2023年8月25日

「堂々と家族を養うことができるようになりました」(N連 インドネシア チプタグラール)

  • インドネシア
  • 本部スタッフ
  • 海外事業部の森田です。

    2020年からの3年間実施してきた

    「伝統的生活様式を守って生活する共同体の生活基盤の整備と生活環境の改善、生計向上の支援事業」

    が8月17日に終了しました。

    このプロジェクトは、外務省の日本NGO連携無償資金協力を得て、インドネシアの西ジャワ州スカブミ県チソロック郡シルナレスミ村の伝統的な集落(カセプハン)の一つ、チプタグラールで実施しました。チプタグラールは、山岳地で周辺からも独立した暮らしを営んでいる稲作主体の地域です。オイスカは、この地域で多様な生計向上策で住民の生活水準の引き上げを図りました。

    事業終了にあたり、その効果を見極め、今後の成長をどのように描いていけるかを確認するため、8月8日~16日まで現地に出張しました。

    村は収穫祭を控えて出店が賑わいを見せていました
    収穫祭前の村の様子 男性が刈り取った稲穂を担いで集会所に行くところ

    プロジェクト実施の効果を確かめるため、チプタグラールの集落を歩き、スタッフを通じて地域の方と話をしてみました。話をしたうちの一人の男性から、驚くべき事実が発覚しました。

    「村の掟で、神聖な米を村の外へ持ち出しや売買が禁止されていることや決められた仕事を代々受け継ぐ(インドのカーストに似た制度)しきたりがあり、かつては現金収入を得る術がなく、生活の苦しさから近隣の金鉱山で違法に工夫として働かざるを得ず、いつ捕まるかとビクビクしながら出稼ぎをしていた」

    と言うのです。

    栽培の中心が稲作であるにもかかわらず、お米を販売できず、かといって、稲作以外の葉物野菜などの栽培の経験はなく、あまねく外部から購入するしかありませんでした。そのため、現金収入を得る手段が限られ、生きていくためにやむにやまれず、違法だと知りながら金鉱山で働かざるを得なかったのだと思います。

    稲作以外の農業で現金収入を得ることができるよう、プロジェクトのプログラムとしてキャベツやトウガラシなどの有機栽培の指導やヤギなどの家畜飼育の指導を実施しました。 

    トウガラシ栽培
    ヤギ飼育

    続けて、彼は、

    「オイスカが野菜の栽培やヤギの飼育の方法を教えてくれたおかげで、後ろめたい思いをすることなく、堂々と家族を養うことができるようになりました」

    と、とても嬉しそうに話してくれました。

    事業を始める前はそのような状況があることは知りませんでしたので、とても驚きましたが、こうして話をしてくれたという事実が、オイスカを信用し、信頼してくれている証拠だと、嬉しく思うとともに、この事業が地域に与えた影響を感じることができました。

    これはオイスカだけで為しえたことではなく、地域の理解と村の代表であるアバ(精神的指導者)の交代による近代化など環境の変化があったことは言うまでもありません。

    地域の方々はもともと勤勉でしたし、そこに日本の皆さまの力を少しだけお借りしてお膳立てをすることで、自分たちではどうすることもできなかったことが、解決の糸口が見つかり、自分たちでどうにかすることができたという前例になったと思います。

    良い噂はすぐに広がるようで、プロジェクトで村人の生活が良くなってきたという話を聞きつけた隣のバンテン州の地域の住民が見学にきて、いち早くトウガラシなどの有機栽培を自分たちの村の山の中腹で始めています。

    いちNGOのオイスカができることはほんの小さなことですが、オイスカが実施したことがパイロットプロジェクトとして解決への風穴をあけることになり、土と緑とともに安心して豊かに暮らしていける人々が増えることを願っています。

    プロジェクトの完了式典に集まった村の人々

    チプタグラールでのプロジェクトの説明動画はこちら

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