2022年7月5日

私たちが本当のグラスルーツです~マングローブ植林プロジェクト現場の視察を通じて~④

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  • ③の続き

    インドネシア駐在員の大垣です。

    パティ県、ジェパラに次いで、デュマック県の視察も行いましたが、この訪問が今回の出張の中で一番衝撃的でした。

    モーターボートに乗って、海上に蘇った33.4haのマングローブ林を眺めていたところ、ラフマットさんから「大垣さん、ここは1980年まで村がありました」との説明がありました。曰く、海岸侵食と海面上昇の影響で67家族が他の地域へと避難したとのことです。同地域はインドネシア国内でも最も海岸侵食の被害が深刻な場所として知られていますが、現場に足を運び、家屋の残骸や水没した電柱などを実際に目の当たりにし、そのリアリティを感じました。

    辺り一面に蘇った33ha以上のマングローブ林
    海流の影響で沖合に堆積した土壌でもマングローブを植えています。
    写真はマングローブの樹種について説明しているラフマットさん

    引き続きマングローブの森を進んでいくと、沈んだ家屋が散見され、そのうちの一家屋には、未だに一家族が住み続けていました。家にお邪魔すると天井近くまで床が嵩上げされており、その隙間からは海面が見えます。一家にお話を伺うと、村が水没寸前の際には行政が資金提供し、ほとんどの村人が移住した中、そのご家族だけは家に留まる決心をされたそうです。現在は海上のマングローブに囲まれて生活しており、胎生種子(一種のマングローブの種)を採集して植林時に提供したり、海岸でマングローブを植えるなど、精力的に森を守る活動を続けられています。今では他の住民が移住した地域でも海岸侵食による洪水は常となっており、移住が完全な解決策とは言い切れません。そのような中、マングローブを守りながら故郷で生活し続けるご家族の意思に最大限の敬意を表したいです。

    水没した家
    移住せず家に住み続ける決断をされたご家族へのインタビュー

    ⑤に続く…

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