多湿地帯の改善 ~2018年から本格化した排水路づくりの進捗~
吉田です。今日は排水路整備(我々の造語は「溝切り」)を大まかに振り返ります。
協定面積103.05ha、植栽実面積72.46ha(約37万本)のうち、改善が必要な多湿地帯は少なくとも約28ha(植栽地全体の約40%)。これは人工盛土の難しさなので仕方ないことと受け止めていますし、研究も進められています。コロナ禍があったとはいえ4年かけて、わずかでも応急処置をしたのは25ha。未着手は3ha。これまでボランティアの力により、天端1m×底50㎝×深70㎝の「LLサイズ溝」だけで2,750mを掘りました。すべてボランティアだけでという訳ではなく、国・県・市も課題を共有し、ともに解決に当たってくださりました。とくに全長1km×底幅4m×深1.5mの作業道兼遊水地を2本、多湿が著しい名取市海岸林に設けてくださったのは大きかったと思います。
先週末も、長年の懸案の場所にボランティアを投入。
次の日は、香川県立高松北高校の生徒さんたちが、同じ場所の続きを。いつもこういうリレー方式で課題解決します。
この2日で120m×20m(クロマツ1200本分)が大幅に改善に向かいました。あと2回ぐらい作業が続きますが。
そもそも、「海岸林造成の基本インフラで重要な3点セットとは、1.防風垣、2.作業道、3.排水溝」と教えてくださったのは、えりも岬海岸林でひだか南森林組合の木村徳美参事。2013年8月に、松島森林総合の佐々木勝義さん、宮城中央森林組合の佐々木秀義さんと3人で勉強に行っていました。ですので、多湿状況への危機感、そしてその対策としての溝切り作業実行に移るのは誰よりも早かったと思います。
2014年の植栽開始以降、まずは下草刈りを最優先させ、溝切りは余力がある時のみとしてきました。すでに木が植えられているので当然重機を入れることはできません。ボランティアの力で応急処置を繰り返し、少しずつ卒業に近づけるというイメージです。
しかし、名取市海岸林の北半分、2016年植栽以降は、完成した盛土とその後の滞水状況が格段に悪くなりました。我々は、「ここでは、降った雨の8割は林外に排水させたい。蒸発は1割、浸透は1割程度しか期待できない」と考えました。2018年、本格的にボランティアの仕事に取り入れ、溝のサイズも大型化・多様化。剣スコップも80本以上買いました。コロナ禍前の2018・2019年で応急処置を大幅に前進させました。
来年3月、森林立地学会のオンライン講演会があり、このような改善の歩みを報告してほしいと依頼いただきました。これまで、森林の専門誌への寄稿(ex.「森林技術」2020年3月号)や、日本森林学会シンポジウムなどで現場の考えをお伝えする機会はたくさんいただいてまいりましたが、写真やデータで比較できるように整理しようと思ってます。支援者やボランティアの方にも見てもらいたいです。