海外事業部のグラゼンです。
私の母国フィリピンは、一年で一番暑く乾燥する季節を迎えています。40度以上の気温が続いています。
乾燥と高温で、いつ大規模な山火事が起きてもおかしくないと心配していた矢先、ヌエバ・ビスカヤ州アリタオ市で3月16日に山火事が発生しました。強風にあおられ、火の勢いが増して、1994年にプロジェクトが始まった当初に植えた約100ヘクタールが被害にあいました。毎年、この時期になると山火事が発生しますが、過去最大の被害だとヌエバビスカヤ州の植林プロジェクトマネージャーのロペスさんは言います。
毎年この時期になると植林地や近隣の山々で火事が起きるため、プロジェクトが自前で結成している消火隊が消火のノウハウを蓄積していたのですが、今回の火災は悪条件が重なり、延焼を防ぐ火のコントロールがとても難しくて大規模の焼失になってしまいました。強風で、高さ5メートルから10メートルほどの木々に火が移り、炎は消火隊が手に負えない高さまで達しました。
以前は、プロジェクトサイト内の小川から簡単に水をとることができましたが、ここ数ヵ月は雨がほとんど降っていなかったため、小川にはほとんど水がありませんでした。
そのため、消火のために近くのコミュニティからわざわざ水を運び、消火作業にあたらなければなりませんでした。
今回の火災で36時間もずっと消火作業にあたった消火隊とロペスさんの疲労は相当のものだったようです。
100ヘクタールもの焼失はとても残念なことでしたが、私は、100ヘクタールの焼失で済んだのは幸運だったのかもしれないと思っています。
まず、日本からの支援で消火隊が背中に背負う水タンク(ジェットシューター)を装備していたために、10メートルはなれば場所からでも火の勢いを抑えることができました。普通の噴霧器では、さらに火に近づかなければ消火ができず、消火隊が危険を伴います。
さらに、植林地をくまなくパトロールするために使用しているトラブル続きの四輪駆動車が、この時は奇跡的に“快調”でした。消火用の水を運んだり、作業員を火災現場から別の現場へ移送したりと、消火に多いに役立ちました。
また、アリタオ市の環境天然資源局(MENRO)と綿密な情報交換を重ね、良好なパートナーシップ関係にあることで、MENROから消火作業員が派遣されたことも消火作業に多いに貢献しました。
何より、私たちが日ごろから備えてきたことが功を奏しました。植林地内に整備している防火帯のおかげで、延焼を防ぐことができたばかりではなく、倒木や落葉、落枝がない延焼の危険が低い場所を消火隊の命綱として利用できたことが大きかったと思います。防火帯がなければ、600ヘクタールの植林地すべてが焼失していたかもしれません。
私は、30年前から植え、育ててきた森を、灼熱の太陽の下、火災の熱の中で夜を徹して36時間も命がけで消火作業にあたり、守ってくれた消火隊のみなさんに感謝しています。彼らの存在なしには、プロジェクトの継続はないと思っています。
ロペスさんは、消火隊の勇気と忍耐、そして延焼を防ぐために命を懸ける強い意志に感動と感謝を伝えたいと話します。
ロペスさんの言葉を借りれば、「消火隊は環境のヒーロー」なのです。
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