啓発普及部の鈴木です。
少し前になりますが、環境ドキュメンタリー映画 「 デリカド 」 の試写会に、同僚に誘われて行ってきました。
さすがに何の予習もせずに行くのは失礼かと思い、プロモーションサイトを事前にチェックしました。
「フィリピンのパラワン島が舞台で、パラワン島は最後の秘境」
「穏やかな美しいリゾート地の裏側には違法伐採が横行」
「違法伐採と闘う人々がいる」
このくらいの知識を得て試写会場へ。
98分を見終えて、
この人たちは、数年以内に命を奪われるかもしれない。そんな現実に触れてしまった私は、深い不安とやり場のないモヤモヤに包まれ、まるで漆黒の世界に放り込まれたような気持ちになりました。
*** 映画概要はこちら ***
“最後の秘境”を守る環境警備隊による命懸けの闘い
フィリピンの「世界で最も美しい島」パラワン島は“最後の秘境”、“最後の生態系フロンティア”として名高く、手つかずの自然やコバルトブルーに輝く海を求めて世界中から観光客やダイバーが訪れるアジア屈指のリゾートだ。
しかし、一見のどかな熱帯の島に見えるパラワン島では、違法伐採や違法漁業が横行している。この雄大な生態系を守るため、地元の環境保護団体を束ねるパラワンNGOネットワーク(PNNI)が立ち上がった。環境警備隊である彼らの闘いは戦争に近い。違法伐採者はライフルで武装しており、命を落とすメンバーが後を絶たないのだ。人類は「6度目の大絶滅」や気候変動の危機に直面しているが、この島は開発によって急速に生物多様性が失われている最前線になっている。
~映画『デリカド』公式HPより転載~
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パラワンNGOネットワーク(PNNI)の代表の弁護士 ロバート・ボビー・チャンは
「人が死ぬような活動はよせ、と批判を受けることがある。もっともな指摘だと分かってるが、それでもやらないと。他に誰もやらないから。」と苦悩の表情を浮かべながら語っている。
命懸けで美しい故郷を守りたい、祖先から受け継いできた美しい土地を守りたいと願う人々の揺るがない意志を持つ人々がいる一方で、開発して富を築こうとしている人もいる。
政治や警察と対立しなければ解決できないのだろうか?
命懸けで闘わなければ自然を守ることができないのだろうか?
同じ“自然を守る”という目的を掲げていても、アプローチのあり方はそれぞれ。
オイスカの現場では、闘いや対立よりも、地域の人々と協働しながら進めていく手法をとっています。
PNNIのように、違法伐採や汚職と真正面から向き合う現場もあれば、私たちのように、地域と時間をかけて関係性を築きながら進める方法もあります。
1967年からオイスカはフィリピンで活動を続けています。
フィリピンの森林率は24%。活動地のルソン島のアブラ州、ヌエバビスカヤ州の周辺は一面の裸山が連なります。
もともと豊かな森林があった場所でしたが、違法伐採を含む森林伐採が続き裸山に。一度、木がなくなった山を森に戻すのには相当の覚悟と時間と労力と根気が要ります。
フィリピンでのオイスカの活動は、
地元の人たちが主体となって裸山に木を植えることを主に、
時には、子どもたちに植え方の手ほどきを受けながら、日本からの植林ツアー参加者と地元の子どもたちが木を植える。
写真に収まっているのは、キラキラとした笑顔。
オイスカの活動は平和で穏やかに感じる。
同じ環境を守る活動だけれど、かたや戦争、かたや子どもも参加する笑顔あふれる植林
オイスカの植林の行事では、知事や軍が植林セレモニーに参加することだってあります。
アプローチの違いといえばそれまで。
人はみな「豊かに暮らしたい」と願っている。
家族を養うために日銭を稼ごうと、違法と知りながら伐採、密猟を続ける。
そうしなければ生きていけないから。
違法だと知りながらもせざるを得ない葛藤・・・
開発協力に取り組むNGOができることは、
そこに住む人々が、食べていける、家族を養っていけるようにすること。
環境保護と産業を生み出すことは両立させなければならない。
そして、地域の人々から支持され、政治にも働きかけられる状況を創ることが大事だという信念をもっています。
一方で、現場によっては、腐敗や暴力と向き合わざるを得ず、厳しい選択の中で活動する団体もあります。どちらが正しい・正しくないという単純な構図では語れない複雑な現実がそこにはあるのだと思います。
子どもたちが木を植えて育てる
子どもの頃に芽生えた木を大事にしようとする気持ちは、大人になって忘れてしまうかもしれない
でも、潜在意識に植え付けられた「木がだいじ」「木といっしょに成長した思い出」は、違法伐採に手を染めなければならない状況になったとき、きっと心のブレーキとなるはず。
だから、人を育てることを大事にしています。
だからこそ、私たちが向き合うべきは、“どうすれば人が環境を守る側に立てるのか”。そのために、地域をどのようにデザインしていくか——それが私たちNGOの役割なのだと感じました。
映画を終えて、重い気持ちをひきずったままでは家に帰りたくないとカフェに立ち寄り1時間半、3人で語り合い、重い空気から少し解放されて家路についたのでした。
この映画は、「人と人をつないで世界の課題解決をする」をミッションに、映画輸入・配給・宣伝・制作事業を行なっているユナイテッドピープルの配給です。
5月31日(土)から全国順次公開(公開スケジュールはこちら)
公開初日・2日目 主人公 ロバート・“ボビー”・チャン 弁護士緊急来日トークのご案内 (5/31.6/1 11:00上映後@シアター・イメージフォーラム)