植栽現場では、枯れてしまったマツだけではなく、傷ついたマツにも多く出会います。
これはオイスカの植栽現場ではなく、仙台市内の植栽現場で見たもの。
170㎝ほどに成長した幹の一部が、添え木の竹(の節? そこから出ている枝を切ったその根元の部分?)によって表皮が削り取られていました。
クロマツが風で倒れないようにと添え木をしているのでしょうけれど、風で揺られるたびにこの節の部分が幹をえぐることになってしまっているようです。人間だったら血が出てきて、すぐに消毒したり、絆創膏を貼ったりして手当てをすることができますが、マツはこんなに皮がえぐられても自分ではどうすることもできません。
かわいそうだなぁと心の底から思いました。うちのプロジェクトではこんなことにならないようにしようと思いました。
こちらも仙台市内の現場で見たクロマツ。
この写真では分かりにくいかもしれませんが、枝が不自然に下に折れ曲がっているのです。これは折れ曲がっているというより、いろいろな方向に伸びていた枝の何本かが折れてなくなってしまい、下向きに伸びていた枝が残ったのではないかと推測されました。
どこかが折れてもちゃんと残った枝が頑張ってくれているのですね。
そしてもう一つはオイスカの植栽現場でみつけたもの。
分かりますか?
こちらは枝がぽきっと折れて垂れ下がっていました。でも、もしかしたら、この傷口は右上の写真のようにちゃんとふさがって、この垂れ下がった枝は不自然な方向に曲がって伸びたかのように、このまま育っていくのかも!
このマツが生えていたのは、ちょうど静砂垣が途切れている場所でした。↓
やはり風の影響は大きいのですね。
大事なクロマツたちが枯れることなく、ケガをすることなく元気に成長していくためには
いろいろな配慮が必要だと感じましたが、同時に、私が思っている以上にマツは強いのだとも思わされました。
クロマツも、人間もケガのないプロジェクトを目指します!
千代の松とネグロスの繭
仙台で「千代の松」という銘のお菓子を見つけました。
伊達政宗が詠んだ歌にちなんだものでしょう。
“入りそめて国ゆたかなるみぎりとや
千代とかぎらじ せんだいのまつ”
ちょうどフィリピンからスタッフが一時帰国していたのでお抹茶でいただくことに。
そのスタッフは、ネグロス島にあるバゴ研修センターの渡辺重美所長。
約40年間フィリピンで活動を続けている大先輩です。
ネグロス島はサトウキビ栽培がさかんで“砂糖の島”といわれるほど。
その島が“飢餓の島”と呼ばれるようになったのは、1980年代に
砂糖の国際価格が暴落してからのこと。
この島の農民たちが何とか自立して、貧困から脱却する道を歩めないか。
――そこからオイスカの養蚕普及プロジェクトが始まりました。
農民たちに養蚕指導をするのは、かつて日本の養蚕農家に泊まり込んで
その高度な技術を学び、国に帰ったフィリピンの青年たち。
彼らは時に農家に泊まり込んで、指導をしています。
今では第三国に指導員として招聘されるところまでに、彼らの技術は磨かれました。
プロジェクトでは繭の生産、製糸、機織りまでできるようになりました。
貧困の削減により「子どもを学校に通わせられるようになった」といった声もきかれます。
また、蚕を育てるのに欠かせない桑を植えることで土砂崩れを防ぐ効果も期待できます。
一家の大黒柱が年間を通して、街に出稼ぎに行くことなく自宅で家族とすごせる
ようになったこともプロジェクトの大きな成果と言えるかもしれません。
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「海岸林再生プロジェクト」を担当する吉田とはまったくタイプの違う渡辺所長。
穏やかな笑顔とおっとりとした口調でお話をしながら、菓子切りで切った
お菓子を口に運び「やっぱりいいもんですね。ほっとします」と。
茶碗も大切にそっと手のひらに乗せ、お茶を味わう渡辺所長の
その目の前でお菓子を手でつかみ、口の中にポイとねじ込む吉田。
ビールを飲むかのように片手で茶碗を持ち上げぐいぐいぐい「ぷは~~~うめぇ」。
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渡辺所長が「今年、大阪マラソン走りますから」と。
毎日ジョギングをし、トレーニングを積んでいるのだそう。フィリピン国内の各種レースにも
参加していて、3月には初マラソンにもチャレンジするそうです~~!!
