「1ヵ所、ここ!」と敢えて言えば、今の私にとっては襟裳岬。
「10数年後には大体こうなるのか~」という若い森から50年先まで学べたので。
現実的かつ低コストな造林手法、住民の理解度、参加度、どう考えてもお手本。
試験植栽地でない本気の現場で、10年後とか、30年後とか、見たことありますか?
襟裳は、林野庁の歴代担当職員数十人、苦闘の場所です。
しかし、お題は100年先。もう少し年を取った海岸林を考えてみると・・・
愛知県渥美半島伊良湖の海岸林に行った時、後ろの数百haの畑で朝から従事する
人の数にはタマゲました。「農業が栄えている」というインパクトがありました。
しかし、恩恵を真面に受ける人々が保全に協力しているという点では、襟裳町の
漁師・町民に勝る現場は知りません。
名取の海岸林背後には「興農共栄」碑もあります。「愛林」碑には「名取耕土」と
いう言葉があります。昔の人の言葉に共感する人を増やしたいなと思います。
秋田県能代市「風の松原」では、圧倒的な高さのクロマツ防災林の下に、多様な
植物・樹木があり、海岸林の基本機能を十分に果たしています。広大な林内には
縦横に「作業道」があり、ウオーキング、ランニング、サイクリングする人も迷う
ことなく森に入り、8時半には、シルバー人材センターの方などの雇用の場にも
なっています。同じく市民の関与・利活用だけでも「虹の松原」は大きな目標。

名取の松原は居住地域と数km離れるので、毎日の健康づくりにわざわざ来るとは思えないが。存分に立ち入れる状態を目指したい

名取の松原は居住地域と数km離れるので、
毎日の健康づくりにわざわざ来るとは思えないが。
存分に立ち入れる状態を目指したい


風の松原でもクロマツ純林を維持するゾーンでは、住民も参加して落ち葉掻き・落枝拾いがされている。(2011年)

風の松原でもクロマツ純林を維持するゾーンでは、
住民も参加して落ち葉掻き・落枝拾いがされている
(2011年)


 
 
 
 
 
 
 
 
 

香川県「津田の松原」では、恐らく数校、随分たくさんの子どもたちが遠足に来て
いました。体育協会のトライアスロン大会のポスター、和歌・俳句の吟行ポスト、
道の駅など、多様な目的で訪れる人がいることに注目しました。
千葉県山武市「蓮沼海岸」(九十九里浜)には、家族連れを引き寄せる大きな公園
が海岸林に併設されています。
学習の場という面では、「全国の海岸でここが一番というものがない」と感じて
います。この数年で見た中では、海岸林ではないですが、栗駒山麓の岩手宮城内陸
地震の復旧地のように、「通りがかった人を対象に、ここが何なのか、しっかり
説明している点」。これは名取では出来るだけ活かしたいと思っています。
海沿いの賑わい、学習の場、地元の誇り・・・各地で目に焼き付けてきた多くの
お手本を、努力次第で限りなく活かせるのが今の私たち。
溢れんばかりの夢は、すべての苦しさを凌駕する気がします。
80年級?のクロマツが相当松くい被害。伐倒・燻蒸を実査す る名取市役所職員。(2010年)

80年級?のクロマツが相当松くい被害。
伐倒・燻蒸を実査する名取市役所職員(2010年)

