2023年9月11日

研修生の国を知り、研修センターの役割を考える旅【オイスカふれあいの翼カンボジアツアー実施レポート最終日】

  • カンボジア
  • 西日本研修センター
  • 西日本研修センターの飯川です。

    8月21日(月)~26日(土)に実施した、『オイスカふれあいの翼カンボジアツアー』最終日の様子をお伝えします。

    3日目の様子

    最終日はアンコール・トムとタ・プローム寺院、アンコール・ワットの観光を行いました。シェムリアップは12世紀ごろの首都であったそうです。アンコール・トムは縦横3kmずつの広大な土地の中央に建てられています。周辺はお濠が設けられており、すべて手作業で作られたそうです。東西南北に計5つの門があり、東側には勝利の門と死者の門の2つの門があります。戦いの勝ち負けによって使い分けていたそうです。

    アンコール・トム
    アンコール・トム南大門
    アンコール・トム
    アンコール・トム
    アンコール・トムと観光客
    欧米からの観光客も多数
    地雷被災者の演奏
    地雷被災者の演奏

    その後、タ・プローム寺院を訪れました。ここではカジュマルの仲間であるスポアン(榕樹)が絡みついている見ごたえのある遺跡です。当時の国王ジャヤヴァルマン7世の母親を弔うために12世紀末に建てられた寺院だそうです。スポアンの樹齢は200~300年とみられています。巨大な樹木に力強さを感じるとともに、現在まで無事に残っているという事実に感動を覚えました。

    タ・プローム寺院
    タ・プローム寺院内の巨大なスポアン(榕樹)
    タ・プローム寺院
    大蛇のように伸びた幹
    街路樹
    街路樹の根元は白く塗られている。夜中に酔払った運転手がぶつからないようにとのこと

    タ・プローム寺院を後にし、アンコール・ワットへと向かいました。こちらは12世紀初めに建てられたそうです。寺院を建てる際、本来は日が昇る東向きを正面として建設し、日が沈む西側に建てることはありませんが、アンコール・ワットは国王の墓地でもあるため、西向きを正面としているとのことです。そういった経緯もあり、東向きのアンコール・トムは午前中、西向きのアンコール・ワットは午後が観光に適した時間帯だそうです。広さは縦横 約1.5kmずつでアンコール・トムの1/4程度の広さとなります。

    西参道は、現在、修復中で日本の上智大学アジア人材養成研究センター主導のもと修復作業をされているとのことでした。そのほかにも他国がアンコール遺跡群の修復作業をされているそうですが、現地ガイドによると、作業が早い国ももちろんあるが質が低く、日本の場合は作業が早いわけではないがしっかりと修復されるとのことで、日本のことを誇りに感じました。

    修繕中の橋
    修繕中の橋
    アンコールワット
    アンコール・ワット

    今回のツアーは、私自身オイスカスタッフとしての初の海外で、初めてのカンボジアということもあり、大変学びになりました。

    日本は可住地面積が国土の30%しかないほど山地が多いため、広大な平地が広がるカンボジアの景色に驚かされました。一方で農業という面で考えると機械化が進んでおらず、農作業を行うのはとても苦労が必要で、盆地ということもあり雨による畑の浸水被害もあるとのことでした。鉄道や高速道路といった交通網も発展していないようで、地方で加工品を作っても輸送が大変で、なかなかハードルの高い現場であると思いました。

    また今まで研修生と関わり、彼らの母国について話を聞くことはありましたが、実際に見たことがなく経験のない情報だけを持っている状態でした。しかし彼らの母国を訪れ、現地の空気を肌身に感じて、やっと彼らの育ってきた環境の一端を理解できたような気がします。他国の現状はそれぞれで違うので、機会があればぜひ訪れてみたいです。

    そして「子供の森」計画(CFP)の活動への参加は今回が初めてでした。カンボジアでは、植樹後の管理としてOB・OGが時折現場を訪れ、管理者に聞き取りをしつつ、管理方法を伝えているということでした。私は大学院の頃に里山保全や環境教育に携わっていたこともあり、考えさせられました。また、同時に大学院の頃に関わりのあった小学校の教頭先生のお話を思い出しました。自然体験をさまざまな面から切り取り、感想文を書かせれば国語、自然現象のことを教えれば理科、遊び道具などを作れば図工など、自然体験は切り取り方次第で多くの教科に用いることができ、教員にはそういった教材を作る意識を持ってもらいたいとお話しされていました。今回の活動を通して、他国のCFP活動についても興味が湧きました。すでに行われている地域もありますが、植樹やその管理だけで終わらず、活用してより広い活動につなげたいと感じました。

    カンボジアツアーの引率を通じて、大変勉強になる4日間でした。皆さまもご存知かと思いますが、かの老子は「飢えている人がいるときに、魚を与えるか、魚の釣り方を教えるか」 という言葉を残しています。これは「人に魚を与えれば一日で食べてしまうが、釣り方を教えれば一生食べていける」という考え方です。しかし、最近、研修生には「魚の釣り方を教える」のではなく、「どうやって魚を捕まえるかを一緒に考える」ことが大事なように感じます。魚の捕まえ方は地域によっても違うし、仮に魚が捕まえられなくなっても、あきらめずに環境や時代に応じた捕まえ方を考えられる人材を育てるのが研修センターの役割だと思います。そして彼らを仲間として共にふるさとや国、ひいては地球全体のこれからを考えていく必要があると感じています。オイスカの目指す「すべての人々がさまざまな違いを乗り越えて共存し、地球上のあらゆる生命の基盤を守り育てようとする世界」には、まだまだ課題がたくさんあり、多くの仲間が必要となります。一緒に考えて、一つ一つの課題を乗り越えていけたらと思います。

     

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