人が代わっても不動の、核となる実行体制、実行計画が必要
提案:「宮城県海岸林保全連絡会」
市町村行政には実務に精通した人は極めて少なく、その上、林業は兼務で優先順位が低い。
広域連携・情報シェアを行い、全体方針確認システムが必要だと思う。各市町村担当者同士
も顔が見える関係になり、互いを参考にし、地区毎の施策の凹凸を減らす森林育成につながる
のではないか。各市町村ともに、地元にNPOが育っていなくても、林業・造園会社への委託など
日常業務を、担当者自らが、根拠を理解して発注できます。
実行部隊の編制方式、具体的方法は複数考えられる。シミュレーションや、議論はまだ
これから。しかし「たたき台のたたき台」として気負わず言えば、現時点では大きく2案。
各地の事例に学びつつも、行政や関係者との意見交換に時間をかけて、当地なりにアレンジ
することができる。
●名取での方法論
A案:「協議会」方式(虹の松原型)
国・県・市を含む官民で協議会を編成する。協議会事務局は市。協議会内部に技術部会や、
市民参画部会を設ける。市民の窓口・参画受付・サポートは「守る会」に、ボランティアに
担えない部分はプロに、それぞれ協議会から業務委託する形式。緻密な連携・分業が重要で、
協議会事務局のハンドリングが鈍いと業務が滞りやすい。
B案:「直接協定」方式(えりも型)
現在のオイスカ&再生の会と地権者との協定を発展的に解消。国・県・市も森林組合も
各種団体もオイスカも一員である「守る会」を再編成し、地権者と協定締結。
プロの活用なども「守る会」が一手に担い、各市民団体、企業なども、守る会のもとで参加し
ます。極めてシンプル、責任も明確ではあるが、守る会にお任せになりやすい。
B枝案:オイスカ直接関与方式
新団体を立ち上げるのではなく、オイスカ宮城県支部内に、①支局(当法人では推進協議会と
呼び、全国に約50ヵ所の会がある)、または、②海岸林部会を設置するという手法も考えられます。
メリットとしては、オイスカ内なので、会計管理・監査などに代表される、事務の単純化・
軽減になり、新団体を立ち上げるよりもスピーディーに移行できます。
●核となるNPOの育成
NPOは何のために世の中にあるのか?多くの存在意義があるが、この場合で言うと「接着剤」
「潤滑油」「コーディネート」という言葉が当てはまる。串刺し的に様々な関係者を横断的に
繋ぐ。駆けずり回るのは森林組合、行政、企業でもやることだが、仕事によってはNPOに期待
されている部分。行政も補助金・助成金・業務委託という典型的な方法だけでなく、具体的な
協働実務を通じて技術力向上などNPOを育て、NPOも経営努力して若い人が生涯働ける場に
成長しならなければならない。
中野悦子会長、永石安明専務理事の名取訪問
専務理事の永石安明です。
海岸林ブログに初めて寄稿させていただきます。
1月12日~13日、中野悦子会長に同行し視察しました。ご存知のように、オイスカでは
東日本大震災直後からクロマツ苗木を自家生産し、10年間で50万本、100haの海岸林再生を
目指す、という当時の状況から考えると途方もない目標を掲げて今年で5年目になります。
当初は専門家でさえ、危ぶむ声の中でのスタートでした。しかし、現場で既に植栽が終わった
26ヘクタールの植林地と、そこに隣接する新規植林予定地を見学し、そこで立派に育つクロマツの
幼木を見たとき、これは本当に日本だけではなく、世界にも誇れるものであると確信しました。
現場責任者の説明によれば、植栽されたクロマツ苗木は補植前時点で98%の活着率(2014年度)、
2015年度は99%以上と聞き、それを目の前にして、それが確かな事実と改めて分かりました。
また、 育苗場で生育中のコンテナ苗(抵抗性クロマツ)も発芽率も93%を超え、県内トップを
