広報室倉本です。
今年から日本NGO連携無償資金協力により、フィリピンで新たに「ネグロスシルク事業を基盤とする養蚕普及全国展開支援事業」が開始され、同国でも養蚕普及への関心がさらに高まりつつある昨今。今後皆さまに養蚕についてしっかりとお伝えする機会が来るかもしれない!と、未だマングローブに関心を寄せつつ、最近少し養蚕についても調べるようになりました。
しかし、文章や図で見てもなかなかイメージが掴めない……
ということもあり、22日、長年「ネグロス養蚕普及プロジェクト」にご協力いただき、フィリピンから研修生を受け入れて下さっている、芦澤養蚕さんへの訪問に同行してきました。
(他スタッフによる訪問ブログでもご紹介しています)
訪問の目的の一つは、研修生の研修状況の確認。
現在、芦澤さんのもとで日々学んでいるのは、オイスカの研修生OBのレイモンドさんと、今回が初めての訪日研修となるロバートさんです。「とてもよくやっているよ」と芦澤さんの評価の高いこの二人は、とても寡黙な印象。はじめに芦澤さんからお話を伺っている際、慣れた手つきでお茶を配膳し、芦澤さんからご厚意で出して下さったスモモ(山梨県はスモモの国内最大の生産地だそうで、とても美味しかったです)を次々と頬張る姿に、リラックスした様子が見て取れ、とても和やかな環境で学ぶことができているんだなあと感じました。
そして、多くの研修生を受け入れていただいているだけでなく、年に数回現地で指導もされ、オイスカの養蚕プロジェクトに深く関わってくださっている芦澤さん。担当者との会話も、難しい単語が飛び交います。
中でも「こいしまる」という言葉が気になりつつも、その後場所を移して養蚕の現場を見学させていただけることに。
※以下、虫の写真が出てきます
こちらは前日に卵から孵ったばかりだという1齢目の蚕。爪の先程もないくらい小さいながらも、人工飼料を食べてとても元気。
続いて3齢の蚕。だいぶ大きくなりました。こちらは桑の葉を食べています。みんな元気にご飯を食べていますが、ところどころで頭を上にし、動きを止めている蚕も。これは、お腹がいっぱいになって眠っている状態とのこと。
そして、5齢を終えて、繭になった蚕(この状態を上蔟<じょうぞく>といいます)。この繭ができている小部屋がたくさんの四角は、回転するようになっていて、名前も回転蔟(まぶし)というそうです。これは、蚕は上へ上へと行く習性があるそうで、一方に偏らないように適度に回すとのこと。確かにこの蔟のある建物の天井には、蔟の小部屋から離れてどんどん上へと旅した蚕が繭をつくっていました。
最後に、~5齢までの蚕を育てるエリア。今は蚕はいませんでしたが、桑の葉のエサやりがしやすいように、電動で次々に奥のかごが手前に出てくるようになっていました。
そしてこの見学中、またも「こいしまる」という言葉と、加えて「きんしゅうしょうわ」という言葉が聞かれました。よく伺うと、これは蚕の種類とのこと。「小石丸」は日本古来の在来種の品種で、繭が丸が二つくっついたような、ヒョウタンのような形であるのが特徴。また「錦秋鐘和」は、日本の品種と中国の品種のハイブリット。ちなみに、フィリピンでの養蚕プロジェクトでは、この「錦秋鐘和」の種類の卵を用いて行っていたそうです。調べてみれば、蚕の品種は本当に多種多様で、地域や品種によって、繭の色も形も大きく異なっていました。
思えば、シルクロードをはじめ、生糸の輸出入、富岡製糸場など歴史の教科書にも、養蚕や製糸に関する用語が多く登場していたような。
日本のみならず、歴史的に世界でも馴染み深いシルク産業を、今、フィリピンで新しい取り組みとして全国で盛り立てようとする動きは、本当にすごいことなのではないかと改めて感じました。
日本に来ている研修生たちは皆そうですが、養蚕を学ぶ同国の研修生は、こうしてこれからの歴史をつくっていく主役になっていくんだなあ…と思いました。
そしてこの日の訪問で、わたしは気付いてしまいました。お蚕さんって面白い……!奥深い蚕の世界に足を踏み入れてしまったようです。
※蚕齢(さんれい)……卵から孵ったものを第一齢とし、以降脱皮するごとに第二齢、三齢…となる