啓発普及部のグラゼンです。
コロナ禍のために故郷のフィリピンに帰ることができずにいましたが、ようやく3年ぶりに実家に帰ってきています。
このブログはフィリピンで書いています。
実家でのんびりしたいところですが、フィリピンで実施しているプロジェクトを自分の目で確認して、現場の空気感も味わいたいと思い、1ヵ月の滞在中に、ヌエバビスカヤ州、イロイロ州、西ネグロス州、そしてアブラ州のプロジェクトを訪問します。
今回は、ネグロス島での滞在で感じたことを綴っていきます。
養蚕農家さんを訪問
7月20日から23日まで、ネグロス島のオイスカ・バゴ研修センターを訪れました。
飢餓の島といわれたネグロス島に産業を根付かせ、住み続けられる島にするため、オイスカは、バゴ研修センターを中心に25年以上前から養蚕業の振興に取り組んできました。
バゴ研修センターの養蚕指導員たちは、農家を定期的に訪問し、繭の品質向上に取り組んでいます。幸い、今回の訪問中に、養蚕農家にお蚕さんの幼虫を届けるバゴ研修センターの養蚕技術者に同行して、農家を訪問することができました。
朝7時半にバゴ研修センターを出発し、車で約2時間、さらに、舗装されていない細い道を20分ほど歩くと、その日最初に訪問する農家に到着しました。
2019年から養蚕を始めたペドロ・ベニガイさん(58歳)のお宅です。ご家族が作ってくれたチキンスープとココナッツジュースの昼食をいただきながら、家の中でも蚕を飼っていることを知りました。「養蚕農家さんは、お蚕さんと一緒に寝起きしているから、お蚕さんの微妙な変化にも気づくことができる」と、養蚕技術者のジェンジさんは冗談交じりに言っていました。
新しく建てた、蚕の飼育に使う建物(蚕室)を見てくれと、あたたかく迎え入れてくれたペドロさんの笑顔を、訪問から数日経過し、このブログを書いている今でも、鮮明に覚えています。
この日は、4軒の養蚕農家さんを訪ね、話を聞くことができました。
2003年から繭の生産に取り組んでいる農民のリーダーのペドロ・ビラセンシアさんは、養蚕の収益を貯めて、ソーラーパネルを購入して、電気を使えるようにしたのだそうです。
21年間、農家への養蚕指導を続けてきたバゴ研修センタースタッフのラネロさんは、
「農民に指導をすることができるリーダーを育てることができたことを誇りに思う。特に、移動が制限されていたパンデミックの最中や、大雨で道路が寸断され、村へ養蚕指導に行くことができない時には、農家への指導もできるペドロ・ビラセンシアさんの存在はとても大きかった」と話してくれました。
養蚕農家さんの家を後にする時、落花生やナスなど、自宅で採れた野菜を持たせてくれました。
「農家さんがオイスカに感謝をしているからこそ、こうしてお野菜などをくださるのです」と、バゴ研修センタースタッフのレッチーさんが言います。
養蚕農家さんの多くは、市街地から遠く離れた地域に住んでおり、政府の支援から取り残され、電気もとおっていないような地域で生活をしています。
ネグロス島のバゴ研修センターと養蚕農家さんへの今回の訪問で、繭の生産と品質を維持するために、養蚕技術者の役割がいかに重要であるかがわかりました。
「農家さんとオイスカスタッフの間に長年培われてきた信頼や尊敬、良好な関係は、お金では買えないもの」と、養蚕技術者歴21年になるアルネルさんは言います。そして、「オイスカの理念に共感し、その理念の実現のために自分も加わることができることは、とても光栄なことだ」とも語ります。
アルネルさんの言葉は私の胸にすっと入ってきます。私もまったく同感です。
オイスカスタッフと村人との信頼関係は、オイスカの宝物でもあり財産です。
今回のネグロス島への訪問でも、私と同じオイスカの研修センターの研修生OB/OGの仲間が現場でどのように働いているのかを自分の目で見て、私自身が勇気と元気をもらい、もっと頑張ろう!もっと社会の役に立ちたい!という気持ちになりました。
ブログを読んでいただきありがとうございました。