タネの重さ、いや、タネの軽さと言った方がいいかもしれません。
5月2、3日のゴールデンウイーク真っ盛りに行われたクロマツの種まきについては、
林広報室長の詳しいレポートがありますから、様子はよくわかると思います。
今さら、という気もしますが、私があらためて思い知ったのはタネの軽さです。
植物のタネは小さくて軽いのが当たり前。
でも、いったい重さはどのくらいあるのかを意識したことはありませんでした。
農家の方や林業に携わる方には常識なのでしょうが、今回初めて、クロマツのタネの重さを知りました。
レポートにあるように、まいたのは宮城県、香川県、徳島県でつくられた、
マツクイムシに強い抵抗性クロマツのタネです。
それぞれ微妙に重さと大きさは違いますが、1キログラムあたりの数はおおよそ5万から7万。
つまり、1円玉1個分にあたる1グラムで、50粒から70粒あるわけです。
残念ながら、そのタネを数粒指につまんだところで、重さを感じることはできません。
まく前にタネにベビーパウダーをまぶすのは、まいたタネが土の色にまぎれずによく見えるように、
そしてタネをさらさらにして扱いやすくするためだそうですが、
なにかの拍子に濡れてしまったタネが指のあちこちにくっついてしまってもわからないのです。
初めは四苦八苦、だんだん慣れてくるにしても、指先のわずかな触覚を頼りに
そんな小さなタネを一粒ずつコンテナの穴に落としていくのは、なかなか根気のいる作業でした。
それが10万粒。10万回繰り返す作業というのは私の日常にはないので、
少し気が遠くなるような気もしたものです。しかし、人の力というのはたいしたものだと、
これもあらためて思い知りました。ざっと20人が二日間で、しかも予定より早くし終えてしまいました。
中腰だったり、あるいは和式トイレに座るような格好をしてみたり、といろいろ試してみましたが、
やがて腰が痛くなるのは結局同じことでした。
「いててて」などと口走ると「ペンより重いものを持ったことがないんだからきついだろ」と
年上の農家の方に慰められましたが、タネはペンよりずっと軽いのに、と不思議ではありました。
このタネが10日から二週間ほどで芽を出し、2年後には30センチほどの苗になって海岸に植えられ、
さらに、何十年かのちには立派なマツ林に育っている。
そう思うと、一粒一粒のタネには0.0何グラムという“体重”だけでは計り知れない重さがあることに気づきます。
その重さを相手にしているのだから、まあ、腰が痛くなっても当たり前です。