本数調整伐までやってこそ及第点
本数調整伐遅れの海岸林は、まったく珍しくありません。
慣習がないことも、予算がないことも大きな要因です。
しかし今や、「本数調整伐は当然実施すべき」というのが潮流だと考えています。
伐り焦ってもいけない。しかし伐り時を逃して遅れると、あとは悪循環が待っている。
一方、「今こそ、または、今こそ伐り時」という現場情報を探し当てること、
訪ねることは、我々の限られた時間では限界があるのが、正直なところです。
しかし、それでも見る目を訓練しようとコツコツ探してきました。
副次的に、植えて数年で松くい虫被害に会った場所にも出くわしました。
本数調整伐は歴史的蓄積がない技術。
試験は元より、事業規模の実践事例は極めて稀。
宮城県では前例もなく、今後の基本方針も検討途上です。
伐ったら伐ったで、その膨大な材ををどう処分するのか。
我々だけで出来ない大仕事が将来待っています。
それでも我々は、色々な人の協力を得ながら、やってのけなければならない立場。
名取ではいつ頃、伐ることになるのか、薄っすらしか見えません。しかし案外早いはず。
本数調整伐まで辿り着いて初めて、このプロジェクトに及第点を出すつもりです。
同じ手掛けるなら、最強の海岸防災林を作るのが我々のミッション。
全国にも地元にも知己は増え、アドバンテージはありますが、
関係者一同、一層研鑽に努めなければなりません。
石川県のなが~い海岸林
7月末の休日、福井出張のため、仙台をIBEX機で出て小松空港へ。
着陸前、長ーい加賀海岸全体を俯瞰。
海岸林は存在感は保っているが、林帯幅がやや狭く見えた。
かつての海岸林は、工場や高速道に代わった場所もある。
海岸浸食は上から見ても明らか。浜と生活圏の距離は十分とは言えない。
空港からは、寄り道をひたすら繰り返しながら北上。
木製ではない防風柵すら、朽ちて破られる冬の突風。
防風林・砂防林としてクロマツ純林を前方に構える意義は高い。
大雑把に言って、海側最前列は県有林、内陸側は共有・市有林と見えた。
松くい虫の大きな被害を受けた爪痕が残っている。
海岸線の距離・海岸林面積に比べ、植付は小規模ながらも堅実に進められ、
植付後の活着率は高い。石川ならでは?の間伐材保湿用パットを見ました。
据え付け作業も簡易で、コストも高いはずはなく、海砂上の造林には極めて有効かと。
九十九里や遠州灘と同様、全長100㎞以上に匹敵する日本有数の長距離海岸林。
宮城南部の倍以上の距離。気が遠くなる。全体を目配せ、管理するのは容易ではない。
以前、ブログを読んだ石川県庁の方から、松の意義を記すための看板について
問い合わせをいただいた。住民・市民とはどんな関係ができているのだろう。
地元理解がほとんどない浅野さんと私の限られた眼で、
案内人なしの付焼刃的視察、いわばドライブでは誤解する可能性もあり、
かえって見ない方がイイのではと思うこともある。
それでも折角の機会。見ずにはいられなかった。
9月のボランティア作業予告
8月25・26日、小雨は降るし、気まぐれで日が出て湿度が高いなか、
60余名のボランティアが奮闘して下さいました。
最近、微妙に地元率が増えた感。嬉しい。
地元紙「河北新報」に、高田松原の草との闘いの現状が報道されました。
https://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201808/20180826_33009.html
場所は違えども、同じ目的。シンパシーを強く感じます。
我々の現場には、2社の林業プロチームのほか、400名以上のボランティアが、
70ha・35万本のマツを守るため、復興のために来訪予定。
慣れた人も多いけど、初めての方が半数。
(もちろん名取市海岸林再生の会のプロチームも、10万本の育苗で頑張っています)
9月20日前後が、下草刈り完了の大目標。
上半期順調であったことと、今年の名取は雑草にも厳しいほどの少雨だったことから、
例年よりも多少気楽。あまりの草に笑ってしまうのが例年のお盆休み明け。
そうは言っても、やはり我々の目の色が変わる9月です。
