本部・啓発普及部のグラゼンです。
前回のブログで、オイスカ関西研修センターの清水利春所長へのインタビューをレポートしました。今回は、フィリピンのルソン島北部のアブラ州にあるオイスカ・アブラ農林業研修センターのデルフィン所長にもインタビューを行いましたので、その内容を少し紹介します。
グラゼン:今のアブラ農林業研修センターの様子はいかがですか?
デルフィン所長:今、研修センターには、アブラ州の各地から女性4人、男性6人の10人の研修生を受け入れています。
稲作や野菜栽培、養豚や養鶏、養牛、溶接などの工業分野の研修に加えて、苗木の育て方や植え方、管理の仕方、ボランティアへの指導の仕方などの環境保全の研修、日本語研修をそれぞれ3ヵ月間おこなっています。
研修センターでは、全寮制で規則正しく規律を守って生活するため、9カ月間の研修の前後で大きく変わる研修生もいます。ある研修生のご両親は、「甘えん坊だった娘が、オイスカでの研修の後は責任感が強くなり、朝早く起きて朝食の準備をするようになった」と話し、とても感謝されました。
アブラ州の青年たちの多くは、主に農業についての新しい知識や技術を学ぶために、センターでの研修を希望しています。たくさんの若者から研修を希望する声が届くのですが、センターの定員と予算には限りがあるので、全員を受け入れることができないのがつらいところです。
市街地から離れた地域や山岳地には貧困の世帯が多くあります。彼らの生活の質を上げるために、市街地から離れた地域や山岳地からも積極的に研修生を選ぶようにしていて、今年は10人中4人がこれらの地域からの研修生です。
グラゼン:研修センターの運営で苦労していることはありますか?
デルフィン所長:研修センターでは、野菜や米などはほぼ自給自足していますが、油や調味料は買わざるを得ず、近年、物価が高騰し、食費の支出が大きくなっています。電気代も上がり、運営は厳しいです。
野菜栽培研修で採れた野菜や養鶏の研修で採れた卵、養豚などの家畜を販売した収入だけではセンター全体の運営を賄いきれなかったので、私の実家の田んぼを研修センターに貸して、収穫したお米を売ったお金を運営費に充てています。
コロナ禍があけて、少しずつ観光客がアブラ州に戻ってきたので、研修センターのゲストハウスを宿泊施設として貸し出して、運営費の足しにしています。
いずれにしても厳しいことには変わりありません。
デルフィン所長と話をすると、私はいつも「この人はなんてすごい人なんだろう。どうしてここまで人のために尽くすことができるのだろう?私には到底、真似することができないなあ」と、感心します。
アブラ研修センターでの研修を修了したのは400人以上になります。400人のうちの半数近くは、技能実習生として来日して技術を向上させています。
「研修生のOBやOGの全員を集めてコミュニティをつくれば、全員がカタコトの日本語を話す小さなコミュニティになる」と、冗談交じりに話してくれましたが、400人の若者に、将来の選択肢を広げて、将来への希望を与えてきたことは、地域の発展につながるエネルギーになっているはずです。
以前、デルフィンさんに親のような立場で若者たちを指導するという大きな責任を引き受けた理由と、彼らを日本で研修させる決心をした理由を聞いたことがあります。
その中で、デルフィンさんは、オイスカの日本の研修センターで研修を終えた卒業生として、日本でいかに多くのことを学んだかを語ってくれました。農業についての知識や技術、経験は、日本で研修を受けてさらに深まったと言います。
自身の貴重な経験から、アブラ州の青年が研修生として日本で学べば、自分の知識や技術にはない新しいものを身につけることができるかもしれない、それをフィリピンに持ち帰って、地域で活かすことで、それぞれの地域社会を助けてくれるかもしれない、という思いで研修生を日本へ送り出しているのだといいます。
さらに、デルフィンさんは、数の力があると言いました。
「研修センターで研修した若者、日本で研修した若者の数が多ければ多いほど、地域での力は大きくなり、より多くの困窮者を助けることができる可能性があるのです」と、力を込めていうのがとても印象的でした。
デルフィンさんに興味をもった方、もっと知りたくなった方は、ぜひこちらのトークイベントにご参加ください! 私がモデレーターとなり、デルフィンさん、関西研修センターの清水所長と日本語でトークセッションをします。詳しくはコチラ↓
私の最近のブログはコチラ↓です。こちらもあわせてご覧ください
2023年10月16日 フィリピン・アブラ農林業研修センター デルフィン所長の”恩師”、清水所長に聞きました
2023年9月26日 フィリピン・アブラ州をテーマにしたトークイベント 私も頑張ります!