海岸林担当の鈴木です。
オイスカの年間行事の中で最も大きな行事「国際協力の日のつどい」が本日開催されました。
10月6日は日本政府が定めた「国際協力の日」であり、オイスカの創立記念日でもあります。この日にちなんで毎年10月に「国際協力の日のつどい」を開催しています。
今年のつどいのテーマは
「Eco-DRR(生態系を活用した防災・減災)を軸としたオイスカの新たな展開」
このスタッフブログでも、海岸林のブログでも吉田が盛んに発信しているEco-DRRに関する話が中心です。Eco-DRRと言われても世間一般には「???」。ピンとこない方も多いだろうと思うのですが、予想以上に多く、235人に参加していただきました。
開会前に発表するインドネシア、中国内モンゴル、フィリピンの3ヵ国、海岸林再生プロジェクトの動画を流しましたが、みなさん食い入るように見てくれていました。今日のプレゼンテーションへの期待の高さを感じます。
東京大学名誉教授の太田猛彦先生から、今日のディスカッションの趣旨説明がありました。
「生態系を使って防災をするということがEco-DRR。これまでのオイスカの森づくりは、その地域で一生懸命森づくりに励み、役立っていることで終結していたが、実はそれが世界につながっている。さらにはSDGs達成にもつながっている」という、これまでオイスカが世界中で50年間森づくりを続けてきて欠けていた視点を指摘いただきました。
この後、オイスカの現場で長年にわたり地域の森づくりに励んできた3人から発表がありました。
インドネシアで26年間森づくりに携わり、現在は海面上昇や高波から人々の暮らしを守るマングローブの植林事業の責任者のラフマットさん
「海面上昇によって村のほぼすべての人が移住した村があります。残ったのは1家族だけです。周辺にマングローブを植え、森ができたことで、魚が増え漁業で生活できるようになりました。海面の上昇はすぐには防ぐことはできませんが、マングローブのおかげで波が穏やかになりました。1家族の夢は村の人がもう一度戻ってきてくれること」
中国内モンゴルで黄砂を食い止めるために砂漠を緑化しようと奮闘してきた冨樫さん
「最初は住民に黄砂を抑えるために植林をしよう!と話して回りました。でもなかなか木を植えることを理解してもらえませんでした。春に植林したら時期が悪くてほぼ全滅でした。本当に失敗ばかりでした。長年かけてやっと軌道にのりましたが、住民の生計向上と一緒でなければ、単に木を植えようと言っても見向きもされません」
フィリピン北部のヌエバビスカヤで水源林の再生を目指して山火事や台風、干害と戦ってきたロペスさん
「32年前、養蜂の研修のために3ヵ月間日本で勉強しました。北海道から九州まで色々な場所に行きましたが、どこに行っても山には木があり緑でとてもきれいでした。フィリピンへ帰国すると、はげ山ばかり。そこでこの山を日本のような緑の山にしようと思ったのが植林を始めるきっかけでした」
「ひとたび山火事が起きると、消火隊が水を背負って消火に行きます。非常に危険です。危険すぎるので保険の対象にはなりません。ですから、隊員の安全をいつも心配しています」
3人の発表からは、現場の苦労がひしひしと伝わってきました。
最後に太田先生の講評がありました。
「みんなそれぞれの場所でプロジェクトをがんばっている。オイスカはこれまでは、『農業技術者の育成、環境教育、森づくり』と謳ってきたが、『防災』という面からもこれまでの活動をくくることができる。Eco-DRRという切り口でのPRのスタート。オイスカの活動は、その地域の生活と一体で生活にもプラスであり、さらに防災という局面もあり、どこの活動地域でも共通していること。国連の開発目標SDGsは世界共通のことば。SDGsの達成目標の数字を示すことで、何を目的とした活動であるか、世界中で共通の理解が深まる。SDGsや最近注目されているESG投資を散りばめながらオイスカ活動のPRをしていくことで、さらにオイスカへの注目度が高まるのではないだろうか」
SDGsの風はオイスカにとってはかなりのプラス要因であることは間違いありません。
これを活用していく術を磨いていかなければと改めて思いました。
オイスカの現場各々で、SDGsの目標の中の何を目標として活動しているのかを話し合わなければなりません。
今、まさにオイスカ全体の広報力が問われているような気がします。