維持しているとのこと。これには地元の林業専門家も驚くほどの成果で、全国の自治体はじめ
各界の専門家の訪問も後を絶たないとのこと。寒風、潮風、栄養分不足などの過酷な
条件下としては驚異的なことなのだそうで、これを見て、やはり専門家の叡智と地元住民
現場担当者の熱意が、生き物であるクロマツに伝わったものではないかと感じました。
今は亡き、池田広志フィリピン・ミンダナオ島エコテック研修センター所長が常々言っていた、
「植林とはただ木を植えるのではなく、人のやる気を植えなければ本当の森には育たないんだ」
という言葉が私の脳裏によみがえって来ました。これこそが、正にその言葉を地で行くプロジェクト
ではないかということです。
現場視察の後は仙台森林管理署、宮城県森林整備課、若生宮城県副知事、佐々木名取市長などを
表敬訪問しました。訪問の目的は、昨年6月に新しく就任された中野悦子会長の挨拶と、海岸林再生
プロジェクトが6年目に入るのを前に、国民の記憶から大震災が薄れる中、「オイスカはこれからも
腰を据えてこのプロジェクトを実施していきます」との意思表示と、現地でお世話になっている
関係者への感謝の気持ちを伝えるためでした。会見の席上では、名取市海岸林再生の会代表の
鈴木会長も同席され、地元住民やオイスカ関係者の現場での血と汗の滲むような努力があって
今日に至っているので、継続的な支援をお願いしたいと訴え、これに対し、林野庁関係者、
宮城県、名取市関係者からは、プロジェクトを高く評価するコメントをいただくと同時に継続的な
支援の要請を受けました。
オイスカでは設立当初から現場主義を唱え、1960年代のインドへの農業技術指導者派遣を皮切りに、
東南アジア各国へ農林業の指導者を派遣すると同時に、アジア太平洋、アフリカ、中南米からの
青年を日本へ受け入れ、農業を通じた人づ くりに携わってきました。
そして、1980年代以降は従来の活動と並行して、環境保全の一環としての植林活動を世界35カ国で
展開しています。途上国における植林活動を30年以上続けて導き出されたものは、現場地域住民の
理解・協力なくして プロジェクトは成功しない、ということ。それは、ただ単にお金だけの関わりに
止まらず、住民との固い絆・信頼関係があって初めて成り立つものです。そのような海外での
経験をもとに海岸林再生プロジェクトが実施されていることを改めて実感した訪問となりました。
Post2020雑感⑦ 残念に思えた各地の事例・・・
●学びの場への工夫不足・・・
海岸林の存在意義、造林史の紹介の不足は、どこの海岸林も共通。「学びの場」への
工夫が著しく欠如しているのは非常に残念です。歴史的文化的価値の高い石碑等の扱いは、
目を覆いたくなるし、悲しくなることは多い。千葉県館山市平砂浦では、心ある人が
個人のブログで苦闘の歴史を刻んだ石碑を紹介していたので、知ることが出来た。
また、何処に行っても林業部署、観光部署、教育委員会の足並み不統一を常に感じる。
あまりにバラバラ。哀しい世界。少しの想像力、少しの思い遣り、少しの助け合いでいいのに。
市民やNPOも、役所任せにせず出来ることがあるだろう。海岸林は一部の人しか
関係しない、あってもなくても関係ないマイナーな存在なのだろうか。労せずして
多くの人が海に来るのに、誰もが無意識に通り過ぎるだけ。極めて勿体ない。
山形県庄内海岸では「先人の苦労を知り、守ろう海岸林」と豪快に書かれた
看板を見て、ここの歴史に相応しい看板と感じた。海岸林ではないが、
岩手宮城内陸地震の地滑り現場には、栗駒山登山や湯治客の多くが立ち寄る場所に
技術者も唸るような説明が多数設置されており、読み耽る人の多さにも驚いた。
