本部・広報室の林です。
トリの話の続きです。
中部日本研修センターのAが11月最終週を“にわとりウィーク”と
銘打って、さまざまな情報を発信してくれましたので、ご紹介します。
長くなりますが、ぼちぼち読んでください!
先ずはかわいくなくなった姿から。
ひよこの時はかわいかったのに……。
_______________________
■11月27日
飼養羽数について。
みなさん、いま日本でどのくらいの鶏が飼われているかご存知でしょうか。
採卵鶏(卵を産ませるための鶏)だけで、1億7千万羽を超えます。
人口より多い!
肉用鶏(肉をとるための鶏)も1億3千万羽超で、これも人口より多い!
出荷羽数では年間6億6千万羽を超えるそうです。
つまり・・・
私達日本人は、おおまかに計算すると毎日約1.5個の卵を食べ、
1年で約6羽のニワトリを食べている、ということになります。
すごい量・・・。
「ニワトリ」なんて呼び捨てじゃなんか申し訳ない。
「おニワトリ様」くらい呼ぶべきでしょうか。
語呂が悪いな・・。
■11月28日
今日も引き続き、おニワトリ様のお話を一つ。
中部センターでもヒヨコからの飼育を始めて、1年半が過ぎました。
ニワトリが卵を産み始めるのは、バラつきはありますが孵化してから大体120~150日くらい。
そして最初は、ウズラより一回り大きいくらいの小さい卵を産みます。この卵がすごく濃厚で、
昔はこの卵を「初卵」などと呼び、妊婦さんや入院されてる方への贈り物として喜ばれたそうです。
ご年配の方々には懐かしいお話ではないでしょうか。
でもそんな「初卵」、どうして見かけなくなったのでしょうか。
これはヒヨコの育て方に理由があります。
ニワトリには多くの病気の心配があり、途中で死なせることなく
成鶏まで育てるためには、多種のワクチン、抗生物質が使用されます。
ワクチンは問題無いのですが、抗生物質は産み初めの卵に残留するそうで、
これが理由で「初卵」は販売できなくなったそうです。
以前、家族経営のある養鶏場で、その「初卵」を処分するのがもったいなくて
自家消費していたそうなのですが、家族がみんな病気になって、
病院に行っても薬(抗生物質)が効かない、といったこともあったとか。
食べ物の安全は、自分でしっかりと見極めないといけませんね。
ちなみに中部センターでは、ワクチンは使用するものの抗生物質はゼロ。
岡村先生直伝のヨモギ、ドクダミ粉末をエサに混ぜ込むことで、鶏を健康に育てております。
そういうわけで、濃厚な「初卵」も販売でき、お客様に喜ばれております。
次にうちの「初卵」が出始めるのは3月中旬の見込み。
■11月29日
卵について。
卵白、卵黄、というくらいですから、「黄身」の部分は黄色いのが当たり前、ではあるのですが、ではこの黄色が薄い、白っぽいと栄養価が低いのか、というとそうとも限りません。
卵黄の色と栄養価は無関係です。
黄身の黄色が濃くなるのは黄色いエサを食べているから。一般的には、エサの半分以上を占めるトウモロコシの色によって、黄身の黄色が濃くなります。そして、黄色が濃いほど栄養タップリ!な気がして消費者が黄身の黄色が濃い卵を求めるので、生産者も黄色くするのに必死!パプリカを食べさせたり、大変なんです。
また、最近はエサに飼料米を使うところも増えているのですが、
飼料米というものをご存知でしょうか。
人が食べるにはちょっと味が良くないのですが、収穫量が多く、
水田の有効活用という意味もあり、栽培面積が増えてきているお米です。
この米を玄米で家畜に与えると、トウモロコシと同等の栄養価があり、
トウモロコシの代替品として評価されています。
……が! 米です。玄米とはいえ、中は白いです。
牛や豚への影響はわかりませんが、ニワトリがこれを食べると
卵の黄身は白っぽくなります。そうすると、実際の栄養価に違いはなくても、
お客さんから敬遠されて・・。
それでも、飼料米を使っているのが、四国センターの元職員、横江夫妻。
豊田の山奥で、飼料米を使って名古屋コーチンを育てています。
以下、ちょっと覗いてみて下さい。
■11月30日
にわとりウィーク第4日。
今日は話が長いです。暇な方(失礼?)だけお読み下さい。
みなさま、赤い卵と白い卵、良い卵はどちらだと思われますか。
良い卵って? 高級? 栄養価が高い?
だいたい赤い卵が高いから、赤い卵が良い卵?
