吉田です。今日は排水路整備(我々の造語は「溝切り」)を大まかに振り返ります。

協定面積103.05ha、植栽実面積72.46ha(約37万本)のうち、改善が必要な多湿地帯は少なくとも約28ha(植栽地全体の約40%)。これは人工盛土の難しさなので仕方ないことと受け止めていますし、研究も進められています。コロナ禍があったとはいえ4年かけて、わずかでも応急処置をしたのは25ha。未着手は3ha。これまでボランティアの力により、天端1m×底50㎝×深70㎝の「LLサイズ溝」だけで2,750mを掘りました。すべてボランティアだけでという訳ではなく、国・県・市も課題を共有し、ともに解決に当たってくださりました。とくに全長1km×底幅4m×深1.5mの作業道兼遊水地を2本、多湿が著しい名取市海岸林に設けてくださったのは大きかったと思います。

先週末も、長年の懸案の場所にボランティアを投入。

UAゼンセン17名、ボランティアリピーター10名 2021年10月23日

UAゼンセン17名、ボランティアリピーター10名 2021年10月23日

次の日は、香川県立高松北高校の生徒さんたちが、同じ場所の続きを。いつもこういうリレー方式で課題解決します。

香川県立高松北高校27名とボランティアリピーターら 2021年10月24日

香川県立高松北高校27名とボランティアリピーターら 2021年10月24日

この2日で120m×20m(クロマツ1200本分)が大幅に改善に向かいました。あと2回ぐらい作業が続きますが。

そもそも、「海岸林造成の基本インフラで重要な3点セットとは、1.防風垣、2.作業道、3.排水溝」と教えてくださったのは、えりも岬海岸林でひだか南森林組合の木村徳美参事。2013年8月に、松島森林総合の佐々木勝義さん、宮城中央森林組合の佐々木秀義さんと3人で勉強に行っていました。ですので、多湿状況への危機感、そしてその対策としての溝切り作業実行に移るのは誰よりも早かったと思います。

えりも岬海岸林の林野庁事務所で撮影。2013年8月15日

えりも岬海岸林の林野庁事務所で撮影。2013年8月15日


2014年、初植栽から1か月あまり、水捌けの悪さに驚き始めた。2014年6月6日。

2014年、初植栽から1か月あまり、水捌けの悪さに驚き始めた。2014年6月6日。


宮城中央森林組合の現場代理人、佐々木秀義さん。「これはまずい」と、この時初めて一緒に溝切りをやってみた。2014年6月6日

宮城中央森林組合の現場代理人、佐々木秀義さん。「これはまずい」と、この時初めて一緒に溝切りをやってみた。2014年6月6日

2014年の植栽開始以降、まずは下草刈りを最優先させ、溝切りは余力がある時のみとしてきました。すでに木が植えられているので当然重機を入れることはできません。ボランティアの力で応急処置を繰り返し、少しずつ卒業に近づけるというイメージです。

初めて組織的なボランティア出来た方たちに溝切りをお願いしてみた。掘っただけで水が出てくる・・・山形県庁新入職員研修約30名。2015年4月16日

初めて組織的なボランティア出来た方たちに溝切りをお願いしてみた。掘っただけで水が出てくる・・・山形県庁新入職員研修約30名。2015年4月16日


2015年植栽地の中央部。この頃の溝はSサイズだったが、この場所は1回のこの日の作業だけでやり直しナシ。後々、溝サイズが大型化・多様化するなど、考えてもいなかった。映っているのは海岸林担当職員の鈴木和代ご一家。撮影:2015年8月25日

2015年植栽地の中央部。この頃の溝はSサイズだったが、この場所は1回のこの日の作業だけでやり直しナシ。後々、溝サイズが大型化・多様化するなど、考えてもいなかった。映っているのは海岸林担当職員の鈴木和代ご一家。撮影:2015年8月25日

しかし、名取市海岸林の北半分、2016年植栽以降は、完成した盛土とその後の滞水状況が格段に悪くなりました。我々は、「ここでは、降った雨の8割は林外に排水させたい。蒸発は1割、浸透は1割程度しか期待できない」と考えました。2018年、本格的にボランティアの仕事に取り入れ、溝のサイズも大型化・多様化。剣スコップも80本以上買いました。コロナ禍前の2018・2019年で応急処置を大幅に前進させました。

溝サイズの多様化 撮影:2018年5月30日

溝サイズの多様化 撮影:2018年5月30日


住友化学&労組の皆さんで施工中 撮影:2018年6月

住友化学&労組の皆さんで施工中 撮影:2018年6月1日


⑧-2 210730

住友化学&労組の皆さんによる施工から2年後 撮影:2021年7月30日


防風垣をどけて、その下に幅1m×底幅50㎝×深70㎝のLLサイズ溝だけで年間1,100m。撮影:2018年8月25日

防風垣をどけて、その下に幅1m×底幅50㎝×深70㎝のLLサイズ溝だけで年間1,100m。撮影:2018年8月25日


多湿地3.81haの排水口その2。鹿島建設東北支店の2人を筆頭にボランティア10名・半日で完成。撮影:2021年7月16日

多湿地3.81haの排水口その2。鹿島建設東北支店の幹部2人を筆頭にボランティア10名・半日で完成。山側から撮影:2021年7月16日


施工前

排水口その2と同タイプ 施工前


排水口その2 施工後3か月たっても崩れることなく、完全に役目を果たしている。

排水口その2 施工後3か月たっても崩れることなく、3.81ha分の排水口の役目を完全に果たしている。同じものをあと3つ作ると、2021年10月23・24日の仕事とつながる。海側から撮影:2021年10月15日

来年3月、森林立地学会のオンライン講演会があり、このような改善の歩みを報告してほしいと依頼いただきました。これまで、森林の専門誌への寄稿(ex.「森林技術」2020年3月号)や、日本森林学会シンポジウムなどで現場の考えをお伝えする機会はたくさんいただいてまいりましたが、写真やデータで比較できるように整理しようと思ってます。支援者やボランティアの方にも見てもらいたいです。

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