海岸林の現場もアカウンタビリティー(説明責任)を果たそうという感性が必要だ。
●海にレジャー来た人は全員素通り・・・
香川「津田の松原」では、海開きに来た人やトライアスロン大会に来た人などまで
短時間でも「落ち葉掻き」をするそうだ。唐津「虹の松原」でも来訪者を活用している。
学びの場への工夫と同じだが、一人でも多くに森林に親しんでもらうだけでなく、
保全にも手を借りようという手を打つ、貪欲な現場は少ない。
隣接した観光地だけが突出し、森は無視され、荒れ放題という現場も多く見た。
林業部門も「ちょっと待ってよ!」と庁内で押し返す自信がないのかもしれない。
●団体の乱立と主義主張の対立・・・
しかるべき筋から、大きな松原の保全に関して「内部対立」のうわさを聞いた。
クロマツvs広葉樹論争が影響している地区もある。「リーダー」(総責任者)に
熱意も意識もなく、旗色が不鮮明で、おのずと配下は輪をかけて、熱意の欠片もない
現場も見た。資質を無視して充て職でリーダーを決めるとブレやすい。
自分の選挙に利用していると陰口をたたかれている地区もあった。「本当の専門家」を
見極め、重要なポジションで迎え、その発言を重視する必要がある。虹ノ松原の様に
「すべて協議会のテーブルで決める」と明言して、安定運営している例も。
●基本計画を公開しては・・・
基本的に全国森林計画、市町村森林計画は5年、10年単位で作られる。従って多くの
現場には「基本計画」はある。しかし、これからの時代は、専門性が高い現場や、
注力せねばならない現場、市民参加を特に必要とする現場は、ちょっとひと手間かけて、
現場第1線の専門家や、地元のキーとなる組織の代表を取り込んで策定しては。
オリジナルや読みやすい概要版を公開しても良いのではないか。ある場所では、民間が
進んで十分な「基本計画」を立てたものの、立案メンバーが「民間だけ」だったため、
拘束力が全くなく、お蔵入りしている残念な事例も見た。
●目標林型が定まっていない・・・
海岸林の整備方針立案の際、本当に精通してるわけではない先生が委員となり、
専門分野のバランスを欠く委員構成、一見して疑問な計画も幾度か見た。観光・
産業分野が妙に強かったり。従って、目標林型が明らかにおかしく、理解に苦しむ
施業をしていたり。自然砂丘が地盤なのに、海を目の前にタブノキを植えるのは
最たる例。やはり、基本計画、目標林型など大目標がしっかりしていない仕事は
後々仕事する人が苦労する。
●辞めるに辞められないんだ・・・
88歳のおじいちゃんのひとこと。30年も落葉掻きを続けてきた団体。その実績から
顕彰歴はものすごい数。自薦で獲得してきたとは思えない。現在メンバーは16人。
「毎年誰かが辞めるんだ・・・」。一方、無給で頑張っている人を尻目に、「ガイド・巡視」
と称して行政から「お小遣い」をもらって、毎日椅子に座っている団体が並立していた。
小さな街の両団体を、みんな見て見ぬふり。
●NPOの力量不足と社会的地位の低さ・・・
何でも行政が担うという時代はもう終わり。しかし、NPOも以前に比べ力量を付けて
いるが、その経営力、資金、雇用能力、自己資金が不足し、役所の委託事業が収入の
大半を占めるのが全国共通のNPOの姿。涙ながらの努力で無理矢理担うのが実態。
雇用の受け皿として成長途上で、若い人にとって職業として食っていけない。
立ち上げることは易く、続けていくことは難し。NPOを下請け扱いする世間の目、
社会的地位の低さもいまだに多々感じる。「彼らはボランティアで、好きでやってるんだから、
無給でさせればイイ」という見方。しかし、総務や事務力も強いNPOは現場でも強い。
何でも無給が当たり前ではなく、コアを担う人が安心して働ける人は安定雇用せねばならない。
●お互いを育て合おう!