良い卵って言っても、基準が何なのか、難しいですよね。
一つはっきり言えるのは、卵の色(殻の色)による栄養価の差は全くない、ということです。
一般的には、羽が赤い鶏の卵は殻も赤く、羽が白い鶏の卵は殻も白いです。つまり、色が違うのはただそういう種類だから、というだけ。
そうなると、ここで疑問が湧いてきます。
赤でも白でも同じ。でも赤い卵のほうが値段が高い。
じゃあなんでスーパーには白い卵のほうが多いの? どうせならみんな赤い卵を産む赤い鶏を飼って、高く卵を売ればいいのに。
実は僕も最近になって、真実を知りました。
白い鶏は、赤い鶏に比べてエサの量が少なくて済むのだそうです。
エサが少しで済む → 支出が少ない → 販売価格が安い
なんて単純。というわけで、卵の良し悪しは殻の色ではわからない、ということなんです。
では、卵の品質の違いはどこにあるのでしょうか。
やはり一番はエサでしょうか。
みなさんは卵の味、わかりますか?
一般的には、年配の方のほうが卵の味がわかると思います。
どうしてか。それは、以前の方が“本物の卵”が多かったからです。
“本物の卵”と書きましたが、自然の卵と言っても良いかもしれません。
鶏という生き物の生命活動の中で、鶏の命のサイクルの中で産み出される卵。
昔はそれが卵というものでした。
今、ほとんどの卵はそういう卵ではありません。
スーパーの卵の大半は、経済性優先、つまりいくら儲けが多いかを基準に生産されています。
限られた面積で何羽飼うことができるか、いかにエサ代を抑えるか、
それらは企業努力には違いありませんが、卵の質は後回しになっているのではないでしょうか。
エサとなる配合飼料は、生産性を高めるために最高の配合が計算し尽されており、生産性を
追及するには、
これだけを与えれば間違いありません。しかし、そのエサを効率よく使用するために
防腐剤が添加されています。また、鶏は本来、緑餌、つまり草や野菜が大好きなのですが、
生産性という観点からは緑餌は有効とは言えず、与えられていません。
エサに防腐剤が入っていても、卵の味に影響が出ることは無いと思います。
ただ、本当に安全性が保たれているのか、もちろん安全ですとは言われるわけですが、
巨大な産業界、すべてを無邪気に信用しても良いのか、心配です。
緑餌については、卵の味に大きく影響していると思われます。
うちに限らず、どこのオイスカに行っても卵がおいしいのは、緑餌の効果に違いありません。
卵の風味が感じられ、この風味が、「もう他の卵は食べられん!」と言っていただける一番の要因かと思います。
そして、味に影響があるのか定かではありませんが、やはりオイスカがこだわるのは平飼い。
ニワトリが自由に歩き、羽ばたくことができる環境で飼育するということです。日本で販売される卵のほとんどは、ケージ飼い、つまりカゴの中で飼育されるニワトリの卵です。カゴの中で常に同じ方を向いて、前に流れるベルトでエサが与えられ、水を飲み、糞を出し、卵を産む。せまいカゴでは振り向くことすらできず、生後4,5カ月の産み始めから1年間卵を産み続け、産卵率の低下を理由に屠殺される一生。これも徹底して生産性を追求した企業努力の賜物です。
運動しないニワトリは抵抗力もつかず、薬で健康を保たれています。
そういう生育環境の違いを考えると、味の違いとはまた別の、
「質の違い」があると思うのですが、これは生産者の自己満足でしょうか。
■12月1日
今日から12月。いよいよ寒さも厳しくなって参りました。
私の中の食欲の秋はいまだ過ぎることなく、歯止めをかけてくれていたマラソンも終わり、
おいしいオイスカ農産物をモリモリ食する毎日です。
そしてそれはニワトリも同じ。夏の暑さでエサを食べられなかったニワトリ達も、
今はすっかり食欲が回復。エサをあげに行くと、早く早くと右往左往。
そんな反応をされるとエサのやり甲斐も違うというものです。
夏場、暑さでエサを食べられない時期は、産卵数が減り、それぞれの卵のサイズも小さくなります。摂取する養分が減るのですから、当たり前と言えば当たり前ですね。
その頃は1パックに入る卵(10個)の重さが約610g。それが今のような時期になると、約670gにまで増えます。
単純に計算すると、1パック当たり、卵1個分くらい重さの違いがあることになります。
スーパーで買うとサイズごとにパック詰めされていますからこんな違いはありませんが、
うちのように大小ごちゃ混ぜで販売すると、こういうことが起こります。
もしサイズごとに分けて販売するなら、夏場はSサイズやSSサイズばかりになりますが、