9月の作業予告とすれば、これまでブログで何度も紹介し、お察しの通り
1.ツルマメの抜き取り
正確に言えば、この時期は根の張りが旺盛になっているので、
抜き取りというより、草刈り鎌で土ごと根ごと刈り取る。
また、状況・場所次第では、他の草も含めた「つぼ刈り」も。
(マツの一定周囲、必要な範囲限定で草刈り。×全面刈り)
2.溝切り
多湿改善のための、排水溝づくり。(冬でも続けたいぐらい)
詳しくは、過去のブログをご参照ください。
プロ、ボランティア、全員が安全に乗り切れるよう、精一杯頑張ります。
海岸浸食 ~石川県羽咋市千里浜~
少し遅くなりましたが・・・
7月28日、「学校の森」全国子どもサミットで福井に向かう前に
この機会を活かして10年ぶりの加賀海岸を浅野さんと見学。
仙台空港からIBEX機で小松空港へ。機窓から俯瞰。
日本全国の沿岸は、海岸浸食の時代となって久しい。
1年で1m波打ち際が後退しているというのが大雑把な日本の姿。
加賀海岸はその分かりやすい一例。
千里浜には全国唯一、海を車で走れる砂浜がある。
海岸林を仕事で担うことになるなど思っていなかった10年前、
家族でここをドライブをした。その写真は自宅の洗面所に今も貼ってある。
悠々と運転出来た砂浜が、いまは気を使いながら車とすれ違う。
かつての砂丘は、いまや波浪で削られ、小さな崖になっている。
将来、ドライブは禁止され、海岸林が波に削られる時代も来るかもしれない。
名取の海岸線は閖上漁港の突堤の影響で大きな後退を見せていないし、
被災地全体の居住地区は海から遠くに移転して安全を確保しているが、
実は岩沼市以南は、復旧された防潮堤の裾近くまで波が迫る浸食の影響を受けている。
太田猛彦先生の著書「森林飽和」を思い出す。海と山はつながっている。
海岸浸食の原因は、その地その地の複数の要素も絡み、対策は一筋縄ではいかない。
10年前の砂浜とあまりに違う姿にショックだった。
大都会の海岸林 ~千葉稲毛海岸~
7月の休日、一度行きたいと思っていた千葉市稲毛海岸にフラッと。気楽に。
海水浴場、ヨットハーバーがあり、ウインドサーフィンのメッカ。
いい公園。いい憩いの場です。初めて来た海辺を楽しみましたが、
やっぱりオタクはオタク・・・
モナコ公国に続いて造られ、日本では初、総延長4.3㎞の3つの人工海浜。
初めて知りました。その是非に関する意見は今もいろいろです。
地元首長の発表では、アメリカ西海岸のサンタモニカ、サンフランシスコのような
商業施設と一体化した海辺の利活用をイメージしているようです。
「海辺とまちが調和するアーバンビーチ」
「都市の海辺で過ごす新しいライフスタイルの提案」
気楽と言っても、松林に関して少しは調べたのですが、資料が少ない。
という事は、ここは海岸防災林ではなく公園緑地かな?
行って驚いたことが2つ。
海岸浸食されて、人工浜の海水浴場は一つを残して閉鎖になったようです。
ですが、残る一つの海水浴場も風前の灯。最前線のマツは生きていくのは難しいでしょう。
松林と浜の近さに驚きました。憩いの場がなくならないよう祈るばかり。
海辺のマツの枝打ち・・・初めて見ました。なんで?
「道路から海が見えない」という理由だそうです。
湘南海岸防災林と同様、ここの松林は、公園内人工浜の砂が、春先の強い南風によって
飛砂とならぬよう、食い止めてきたはずですが、砂がない今は用済みなのか。
たとえ保安林ではなくても、人知れず防風林・防災林の役目をしていたことは、
残念ながら、各種の発表でも顧みられていない。公園緑地と防災林は扱われ方が大きく違う。
しかし、それにしても人工〇〇というのは難しい。
人間の思うようにはならない。
8月25日・26日のボランティア報告
こんにちは。損保ジャパン環境財団インターン生・岩手大学3年の大和田です。
8月25日は41人、26日は17人がボランティアに参加してくださいました!
25日は午後からツルマメとりと溝切りの体験でした。
ツルマメは多くないものの生い茂った雑草に隠れたマツがたくさん。
マツに日が当たるように背の高い雑草を鎌で刈っていきました。
おやつには地元の方が持ってきてくださったスイカをいただきました!