「NPOに委託したら口を出さない。余計なことを言わず任せたくなる」というのが行政側
の心情だと感じる。行政側の人員不足から丸投げになるのだろう。「専門知識不足から
遠慮して逃げている」と口にしたNPOもあった。まともに協働してれば微調整や、細かな
協議、最前線からの情報提供、節目節目の確認など、無意識のうちに、ごく自然に
コミュニケーションは密になる。熱意に感化され、どんどん相手も変わってゆく。
NPOと行政が、互いの役割を補完し合い、教え合う、育て合うぐらいのおおらかさがないと、
協働出来ないのではないか。お互い万能じゃないのだから。
Post2020雑感⑥ 100年後、どこの松原と似ていたいか?
「1ヵ所、ここ!」と敢えて言えば、今の私にとっては襟裳岬。
「10数年後には大体こうなるのか~」という若い森から50年先まで学べたので。
現実的かつ低コストな造林手法、住民の理解度、参加度、どう考えてもお手本。
試験植栽地でない本気の現場で、10年後とか、30年後とか、見たことありますか?
襟裳は、林野庁の歴代担当職員数十人、苦闘の場所です。
しかし、お題は100年先。もう少し年を取った海岸林を考えてみると・・・
愛知県渥美半島伊良湖の海岸林に行った時、後ろの数百haの畑で朝から従事する
人の数にはタマゲました。「農業が栄えている」というインパクトがありました。
しかし、恩恵を真面に受ける人々が保全に協力しているという点では、襟裳町の
漁師・町民に勝る現場は知りません。
名取の海岸林背後には「興農共栄」碑もあります。「愛林」碑には「名取耕土」と
いう言葉があります。昔の人の言葉に共感する人を増やしたいなと思います。
秋田県能代市「風の松原」では、圧倒的な高さのクロマツ防災林の下に、多様な
植物・樹木があり、海岸林の基本機能を十分に果たしています。広大な林内には
縦横に「作業道」があり、ウオーキング、ランニング、サイクリングする人も迷う
ことなく森に入り、8時半には、シルバー人材センターの方などの雇用の場にも
なっています。同じく市民の関与・利活用だけでも「虹の松原」は大きな目標。
香川県「津田の松原」では、恐らく数校、随分たくさんの子どもたちが遠足に来て
いました。体育協会のトライアスロン大会のポスター、和歌・俳句の吟行ポスト、
道の駅など、多様な目的で訪れる人がいることに注目しました。
千葉県山武市「蓮沼海岸」(九十九里浜)には、家族連れを引き寄せる大きな公園
が海岸林に併設されています。
学習の場という面では、「全国の海岸でここが一番というものがない」と感じて
います。この数年で見た中では、海岸林ではないですが、栗駒山麓の岩手宮城内陸
地震の復旧地のように、「通りがかった人を対象に、ここが何なのか、しっかり
説明している点」。これは名取では出来るだけ活かしたいと思っています。
海沿いの賑わい、学習の場、地元の誇り・・・各地で目に焼き付けてきた多くの
お手本を、努力次第で限りなく活かせるのが今の私たち。
溢れんばかりの夢は、すべての苦しさを凌駕する気がします。
Post2020雑感⑤ 2030年以降の森の姿と、やるべき施業
●松くい虫の早期微害化対策
「松くい虫はエボラ出血熱のような驚異」と太田先生も言います。壮齢以降にしか
発症しないという説は過去のモノ。直径10cmになればターゲットになると考えます。
潮風の影響を受けにくい内陸防風林の植栽には、「クロマツより100倍強い?」と
まで言われる岩手県産抵抗性アカマツを配置し、海岸でも抵抗性クロマツを内陸側
配置しましたが、抵抗性のない残存クロマツ壮齢・老齢木が市内の随所にあるので、
