バングラデシュの活動のサポートをしている小杉辰雄です。今、現地に出張に来ています。
冬に近づくにつれ気温が下がる乾季。ダッカ近郊の川面から朝靄夕霧が発生し視界が悪くなり、道路では渋滞や事故が発生、航空機の遅延やキャンセルを引き起こす時期となりました。
現地の研修センターもまた、朝露に濡れて作物にも影響が表れ、気温の低下や日照不足などによる影響も出てきます。
バングラデシュ気象局(BMD)は今朝、ダッカの最低気温が14.5度を記録。日中の気温は24度で、明るい日差しと最小限の霧が加わり、ダッカでは寒さはそれほど感じられてないと報じています。
冬目前の2週間前、バングラデシュの片隅や路地裏では、人々や自然は新たな姿を呈しています。
ところで、新聞で興味を持って見ているコーナ-があります。
それは環境のコーナーで、空気質指数AQIです。
ダッカはAQI:241で、今朝、再び空気の質が最も悪い世界の都市のリストのトップとなりました。世界で最も汚染された都市の1つとして常にランクされ自慢出来るものではないですが、世界指標の恥は勿論、忘れてはならなりません。ちなみに第2位は、パキスタンのラホール、ベトナムのハノイ、インドのデリ-で、それぞれAQI219、194、191で2位、3位、4位を占めています。これに、ネパールのカトマンドやエジプトのカイロなどの都市名も入れ替わりで見られます。
*AQIが201から300の場合は「不良」、301から400の場合は「危険」とされ、住民に深刻な健康リスクをもたらすとされている。
また、昨年のバングラデシュは世界最悪となり、世界保健機関(WHO)のガイドラインで定められた最低基準の15倍も悪く、子どもから高齢者まですべての人を危険にさらしています。2019年の大気汚染はバングラデシュで2番目に多い死亡と障害の原因となり、同国のGDPの約3.9〜4.4%の損失をもたらしたそうです。
大気汚染は体の健康被害とともに、集中力、記憶力、学習能力の低下、子どもや青少年の発達障害のリスク増加と関連付けられています。特に、空気の質は冬に悪化し、モンスーン期には多少改善されるとされていますが、その改善不可の汚染の罪は洗いなおすことは出来ません。
また、外に出ることは1日22本のタバコを吸うのと同じことだと言われますが、微粒の汚染源はどここことなく容赦なく入り込み、逃げることもできないし、外出しないわけにもいかない。嘗て私が赴任したパキスタンのラホール、バングラデシュ後のミャンマー中央乾燥地域と、私の肺も病んで黄色が灯る危機に直面しています。
先月、コーディネーターと共に、センターからオート三輪で30分余り離れた「子供の森」計画(以下、CFP)参加校を訪問。植林された樹の葉は、ヤギなど家畜の食害にあっているのが見られました。構内に近隣の人々が集まるモスクもあり、門は壊されヤギ・牛が構内をウロウロ。食害を防ぐため、植林時や他時にも、モスクのスピーカーを通じ、地区に向け、家畜を構内に入れない様に呼び掛けを行っていたとの事でした。しかし、地域の人々の行動までには届かない様で、草を求める力に負け、力関係の上にある地域のコミティに負け、先生方もしょうがないといった諦め感が漂い、遣る瀬無い気持ちの対応で、私も力を落とした次第です。(こんなことでめげていたら、生きていけない社会ではあるが……)
学校訪問目的は、子どもたちに日本の支援者への、グリーティングカード用の絵を描いて貰うためでした。子どもたちは本当に集中し、短時間で「豊かな環境をテーマ」に丁寧に描いてくれました。どの絵にも河の民であるベンガルを象徴するような家や河や船、家の近くには屋根を覆うような色濃く緑濃い木々、通りには腰に水瓶を抱え運ぶ女性、きっとお母さんでしょう。頭に薪を載せ運ぶ2人の女の子、お手伝いする姉妹か友達が大らかに描かれています。年末年始には、支援者に届くでしょう。
帰り際、丁度、昼休みになり、絵を描いた娘さんのお父さんが、校庭で私たちを待っており、近くだからぜひ一緒に来て欲しいと頼まれました。お茶でも飲ましてくれるかとついて行きましたが20分程歩いたところの道路脇に案内されました。
CFPでは、校内だけでなく家庭でも植えるようにと、子どもたちに各自1本ずつの苗木の配布を行っていました。CFP活動を知った父親は、植林は子どもにとっても大切な教育であるとの思いから、自ら90本を更に購入しここに植えたとの事でした。他にも果物などを植えているが、ぜひ、見て欲しかったと案内説明を受けた次第でした。
学校では少し意気消沈しましたが、植林の大切さと子どもの教育への思いと、それを実行するご家族、この様な気概を持った人に会え、この社会も捨てたものでないなと少し気も晴れる次第でした。