甘くてとても美味しかったです!ごちそうさまでした。
おやつの後は溝切り体験です。
全員でスコップを持って溝を途中まで掘っていきました。
非常に暑い中でしたが、水分補給をしながら熱中症者も出ず、無事に終了しました!
26日の午前中はいちばん北側エリアのツルマメとり、
午後はエリアを変えてツルマメとりと昨日の溝切りの続きを行いました。
25日に引き続き参加してくださっている方もたくさんいらっしゃいました!
人数は少なかったのですが、予定よりもかなり作業が進みました!
私は午前中に別行動で、海岸にあるゴミの調査をしていました。
海岸にはゴミが非常に多く、海から100m以上離れた防波堤付近には洗剤の容器などの
津波で流れて来たと思われる小さめの家庭ゴミが多数落ちていました。
某テレビ番組でよく見る、中のものが腐っているビンも多かったです。(さすがににおいは嗅いでないです)
海に近づくとタイヤや棚、船の部品が多数。大きなゴミがいくつもありました。
海岸にもゴミがたくさんありましたが、海岸への入り口付近にもバーベキューで
出たゴミと思われるものが散乱していました。
ゴミは海岸や道端に捨てないようにしましょう。
ボランティアに参加の際には、ゴミは各自でお持ち帰りください。
次回のボランティアは9月1日です。ぜひ参加してください!
初心者でも読みやすい!オススメ本のご紹介!!
こんにちは。国際協力ボランティアの中川です。
現在、全国各地で天候が荒れていますが、みなさん大丈夫でしょうか。
先日のブログで、読者のみなさんに「一緒に海岸林について勉強をしませんか?」と投げかけたものの、どのようにしたらいいのだろうか~と悩んでおりました。そこで、まず今日は海岸林について分かりやすく学べる本を一冊、ご紹介したいと思います!!
こちらです!
近田文弘著の「海岸林が消える?!」(大日本図書株式会社出版、発行2000年)です!
目次は以下の通りです。1、海岸林ことはじめ
2、海岸林をたずねねて
3、海岸林をつくった人びと
4、消える海岸の松林
5、人びとあゆむ海岸林
6、海岸林の役割
7、海岸林の未来
なぜこの本が読みやすいかと言うと、、字が大きいからです!!
なーんて、、嘘です笑(確かに小学生の教科書くらいに字は大きめです)。
まず、写真がたくさん載っているので、イメージしやすいです。また、日本の様々な場所が事例として取り上げられているところも特徴です。北海道から沖縄県まで載っています。もちろん、先日訪れた九十九里浜や宮城県も出てきます。みなさん、自分の住む地域が載っているか、要チェックですよ笑!ちなみに、私の出身地、埼玉県も海岸林ではなく、松並木の事例として少し取り上げられていました。その松並木は私の実家からほど近いところにあり、小さい頃は家族で散歩に出かけていた場所だったので、懐かしかったです。
この本を一冊読めば、海岸林の概要を学べると思います。海岸林初心者の私も数時間で読破できました。また、海岸林について知っている方も新たな発見があるかも?!ちなみに吉田さんはもう何回も読み返しているそうです。また、名取市のボランティアにこれから参加予定の方は、この本を読んで臨めば、より多くの実りがあるかも!今は、簡単にインターネットでクリックひとつで本が買えちゃうんだから便利な世の中ですよね~笑
最後に、今後のボランティアに参加してくださる方々、天候や体調にはお気をつけて。無理はしないでくださいね。それでは。
はじめまして。国際協力ボランティアの中川です。
私は、オイスカスタッフブログには何度か登場しているのですが、海岸林再生プロジェクト活動ブログには初めての投稿になります。今年の8月から倉本さんに代わり海岸林再生プロジェクトについて学んでいます。これから、何度か名取市の現場にも行かせていただく予定ですので、よろしくお願いします。
さて、私は8月20日月曜日に、清藤先生と吉田さんと千葉県北部の海岸林の視察に行ってきました!名取市の現場には、6月にタイとフィリピンの子供たちと一緒に行ったことはあったのですが、他の現場に行ったのは初めてでした。千葉県は、宮城県名取市と比較的地理的条件も似ており、クロマツの海岸林の取り組みが進んでいるのです。そこで千葉県北部事務所、千葉県総合研究センターの方々にご協力して頂き、海岸林の視察を通して、間伐のことを中心に情報交換を行いました。
海岸林、林業に関して初心者な私は、1週間の予習をして臨みました!しかし、話の内容は難しかった。。。でも、カメラ係としてたくさん写真を撮ったので、ぜひご覧ください笑!!