それが足掛かりにされるはず。薬剤防除は「発見後の対応」が重要なので、即対処
を行政当局、住民と共通認識を図らねばならない。「巡視」が重要。見つけたら
「即通報、即伐採・燻蒸・搬出」。沿岸部の農家にも早くから啓発し、理解・協力を
求めていなければなりません。
●一番下の枝が、出来るだけ低い位置から生えるように
防災機能を十分発揮するために、枝が低い位置から生え、言わば「ずんぐり
むっくり」の形の松に仕立てたい。枝が高い位置まで枯れあがるのではなく。
「形状比」(樹高÷胸高直径)を低く。「ずんぐりむっくり」は、「苗半作」の
育苗の時点からの大方針です。背丈は高くなく、根元径が太く、枝が豊富な苗を
育てようと、再生の会が頑張ってきました。
●枯れ枝払い(枝落とし)
マツは必ず枝が枯れ上がってきます。襟裳岬では毎年秋「育樹祭」を行って、
町民が決めた個所を大規模に「枝払い(枝落とし)」するそうです。ノコギリで。
そうすることで、その後の本数調整伐の作業員もはるかに仕事しやすく、森に
とっても光も差し込みやすくなり、広葉樹の実生が発芽することを促します。
しっかり指導すれば、襟裳岬の様にボランティアの活躍の場にもなるでしょう。
●本数調整伐(いわゆる間伐)
海岸林の間伐は、材木目的の経済林と区別して専門用語では「本数調整伐」と呼び
ます。「名取の海岸林では、いつ初回の本数調整伐を迎えるか?」ということは、
いまは誰も分かりません。なぜなら、新たな人工盛土の上に植栽したから。森林
総合研究所の方に伺ったところ、「宮城南部では人工盛土の土壌の性質上、生長に
時間がかかるかもしれない。いつとは言えないが平均樹高が1mを超えた時点で、
やっと1回目の本数調整伐の時期が見えてくる。オイスカにはぜひ平均樹高が3m
未満で初回の本数調整伐を、1伐3残で取り組んでほしい。思い切って伐ることが
肝要。ボランティアでもできる太さ」。佐々木統括の予想は「植栽から20年前後」、
清藤先生はそれより若干早い。2034年ごろ、すでに引退した65歳の私は、むかし
取った杵柄で、植えた木の伐採をしているだろうか。
●広葉樹導入の時期は?
まず、圧倒的な高木となるマツを最優先に育てます。広葉樹の実生苗を仕立てる
のは、将来もマツを越えない差がついたその後と考えます。襟裳岬では25年後から
本数調整伐を開始しているそうです。ちなみに、松の間の「林間植栽」は極めて
成績が悪いとの事。やはり本数調整伐をして、実生で生えてきた広葉樹を伸ばして
あげることが理に適っています。コストの面からも。名取では、オオシマザクラ、
ウワミズザクラや、低木系の常緑広葉樹などが有力候補でしょう。ただし、海寄り
のゾーンはクロマツ純林にすべきです。繰り返しますが、人の手では植えません。
●名取の海岸林に「落葉掻き」は必要か?
虹の松原、気比の松原、天橋立などは文化財保護法の「特別名勝」「名勝」に指定
自然公園法の「国定公園」などに指定されています。誤解を恐れずに言えば、「美
しく」なければならない。白砂青松の景観を保全することは地元の希望でもある。
しかし、名取をはじめ全国の多くの海岸林の第一ミッションは、潮風の流入をどう
防ぐかなど防災林機能の重視である。先行樹種としてクロマツを導入し、遥か将来
は侵入した広葉樹の実生を積極的に活かせばいいと思います。従って原則的に、
名取の松原では落葉掻きは不要」と考えています。ただ、閖上や空港近くの北釜
地区の一部では公園的要素を持たせ、親しみやすい林に仕立てても良いと思います。
●(仮称)名取市海岸林を守る会は、いつまで大変なのか?
