2022年12月22日

SDGs貢献貢献に向けて、研修生OB・OGと現場で結果を出すために

  • ECO-DRR
  • 本部スタッフ
  • 東京本部GSMで広報・資金獲得を担当している吉田です。

    宮城県名取市で進む「海岸林再生プロジェクト」も担当しています。2011年のプロジェクトの開始からこれまで12年、名取には約60ヵ国400名の海外の方たちが視察しました。外務省やJICAなどの仲介で、各国政府の林業担当や防災担当が来たこともありますし、メディア関係者も多く訪問されました。
    このうち、オイスカで自己資金を捻出して、研修を兼ねて作業もしてくれた外国人スタッフ(つまり研修生OB・OG)や日本で研修中の研修生、現場関係者は100人ほどに過ぎません。

    日本には「森林など生態系を活用した防災・減災」(Eco-DRR:Ecosystem baced Disaster Risk Reduction)の知恵が身近にあることはあまり知られていません。名取に来てくれた国内外の皆さんの時間と関心によっては、プロジェクトを通してEco-DRRの説明もしてきました。この考えが各国に広がり、実践できるようになることで、オイスカが海外の現場でより大きな貢献ができるものと信じ、私自身、日本各地の好事例を勉強して歩いています。

    2019年に、オイスカの5ヵ国の緑化プロジェクトの現場責任者を招聘し、本部スタッフと共にEco-DRR研修を実施したことがあります。名取の現場だけではなく、足尾銅山でも学びを深めました。研修を通じ、明らかにギアを入れ直したベテランもいます。手応えを感じた研修でした。

    2019年の「Eco-DRR研修」足尾銅山近くの民宿で
    (右の黄色の服がデルフィン所長)
    「Eco-DRR研修」名取事務所で

    世界の災害を見渡すと、アジアはその集中地帯で、洪水と嵐が被害の多くを占めます。私はコロナ禍前、タイ北部チェンライ県のはげ山、南部ラノーン県やパンガー県のマングローブ、ミャンマー中央部乾燥地帯と、海外の現場指折りの災害頻発地帯のフィリピンルソン島北部の山岳部や沿岸を歩き、この先10年で何をすべきか考えました。(インドネシアに駐在されていた中垣豊元代表とアダさんが現場にいるうちにと目論んでいたインドネシアは、コロナ禍で間に合わず・・・)

    今回は、できたらいいな!ではなく、必ず!と思っていることをしたためます。

    やはり何といっても後輩たちの育成です。視野を広げ、深める機会をつくることです。国内外の拠点・研修センターの職員と共に、Eco-DRRや生計向上も含まれる「森林の多面的機能」の理解を深めたい!日本にいる外国人職員にはとくに。海外から来る研修生への日常の指導にもこういう視点を活かしてほしいです。オイスカ全体の緑化活動に対するボリュームに対して、職員や研修生が各国の活動や、森づくりの「基本」を学ぶ機会は減っていると感じています。素人仕事でない「基本」を理解しながら、「子供の森」計画をはじめとする緑化部門を強化したいです。まずできることとして、緑化に関わる本部職員が内外の各拠点に出張したタイミングはもっと使えます。一緒に考えるようなカタチを取れたら、お互いの学びになるかと。

    国内研修センター若手中堅職員6名他が名取研修(2021年)
    ウズベキスタン研修生ティムール君は、名取の地元ボランティアから乾燥地でできるサツマイモ栽培の指導を受けた(2022年)

    野外研修の素材はどこにでもあります。国内出張に行くと、どうしてもEco-DRRの視点で行く先々を見てしまいます。ホームグラウンドの宮城県や東京近郊での研修ならお安い御用です。手伝ってくれる人もいます。海岸防災林だけでなく、屋敷林や集落防風林も内陸防風林も水害防備林もあります。震災の時に火災延焼を止めた公園の森林もあります。「杜の都」仙台の街路樹設計は、70年前の空襲で焼け野原になった「仙台沙漠」からの復興計画が基になっています。

    いま宮城以外で注目しているのは沖縄の防風林造林です。ここの考え方は熱帯に限らず世界中どの国でも応用できます。「子供の森」計画の発展版にもできると思っています。海外の現場でコアになるような職員の研修をここでできたら。職員の研修は、民間助成金などの外部からの資金調達の難しさがあります。ですがその日は近い将来に来るとイメージして、来年早々からギアを上げて準備します。

    現在、冬募金を展開中で、その中の発信の一つとして「思い出深いOB・OGについてブログを書いてほしい」と言われていました。敢えて一人と言えば、名取にも2回研修に来てくれたデルフィン・テソロさん(63歳・西日本研修センターOB)、フィリピン・北ルソンのオイスカアブラ農林業研修センター所長です。1991年からアブラ州・南イロコス州で「子供の森」計画だけでも100校以上展開してきました。この先輩による受益者は両州の全市民と言っても過言ではないほどの活躍ぶりです。
    私にとっても、この先輩との出会いがオイスカを今日まで続ける動機となった人の一人です。駆け出しのころ随分一緒に仕事しましたが、この15年は何も手伝えませんでした。ですが、やっと出番が来ました。来年から少しづつ恩返しの機会がありそうです。風害、洪水、山火事、乾燥害、土砂崩れ、地震・・・国内指折りの貧しさに加えて災害の百貨店、台風銀座のアブラ州。沖縄の防風林技術を真っ先に活かせる現場だと考えています。じっくり強く思っているとそのうちチャンスは来ますよね。その時までの準備が肝心です。中途半端な気持ちではチャンスをとらえられませんから。

    名取事務所佐々木統括から乾燥地造林に有効な「吸水ポリマー」の使用方法を教わるデルフィン所長(右/2018年)これ以降、アブラのはげ山造林で実践活用中

    やはり、コツコツが一番。自分一人では何もできませんから、外国人を含めたスタッフ全員と同じ方向を向いて歩んでいくための研修を続けていきたいと常に思っています。そう簡単に行かないこともわかっていますが、6000人近い、訪日研修生OB・OGというオイスカ独自のネットワークの優位性を活かそうと、震災以降そしてコロナ前から一人一人に丁寧に実行してきました。これからも国籍問わず、場所問わず、将来のために、仲間とともに世界が抱える課題解決のために、名取で蓄積した経験を活かしながら、一人ひとりが向上できるように取り組んでいきます。「名取発世界へ」という気持ちです。

    みなさんにご協力いただいた「冬募金」は、スタッフのキャパシティービルディングにも直接的・間接的に活かすことができます。コア人材を育てなければ、何事も成せません。目標800万円まで頑張っています。気合の入ったご支援を、どうぞよろしくお願いします。

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