大規模な養鶏場では鶏舎は締め切ってエアコン完備ですから、エサもしっかりと食べることができ、
小さい卵ばかりになる心配はありません。エアコンの電気代などを考えても、そのほうが
儲けが大きいということなんでしょうね。
LLは高く、SS安く。エサ以外にも、ニワトリの年齢でもサイズが変わり、お姉様になるにつれて、
産む卵が大きくなっていくことがわかっています。
大きい卵のほうが値段が高いわけですが、みなさんはどのサイズがお好みでしょうか。
「卵が大きくなっても、それは白身が多くなるだけで、黄身のサイズはどれでも同じ」という話を
聞いたことはありますか。これは間違いとも言えないのですが、実際は少し異なります。
黄身の増加率に比べて、白身の増加率が高い。
つまり、卵が大きいほうが黄身も大きいが、白身ほどは増えるわけではない、ということのようです。
ですからサイズによる価格差を考えると、用途に合わせたサイズ選択がお得!と言えます。
茶碗蒸しやメレンゲなど白身メインの用途なら大きいサイズ、
目玉焼きなど黄身メインで使いたいなら小さいサイズ。
これが賢い消費者の買い物術!なのだそうです。
そしてもっと賢いみなさんは、やっぱりオイスカ卵ですよね~。
■12月5日
にわとりウィークにご協賛いただき(?)ありがとうございます。
にわとりウィーク最終日は、ニワトリから人類の未来へと飛躍してみます。
以前、岡村先生がセンターにおられた頃に、長野県からお客様が来られました。
帰る時には中部センターの有精卵を孵化させてみたいと言われ、いくつかを買って
持ち帰られました。後で結果をお聞きしたところ、孵化率は悪くなかったが、
見るからに弱々しいヒヨコばかりで、1週間もしないうちに全部死んだ、ということ
でした。
当時飼っていたのは「ボリスブラウン」というニワトリで、いわゆるF1のニワトリで
す。ですから、うちでできた有精卵から生まれるヒヨコはF2となり、羽の色などもバラバ
ラになるのは当然なのですが、そのことが、孵化後にすぐに死んでしまったことの原因な
のかというと、それは定かではありません。
ただ、私が思い出したのは「自殺する種子」という本のタイトルです。この「自殺す
る」が意味するのは簡単に言うと、買った種で作物を育ててその作物から種をとっても発芽しない、とい
うことです。
種苗会社が自社の開発した種子を保護するのは当然のように思えますが、この技術に
よって農家は常に種を買い続けなければならず、農家の経営には大きな影響があります。
そして何より、次世代が生きられないような作物を食べることによる人体への影響、
というのはどれだけ解明されているのでしょうか。
解明されているとして、それは安全が保障されているのでしょうか。
日本で問題となっている少子化、不妊は、食べ物とは無関係なのでしょうか。
食べ物に次世代を作る材料が含まれていなければ、自分が次世代を作る材料も無い、
次世代が生まれないのは当然なのではないか、という意見もあります。
そんなに単純では無いかもしれませんが、ニワトリに与えるエサで卵の色が変わるよ
うに、食べ物が私達自身の体や子供に及ぼす影響は、当然考えるべきことのように思えま
す。
そんなことも考え、中部センターのニワトリは「ボリスブラウン」から純国産の「もみ
じ」に完全に切り替えました。エサも「遺伝子組み換えのトウモロコシ」を使用しない配
合飼料に切り替わってもう1年以上がたちます。こだわりのエサ屋さんでも、大豆だけは遺伝
子組み換えを選別するのが困難だということで、排除できませんが、できるだけ作物本来の姿、自然な食品の割合を高めることで対抗する、このくらいしか、今のところは手が打てません。
主要農産物種子法 廃止。
こんなニュースはご存知でしょうか。
今年2月に閣議決定され、4月に可決、成立。来年4月1日に廃止されます。
ほとんどの日本人が気づいておらず、また記事を見かけても気にも留めなかったと思
います。
騒いでいるのは農家ばかり。でも影響は全国民に及ぶでしょう。
「民間の品種開発意欲を阻害している」というのが廃止される理由のようですが、こ
の廃止によって、日本の種が外国企業の脅威にさらされる危険など、多くの心配があります。
今、私達が食べている物は未来につながるのか。
未来の子供達からの預かりもの、きっちりと返すことができるでしょうか。
Cultivate the Future・・
ニワトリを飼っていると、こんなことまで考えさせてくれるんです。
あれこれ書いていたら、1週間なんてあっという間だったなぁ。
いや~、ニワトリって、ほんっとに良いものですね。