これ、すごく考えます。個人的に、最悪のことをすぐ考えてしまうのですが、結局、
楽天家なので。それ前提で。30年後までは市民が定期的に集って出来ることは多分
にあります。そのボリュームは確実に減るはず。市民過多なはずはありません。
プロの領域が徐々に増えるでしょう。地権者の成すべきことは明確にあります。
しかし、地権者とは言えども、行政が何でも担うという、行政依存という世の中は、
これからの日本には相応しくないと思います。何でも税金に頼るのでなく。
住民も行政も進化するでしょう。今と同じなわけはありません。しかし、人間の性。
「組織30年」という言葉もあります。まず現代の私たちは、肩の力を抜いて、最大
でも「第3次10ヵ年計画完了まで」と期間を決めて考えても良いのかと思います。
●参考資料
クロマツ海岸林の管理の手引きとその考え方 森林総合研究所
https://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/chukiseika/2nd-chuukiseika24.html
[PDF]津波被害軽減機能を考慮した海岸林造成の手引き 森林総合研究所
https://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/chukiseika/…/3rd-chuukiseika24.pdf
[PDF]クロマツ海岸林に自然侵入した広葉樹の活用法 – 森林総合研究所
https://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/chukiseika/…/3rd-chuukiseika17.pdf
Post2020雑感④ 2021年以降の森の姿と、やるべき施業
以下、不勉強を露呈することになる可能性もありますが、自分の責任で思い切って
書いてみます。明日は2030年以降を想定してみます。
●上から地面があまり見えないぐらい、枝がビッシリ
2014年植栽地は植えてから7年が過ぎ、歩くには、松をかき分けて一苦労でしょう。
そういう中でも、太陽を求めて「つる草」は這い上がってきます。ニセアカシアも
わずかな日光でも生き抜くと言われています。2014年植栽地は、2021年以降も
つる切り・除伐が続きます。公共工事にはないボランティアの手が入り続けている
という「特殊事情」が名取にはありますから、プロの手を要する負担は軽減されて
いる可能性もあります。
●2014年の初植栽ゾーンの平均樹高は1.5mを超えるか
2014年に初めて植えた個所は、高さ1.2mの静砂垣、高さ1.6mの防風垣を越えるマツ
がたくさん出てくると思います。防風垣の高さを超えると 海岸林としての役割・
機能を、徐々に果たし始めると言ってよいのだと思います。風が直接当たります
から、海側の枝は、潮風をまともに浴びて、すべて枯れたようにも見えるでしょう。
長く伸びた新葉は強風に煽られ、たくさん折れてしまうこともあります。
防風垣や静砂垣は、依然として木を保護する役割を果たしつつも、耐久年数10年と
いう限度が少しずつ迫り、朽ち始めるものも散見されるはず。撤去されることは
なく、さらにその先、完全に朽ち果てるまで役割を果たし続けます。
●下刈のボリュームは徐々に減ってゆく
名取の最後の植栽は、予想では2020年。数ha程度、空港東側の元私有地周辺が残る
と考えています。普通は「植栽から7年は下刈」です。名取の下刈ピークは2020年。
計算上、2014年植栽地は2021年には下刈をする必要はなくなります。全体の仕事量
は毎年下降し、面積は少なくなっていますが、2026年頃までは下刈は続くでしょう。
一番下の枝まで日光を当てることが重要で、庭の様に潔癖に草刈りするのではあり
ません。名取の場合は、全体の面積が広いと言っても、植栽直後からボランティア
とプロの併用で、コンスタントに下刈を続けているので、他地区よりボリュームは
軽いと予想しています。また、先々のために、2020年中に初めての「育樹祭」を
開催するのも良いかもしれません。
●つる切り・除伐は、手を抜けない
「除伐」とは、必要な樹種以外を伐採する意味。名取では特にニセアカシア。
