広報室倉本です。
メルマガや月刊OISCA5月号の新着情報でもご紹介していますが、4月にオイスカの渡辺利夫会長が新刊『台湾を築いた明治の日本人』を上梓されました。
『台湾を築いた明治の日本人』
渡辺利夫著
産経新聞出版/1700円(+税)
(産経新聞出版 書籍紹介ページ)
日清戦争後、明治28年下関条約の締結により、日本の統治下に置かれた台湾。領有に反対する住民たちとの「もうひとつの日清戦争」を経て、明治31年、第四代総督の児玉源太郎が登場、同地は大きな転換期を迎えます。
本書では、この児玉源太郎や、その元で総督府民生長官として辣腕を振るった後藤新平のみならず、台湾の地に適した米の品種改良・開発に尽くした「台湾農業の父」磯永吉や、新たな農地として嘉南平原に着目し、水利灌漑施設の導入、「東洋一のダム」である烏山頭ダムの設置を進めた八田與一などの指導者のあり方を通じ、「明治日本人の精神史」を追究しています。
私も機会をいただき拝読しましたが、中でも『第二章 蓬莱米が起こした「緑の革命」』が印象的でした。
この章では、フィリピン・ネグロスからの帰還兵である杉山龍丸さんが、ひょんなことからインド人青年と出会い、インド人の若者の日本での技術習得支援、サルボダヤ・サンメラン大会(ガンジー翁の弟子たちの大会)の出席など、同国と縁を深め、半砂漠状態にあったパンジャブ州を緑へと変えるべく行動を重ねる過程が書かれています。
インドの地を緑へ変えたその発想と行動力は、1960年代に活躍したオイスカ開発団員と重なるところが大きく、また緑の広がりとともに、磯氏をはじめとする技術者により台湾で開発された「蓬莱米」の技術を移植するなど、多数の国を巻き込んでの国際協力の実現も感じ入るところがありました。
私は当時の出来事に関して明るくないのですが、前知識がなくとも、「台湾を築いたリーダーたちの思想、行動の中に明治日本の指導者の原像を探る」だけでなく、時代背景や台湾の歴史、日本の台湾統治における欧米諸国の評価、現在の日韓、日湾関係への理解にも役立ったように感じます。
文体はとても分かりやすく、且つしっかり学べる一冊です。
ご関心の方はぜひ。