吉田です。今回のブログは、主に海外からいまも寄付をくださる日本人・外国人の寄付サイト「Global Giving」に転用するつもりで、総括的に近況を報告します。
まずはじめに、2011年の東日本大震災以来、Global Givingを通じて、世界各地から「海岸林再生プロジェクト」にご支援いただいていることを御礼申し上げます。市民参加型の事業の進め方で、最強の海岸防災林として再生を目指す私たちのプロジェクトは、第2次10ヵ年計画(2021-2030年)として歩みを止めることなく続けております。全長5km×幅200m、総面積100ha、37万本のクロマツ海岸防災林は、極めて順調に育っています。
「地球温暖化の時代は終わり、地球沸騰の時代が来た」と国連事務総長が警鐘を鳴らし、日本では「観測史上最も暑い夏」とも報道されました。まさにそれを体感しながら、2011年の震災以来、最も過酷な現場での作業が続いています。
日本では、6月から9月末は真夏の盛りであり、「下草刈り」「つる切り」「除伐」という保育作業を徹底させる時期です。もし私たちのプロジェクトでこれを怠ると、植えたクロマツは雑草や、「葛」(Green Monster)などのつる性植物、ニセアカシアなど外来種系の雑木などに駆逐され、100haの海岸防災林として再生させることはできません。
これから冬に向かいます。冬は間伐です。植栽初年度に植えたクロマツはすでに7mを越えています。間伐は今期で3年目で、約50年かけて6回伐ると、最強の海岸防災林の完成です。そのときは樹高が20mになっていますが、震災前の海岸林と異なるのは、間伐によって得られるはずの、地中の根周りの広さと深さです。そして、枝と葉の多さ、幹の太さです。再び津波が来たとしても、クロマツならではの真価を発揮し、粘り強く、減衰効果をを発揮するはずです。森林総合研究所や名古屋大学大学院の専門家が、2017年に調査を継続しています。
毎年、林業のプロが3チーム、プロならではの仕事をお願いしています。地元に雇用を創出し続け、適正な管理をし続けるその原資は、皆様からの寄付のおかげです。これまで約11,000人の雇用を生み出しました。そして、8時間従事ボランティアによるボランティアならでは、オイスカならではの人海戦術です。これまで約12,000人が参加してくれました。コロナ禍前は年間約1,900人でしたが、2020年には年270人まで落ち込みました。ですが、昨年は最盛期の45%まで回復し、今年は半年で半数まで回復しました。コロナ禍前に復活したと言えます。
わたしたちの最大の難関は、愛される海岸林となることと、次世代への伝承です。人々は海から離れた場所に移転し、海岸林は身近な存在ではなくなり、何のためのマツ林なのか伝えることがとても難しい状況です。いまの高校生は、すでに震災の記憶がない生徒もいます。平気で大型ごみを捨てる人も少なからずいます。「絆」という言葉は、完全に過去のものになったと感じます。震災直後、地元の警察官が語った、「震災前の首つり自殺か、不審火の森」のような姿にだけはしたくありません。アフターコロナのいま、次世代へのアプローチは永久に続ける必要があります。全年代が平均的で、男女も均等、常に若い世代の人の姿もある歩み方を継続し、国内外の無数の人の手でつくられた最強の海岸防災林を目指します。