葛、ニセアカシアの繁殖力の強さは折り紙付き。多くの方に知っていただいた
と思います。佐々木統括は「闘いと思って臨まねばならない」と繰り返し私に
言います。宮城南部は、大量に生えていたところに高く盛土をして、大半を埋め
たので、現在同様、徹底駆除を続れば、他ほどボリュームは多くないだろうと
予想しています。とにかく、名取では、除伐後は、「即、薬剤塗布」を、すでに
今から森林組合にお願いしています。ボランティアの手も動員して「芽かき」も。
夏、芽が出たてのニセアカシア・葛を見つけては掻き取る。もしくは抜根。
佐々木統括からは、一番エネルギーを消費している夏に刈り取る「山芋理論」を、
叩き込まれています。
●生長予測
東日本大震災の復旧個所は「人工盛土」という特殊事情があり、率直に言って
「わからない」という現状です。清藤先生、佐々木統括、私で話しても三者三様。
敢えて、盛土の事情を踏まえず、千葉・岩手・宮城・福島の過去データを参考に、
清藤先生に予測してもらいました。
「50年で樹高9m」というと、低いと感じるかもしれませんが、二階建て住宅の
屋根の上。しかも、海側最前列と、内陸側最後列とでは高さに相当の開きがあり
ます。高さ3.2mの盛土の上に9mですから、相当高く見えると思います。
つづく
Post2020雑感③ 名取の海岸林の機能と、ゾーンニング
●名取の海岸林の機能と、ゾーンニング
肝心の記述を述べるのが遅くなりました。
名取の海岸林には、大きく2つの機能があると考えます。
1.防災機能: (防風、防砂、飛塩・高潮防備、津波減衰、防霧・ヤマセ防備)
2.景観保全保健文化機能:(余暇や憩い、散策・学習の場、生物多様性)
名取を含む宮城県南部、東日本大震災被災地の海岸林再生では、防災機能を保持した保全
整備を優先して考えることが望ましいと思います。とくにこれからは「地球温暖化」。
スーパー台風や高潮など何十年に一度の異常気象への防備を私自身は意識しています。
「名勝」のように、枝下の向こうに海が見える美しい林床に保つ必要はないと思います。
むろん、閖上や空港付近など、部分的には、お弁当を広げられるような、「親しみやすい
ゾーン」があってもいいかもしれません。
次に、ゾーンニングを行って、対象地ごとに保全の手法を区分する必要があります。
これまで海岸林の津波減衰効果や、飛塩・飛砂を分析した研究から、林帯幅200m以上が
適当とされています。プロジェクト再生植裁地の林帯幅は平均で約200mです。
飛塩や飛砂を「濾し取る」ようなイメージの機能です。
1.汀線(*ていせん)ゾーン *汀線:波打ち際
林野庁が示している林分構造の事例同様、海岸側から植裁50m程度のゾーンは、
防風、防砂、飛塩防止、高潮防備、津波減退効果を最も発揮させるエリアですから、
形状比(樹高÷胸高直径)・枝下高を低く維持していくのが重要だと思います。
そのためには、最新の研究に基づき、将来は、本数調整伐(海岸林では山で言う間伐を
このように言う。材木にする山の間伐と区別している)も、例外なく進めるべきと
考えます。このゾーンは松の純林となります。
2.内陸ゾーン
汀線ゾーンの内陸側では、林分密度も中~低密度に調整し、樹高を高く、形状比を低く
管理する。将来の本数調整伐に伴い、枝下高が高くなった頃に、中・下層木としての
実生の広葉樹の自然侵入を促し、防災林としての機能を増す必要があります。
3.生物多様性配慮ゾーン
海岸林と農地との間、国有林地内に幅約30mの生物多様性配慮ゾーンがあります。
ここは湿地のような状況になっている場所もあり、オイスカと国との協定締結からは
外れている。トンボだけ見てもイトトンボなど種類が多く、部分的に実生で生えてきた
サクラ類が残っている。オイスカ協定地内ではこのゾーン設置の趣旨も考え、全長500m
以上の林縁部に1.8m間隔で2列のみ、ヤマサクラ類、ケヤキ、コナラ、クリを植栽。
先々も広葉樹侵入はかなり困難と考え、植栽木が母樹となって、配慮ゾーンとクロマツ
林床への種子の拡散を目論みました。(過去2年の広葉樹春植栽の活着率は30%程度と
極めて悪かったが、初年度の秋植栽は70%以上の活着、昨年の秋植栽も現時点では成功)
つづく