広報室の林です。
オイスカが取り組んでいるマングローブ植林の現場が、
とある番組で取り上げられている動画があります。
その現場は、インドネシア。
以前オイスカでもこの活動を紹介するための
動画を作成しています。
今回私が見たのは、CNA(シンガポールの政府系メディア企業「メディアコープ」が
運営する、主にアジア地域の情報を扱うニュースチャンネル)の番組です。
長編でもあり、全編英語でもあるので、仕事中にちょっとチェック!
という訳にもいかず、お昼休みにじっくり見ることにしました。
(現在コロナの感染対策で、昼食は各自、自席で黙食が基本です)
登場する家族は、私が5年前に現地で
取材をさせてもらった一家。
以下、写真は当時私が撮影したものです。
ここは、海岸の浸食により、村が水没しかけているベドノ村。
住民たちは他の場所に移り住んでいく中、
何度も家のかさ上げをしながら、ここに住み続けている唯一の家族です。
番組では、子どもたちを船に乗せて学校に送り、魚を市場で売り、
食材を買って……というお母さんの日々の生活が描かれていました。
それは私から見れば、「奮闘」しているのに、
映像ではその様子が静かに穏やかに描かれていて、それはきっと
彼女にとっては日々の当たり前を切り取っただけに過ぎないものだからなのだろうと感じました。
市場で手にするお金は「家族が食べていくには足りるけど、
子どもの教育のためには不十分」な額だそう。
私が家におじゃました時にも、お母さんが私を裏に連れて行って
「あれで毎日子供を学校に送っていく」と船を見せてくれました。
家から外に伸びた細い橋の先にある、布で囲われたところはトイレです。
家から一歩出ればそこは360度水に囲まれた環境。
満潮時には、家の中にまで水が入ってくる状態だと聞きましたが、
当時は、日々の生活が具体的にはイメージできないままでした。
今回の番組を通して、その一部を垣間見ることができました。
お嬢さんは、夜、水が入ってくる部屋で寝るから寒いと口にし、
卒業後は就職して、両親のために家を建てたいと話していました。
お母さんは日々、たいへんな状況なのに、
「私が守らなければ誰がこの村を守るの」と、この村に住み続ける意思が強く、
胸まで水につかって、マングローブを植え続けていました。
当時も家の前にはお母さんが植えた小さなマングローブが育っていました。
日に焼け、やせたお母さんは、「年老いた母」に見えるけど
子どもたちの年齢から考えると私よりもずっと若いのかもしれません。
彼女が家族のために、村のためにと動き回っている姿、
そして、その姿を見て育った娘が「両親のために家を建てたい」
と話す姿に涙がこぼれました。
5年前、数十分滞在させてもらっただけでは分からなかった
彼らの生活、苦労、家族それぞれの思いが見えてきました。
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当時、現場のコーディネーターとして案内をしてくれた
アリさんも番組の中に登場していました。
今も、がんばっている! と嬉しく思いました。
無表情だと怖い顔(ごめんなさい……)だけど、
笑うとかわいい、ちょっとお調子者のアリさんは人気者!!
一面が海になってしまった村だけど、昔は畑で野菜を育てていたし
子どもたちは自転車に乗って遊んでいたのだそう。
ここから少し離れたところで、自転車を飛ばしまくっている
元気な少年たちの写真を撮影しました。
この子たちが大人になった時、「昔は自転車にも乗れたんだよ」と
地面が見えなくなったふるさとで、この光景を思い浮かべるような
そんな悲しい未来にしてはいけないと強く感じました。
オイスカが取り組んでいるマングローブの植林。
それは、海の環境を守り、人のふるさとを守る大事な取り組み。
こうした動画や番組で、多くの人に関心を持ってもらえたらと思います。