千葉県は、名取市の海岸林と似ているところも異なるところもあり、大きく広がる海岸林には驚きました。平成19年に植林されたものは4.5mほどにまで生長していて迫力があり、またマツだけではなく色々な植物も一緒に植えてあったのが印象的でした。また、お話の中で、「海岸防災林は県や場所によって全く異なるやり方を行っていて、海岸防災林は人々に重要視されておらず、理解してもらうのが難しい」という言葉が心に残りました。私は、海なし県の埼玉出身ということもあるかもしれませんが、オイスカに関わる前まで海岸林という言葉さえ聞いたこともありませんでした。
海岸林ってなに?何のためにやっているの?と思いながら、今さら聞けないよ~と思っているみなさん!また、海岸林についてなんとなく知っているよ~というみなさん!ぜひ、私ともう1度一緒に勉強していきませんか?
最後に千葉県北部事務所、千葉県総合研究センターの方々、ご協力ありがとうございました。オイスカにとっても、私にとっても、貴重な機会になりました。
読者のみなさん!新参者の私ですが、これからよろしくお願いします。名取市の現場で皆さんにお会いできるのを楽しみにしています!まだ暑い日は続いていますので、体調にはお気を付けくださいね♪
広報室の林です。お休みの日ですから、
プロジェクトとはちょっと外れた話題をお許しください。
4日のボランティアの日、夜から海外出張が入っていたため、
午後の作業は失礼しました。いつもは現場に向かう途中で昼食を買うのですが、
その日は、新幹線の中でお昼ご飯を食べようと思い、準備していませんでした。
すると、ある団体さんの参加予定者に欠席が出ており、
注文していたお弁当にあまりが出ている様子。
ありがたいことに、譲っていただけることに!
(Aさん、ありがとうございました! 朝買わなくてよかった~!!)
皆さんが午後の作業を開始している頃、私は新幹線に乗車。
いつもおいしそうなお弁当だなぁと見ていた
「東北まるごと弁当」
乗客はまばら。
発車前に撮影しておこう。
箱から出すとこんな6角形が。
蓋を開けると
「元気です東北!」
おかしいかもしれませんがちょっとじ~んときてしまった。
毎年全国でさまざまな災害が起こり、7年も前の震災のことを
忘れてしまっている人も多いかもしれませんが、
震災直後は「頑張れ!東北」とみんながエールを送っていました。
そのエールと支援に応える心づくしのお弁当なんだなぁと思ったのです。
海の幸、山の幸、季節のもの……。
東北6県のおいしいものがぎっしり詰まっていました。
そろそろ出発の時間。
暑い中、ひたすらツルマメの抜き取りをしてくださっている
ボランティアの皆さん、すみません!
ビール、お先にいただいちゃいますね……。
栄養たっぷり。つまみにもぴったり。
ビールで英気を養い、昼寝もして
夜からの出張に向けてしっかり充電できました!
じっくりゆっくり楽しめる「東北まるごと弁当」。
皆さんもぜひ!
広報室の林です。
暑い日が続いています。
国内からも海外からもゲリラ豪雨や災害規模の大雨、
それによる被害の状況などが伝えられている中、
今年の現場は雨が少なく、ブログでも少雨がたびたび話題になっています。
清藤先生ブログ→「クロマツは雨無しに耐えられるか?」
吉田ブログ→「少雨と広葉樹のいま」
先日のボランティアの日も雨がないどころか晴天。
太陽の光が降り注ぐ中での作業となりました。
ツルマメも水不足でだいぶ弱っていましたし
クロマツの周りのシロツメクサ、クローバーは
こんなふうに枯れているところも多く見られました。
そんな中でもクロマツは青々と、さわればチクチクかたい
葉をこんなに茂らせて元気に生きていました。
やっぱりクロマツってすごい。
乾燥が好きなんだなぁ。
昨年の多雨はつらかっただろうなぁ。
でも、ツルマメの抜き取りは、
ちょっと土が湿っていた方がやりやすいんですけどね。