啓発普及部のグラゼンです。
私の母国、フィリピンでは、本格的な夏が到来しています。
フィリピンは一年をとおして気温と湿度が高い熱帯モンスーン型気候で、年間平均気温は26~27℃。気候は、一般的に、雨期(6~10月)と涼しい乾期(11月~2月)、暑い乾期(3月~5月)の3つにわかれています。
今は、一年でいちばん暑く、乾燥しています。
ビーチでのんびりと日光浴を楽しんでいる人がいる一方で、ルソン島北部のヌエバ・ビスカヤ州アリタオ町では、連日の山火事の消火作業にヘトヘトになっている人もいます。
日本では、火事の時には消防車が一目さんに駆けつけて、消火をするのが当たり前ですが、消防車の数が少ないフィリピンでは、田舎では特に、まず住民が消火にあたります。ましてや山火事となると、消防車は山に登れないため、消防車に頼ることはできません。
2月ごろから山火事が起きるようになり、3月にはあちらこちらで毎日のように発生しています。ヌエバ・ビスカヤ州アリタオ町のオイスカが30年間取り組んでいるプロジェクトの植林地の近くでも、連日の猛暑と乾燥で、連日、山火事があります。プロジェクトマネージャーのマリオ・ロペスさんとオイスカが組織している消防隊のみなさんは、危険と隣り合わせの消火作業に、精神的にも肉体的にも疲れ切っているとのことです。
3月27日、アリタオ町内の国道沿いで、突如、火事が起きました。
外気温が32~36℃、雨が降らないので、とても乾燥しています。火の近くでは50℃を超える暑さの中、急な斜面での消化作業に、オイスカ消防隊の人たちは、死と隣り合わせです。それでも、30年間、育て、守り続けてきた森への延焼を防ぐために必死で消火にあたりました。出火原因はまだ調査中とのことですが、国道沿いでの突然の火災ということから、おそらく、運転手が投げ捨てたタバコが原因だと思われます。
「山での消火作業は本当に大変。猛暑で、しかも急な斜面で、火の粉が飛んでくる中での消火は、本当に消耗する。2日も続くともう疲れ果てる。もう日常のことになっているよ。でも放っておくわけにもいかない」と、ロペスさんの疲労の色が濃いのを感じます。
アリタオ町内で、他にも何度も火事が発生しましたが、幸い、オイスカの植林プロジェクト地に被害はありません。オイスカ消防隊が、プロジェクト地以外の火事にも駆けつけ、延焼を防ぐ努力をしていること、幅10メートルの防火帯の草刈りを日頃からおこなっていることが被害を食い止めている要因だと思います。
ロペスさんによると、アリタオ町の環境天然資源局(MENRO)の担当者から、火事が発生するといち早く消火に向かうオイスカ消防隊の機敏さや行動への感謝の言葉とともに、金銭的な補助を約束すると連絡があったということです。消火活動をするときには、消火用水を運ぶ四輪駆動車のガソリンや消防隊員の食事、手当などの費用がかかりますので、MENROからの申し出はとてもありがたく、いいニュースでした。
フィリピン大気地球物理天文局(PAGASA)の気象予報によると、2023年の後半にエルニーニョ現象が起こる可能性は現段階で50〜70%だという。発生した場合は、2024年まで続くかもしれないと述べています。
エルニーニョ現象が起こると、台風や嵐の発生が東にずれるため、全体的にフィリピンは乾燥が続きます。ヌエバ・ビスカヤ州を含むルソン島北部は、乾期が長引き、干ばつが発生する可能性があります。2023年は、森を管理するにはとても難しい年になるだろうと心配しています。それでも、恐れているばかりでは何もはじまりません。ロペスさんはじめ、プロジェクト関係者やオイスカ消防隊のみなさんは、何があってもプロジェクトの植林地を守る決意です。
30年間のプロジェクトでできあがった森は、近隣やふもとの住民、川の下流の住民の水源林になっています。もしも、この森が火災でなくなってしまうことがあれば、何万人もの人が水不足で生活が苦しくなります。何万人もの生活を守るためにも、火事との戦いを続けていきます。