可能であればフィリピンから数名ランナーを連れてきたいとも。心強いかぎりです。
今年はランナー募集目標100人。
渡辺所長が頑張るなら私も!という方、ぜひチャレンジしてください。
昨日は都内で名取市復興報告会が行われました。
経済同友会との共催ということで、普段オイスカ主催では使えないような立派なホテルが会場となっておりました。
おかげさまで席が足らなくなるほどの大盛況。
今回の講師は名取市の佐々木市長。名取市で開催した報告会や視察ツアーなどにはお越しいただいたことがありますが、東京までお越しいただいての講演は初めてのことでした。
私が見ている被災地は名取市ばかりで、ほかの地域については年に1~2回視察をする程度なのですが、「復興」はどこでも少しずつではありますが進んでいるように感じます。もちろん地域差もありますし、そのスピードにも差はあります。
スピードが上がらないとしたら、それはそこに住む人たちの考え方が千差万別で、
どの意見も聞きながらみんなが納得できるように話し合いを重ね道筋を
作っていくことに時間がかかるからだと思っていました。
でも今回の名取市長の講演会では、復興にかかわるさまざまな制度の複雑さといった
別の要因も大きいのだということがとてもよく理解できました。
「生業の復興なしに復興はない」とおっしゃっていたのも印象的でした。
海岸林の再生が、生業の復興につながり、名取市全体の復興につながるものとなるよう
しっかり取り組んでいかねば、そう感じた講演会でした。
名取の海岸線は約5㎞。
そこに植栽基盤となる盛土が造成され、その上に海岸林がつくられます。
林野庁によるその造成工事は今も続いています。
完成している盛土は名取市の南側。工事は北上していきます。
数ヵ月ぶりに行くと、前回まで道路だったところが盛土になっている!
・・・・・・なんていうこともありまして、ちょっとびっくりしてしまいます。
現場に行かれた方でないとなかなかイメージできないかもしれませんが、
これまであった盛土の北端の北側には3本のマツがありました。
例えばこの写真。4月にスタートした植栽初日の写真です。
写真の右上の方に3本のマツが確認できます。
こちらの写真はどうでしょう。
ある植栽ポイントから北の方に向かって撮影した写真にもうっすらとですが3本のマツ、見えますか??
そして、道路(といっても工事車両用通路ですが)だった三本松の周辺は今、盛土になりました。
この写真でお分かりいただけますか??
これまでの盛土の北端と新しい盛土の南端がつながったのです。
マツの根元はこんな感じに養生されていました。切り倒されなくてよかった~!!
さらに、私が楽しみにしているのは、このマツが種子を飛ばしてくれること。
たくさん落ちていましたよ~マツボックリ。
仙台や岩沼などで海岸林再生の現場を歩いていると、近くのマツ林から飛ばされてきた種子から芽を出したかわいいかわいい赤ちゃん苗に遭遇することがあります。・・・・・・というか、ついつい探してしまいます。実生(地面に落ちた種子から生えてきた苗)は強いんです!
海岸林再生の会の皆さんが丹精込めて育てた苗と、この三本松がここに子孫を残そうと産み落とした実生苗とが一緒に仲良く育っていってくれたらいいなぁと想像を膨らませています。
新しい盛土への植栽は再来年以降。
もしかしたら実生の方が早く根を下ろすことになるかもしれません。
また現場歩きの楽しみが増えました!!
あしあと その2 吉田編
今日の足跡はこちら
はい。ご覧の通り、吉田の足跡です。
でも、ただ防潮堤に向かって無目的に歩いているというわけではありません。
実はプロジェクトの植栽地が新たに増えることが決まり、そのエリアの面積をざっと割り出し、
植栽本数を計算するため、歩数で距離を測っているのです。
その場所は、下の図の赤線の部分。
以下、足跡の主より。
防潮堤の真後ろ、道路と防潮堤までの間にも、クロマツを植えることになりそうです。 我々、そうなるとはあまり思っていませんでした。 ですが、旧来の県有林の敷地内です。 ということで、幅を、ザックリ測ってみました。 東西幅20m×南北全長5km=10ha *工事次第では幅25mぐらいかもしれません。 1ha×5,000本=50,000本 これは来年1年間で植える本数と同じ規模。 ここの植栽は、クロマツにとっても高ストレスで難しい。 天候が良くても、半数枯れることを本当に覚悟しなければならない。 苗を倍用意することなど勘案すると、H28年度には可能な限り着手し、 枯れても枯れても、補植するねばりが必要です。
あしあと その1 通り道編
広報室の林です。
2ヵ月ぶりに現場を歩いてきました。
いろいろ発見があったので、吉田の難しい話の合間の息抜きに
あれこれ小ネタをご紹介していきたいと思っています。
しばらく続きますのでお付き合いください。
今日と明日は足跡のお話です。
育苗場にも、植栽現場にもタヌキと思しき足跡が無数に見られます。
日中彼らの姿を見かけることはありません。どこにいるのでしょうか。
植栽現場では、排水のための溝が通り道になっているようです。もっとも、クロマツが植えてある場所にはチップ(津波で流されたマツを粉砕したもの)を敷いているため、足跡が見えにくく、植栽地に掘られた溝には海岸から飛んできた砂が堆積し、その足跡が分かりやすいというだけかもしれませんが。
よく観察しているとほかの足跡も見られます。
↓鳥ですね、これは。
何の鳥でしょう?分かる方、教えてください!!
↓ さらにこちらは、鳥とタヌキが並んで歩いたかのような足跡。もちろん並んではいなかったと思いますが、同じ通り道を歩いていることがわかります。
ついつい楽しくてどんな動物がどんなところを歩いているのか気になって足跡を追いかけてしまうのです。
明日はもう少し大きな足跡をご紹介します!!
“お助け隊” ico.さんの個展が開催されます
以前紹介したイラストレーターのico.さんが都内で個展を開きます。
期間:1月29日(木)~2月18日(水)
会場:自家焙煎珈琲店 梅ノ木 十条店
(東京都北区上十条2-24-10 2階)
時間:AM8:00~PM9:00
※月曜はPM7:00まで/日曜・祝日はAM9:00から
ico.さんのブログで申し込み方法など紹介していますのでご覧ください。
植樹祭にご参加くださった皆さまへ
2014年5月24日、プロジェクト初の植樹祭が開催されました。
地元の方々を中心に300名を超える参加者の手で植えられたクロマツ、
ほぼ枯れることなく、みんなしっかりと根付いています。
この盛土は比較的状態がよく、また指導員の皆さんのリードも素晴らしく、そして何よりご参加くださった皆さんの海岸林再生への思いがこのような成果につながっているのだと思います。
今年もまた5月に植樹祭を開催する予定です。昨年同様、地元の宮城県民の皆さん、名取市民の皆さんを優先して募集します。
今年度、4~11月の間、全国から1,500名以上の方が育苗場での草取りや植栽現場での保育管理作業にあたってくださっていました。そういったボランティアの皆さんも「植えたい」と思っているのですが、私たちの「植栽は地元で」という考えをご理解くださっています。
地元の方が植え、守り、育む。
その大きな流れをつくらなければ何百年もこの森を育てていくことはできません。
今日の河北新聞の“とうほく一番物語”のコーナーでは秋田県能代市の「緑の長城」が紹介されています。
日本最大級の海岸防砂林「風の松原」のこと。
地元には「風の松原に守られる人々の会」の会長さんの言葉が紹介されていました。
「守る人々の会」ではなく「守られる人々の会」というのがいいなぁと思いました。
海岸林を守り、育むと、その海岸林が内陸に住む人々の生活を守り、育んでくれるのです。
宮城県民、名取市民の皆さん、ぜひ今年もお仲間とご参加ください。
そして植えた苗木のお世話を全国からのボランティアの皆さんと一緒に体験してください。
4月以降11月まで、毎月第三土曜日(8月のみ第五土曜日)の朝9時から夕方5時までです。
ご参加お待ちしています。
ボランティア詳細はこちら