●松くい虫の早期微害化対策
「松くい虫はエボラ出血熱のような驚異」と太田先生も言います。壮齢以降にしか
発症しないという説は過去のモノ。直径10cmになればターゲットになると考えます。
潮風の影響を受けにくい内陸防風林の植栽には、「クロマツより100倍強い?」と
まで言われる岩手県産抵抗性アカマツを配置し、海岸でも抵抗性クロマツを内陸側
配置しましたが、抵抗性のない残存クロマツ壮齢・老齢木が市内の随所にあるので、
それが足掛かりにされるはず。薬剤防除は「発見後の対応」が重要なので、即対処
を行政当局、住民と共通認識を図らねばならない。「巡視」が重要。見つけたら
「即通報、即伐採・燻蒸・搬出」。沿岸部の農家にも早くから啓発し、理解・協力を
めていなければなりません。
●一番下の枝が、出来るだけ低い位置から生えるように
防災機能を十分発揮するために、枝が低い位置から生え、言わば「ずんぐり
むっくり」の形の松に仕立てたい。枝が高い位置まで枯れあがるのではなく。
「形状比」(樹高÷胸高直径)を低く。「ずんぐりむっくり」は、「苗半作」の
育苗の時点からの大方針です。背丈は高くなく、根元径が太く、枝が豊富な苗を
育てようと、再生の会が頑張ってきました。
●枯れ枝払い(枝落とし)
マツは必ず枝が枯れ上がってきます。襟裳岬では毎年秋「育樹祭」を行って、
町民が決めた個所を大規模に「枝払い(枝落とし)」するそうです。ノコギリで。
そうすることで、その後の本数調整伐の作業員もはるかに仕事しやすく、森に
とっても光も差し込みやすくなり、広葉樹の実生が発芽することを促します。
しっかり指導すれば、襟裳岬の様にボランティアの活躍の場にもなるでしょう。

枝払いの仕事も遣り甲斐がありそうですね。ビフォーアフターが歴然 だし(2013年襟裳岬)

枝払いの仕事も遣り甲斐がありそうですね。
ビフォーアフターが歴然だし(2013年襟裳岬)


●本数調整伐(いわゆる間伐)
海岸林の間伐は、材木目的の経済林と区別して専門用語では「本数調整伐」と呼び
ます。「名取の海岸林では、いつ初回の本数調整伐を迎えるか?」ということは、
いまは誰も分かりません。なぜなら、新たな人工盛土の上に植栽したから。森林
総合研究所の方に伺ったところ、「宮城南部では人工盛土の土壌の性質上、生長に
時間がかかるかもしれない。いつとは言えないが平均樹高が1mを超えた時点で、
やっと1回目の本数調整伐の時期が見えてくる。オイスカにはぜひ平均樹高が3m
未満で初回の本数調整伐を、1伐3残で取り組んでほしい。思い切って伐ることが
肝要。ボランティアでもできる太さ」。佐々木統括の予想は「植栽から20年前後」、
清藤先生はそれより若干早い。2034年ごろ、すでに引退した65歳の私は、むかし
取った杵柄で、植えた木の伐採をしているだろうか。
左がこれから本数調整伐にはいる植栽25年後。右は植栽15年後。 (2013年襟裳岬にて)

左がこれから本数調整伐にはいる植栽25年後。
右は植栽15年後。(2013年襟裳岬にて)


●広葉樹導入の時期は?
まず、圧倒的な高木となるマツを最優先に育てます。広葉樹の実生苗を仕立てる
のは、将来もマツを越えない差がついたその後と考えます。襟裳岬では25年後から
本数調整伐を開始しているそうです。ちなみに、松の間の「林間植栽」は極めて
成績が悪いとの事。やはり本数調整伐をして、実生で生えてきた広葉樹を伸ばして
あげることが理に適っています。コストの面からも。名取では、オオシマザクラ、
ウワミズザクラや、低木系の常緑広葉樹などが有力候補でしょう。ただし、海寄り
のゾーンはクロマツ純林にすべきです。繰り返しますが、人の手では植えません。
●名取の海岸林に「落葉掻き」は必要か?
虹の松原、気比の松原、天橋立などは文化財保護法の「特別名勝」「名勝」に指定
自然公園法の「国定公園」などに指定されています。誤解を恐れずに言えば、「美
しく」なければならない。白砂青松の景観を保全することは地元の希望でもある。
しかし、名取をはじめ全国の多くの海岸林の第一ミッションは、潮風の流入をどう
防ぐかなど防災林機能の重視である。先行樹種としてクロマツを導入し、遥か将来
は侵入した広葉樹の実生を積極的に活かせばいいと思います。従って原則的に、
名取の松原では落葉掻きは不要」と考えています。ただ、閖上や空港近くの北釜
地区の一部では公園的要素を持たせ、親しみやすい林に仕立てても良いと思います。
震災前の名取市閖上地区の林内。想像以上によく管理されていた ことが分かります(2010年名取市役所提供)

震災前の名取市閖上地区の林内。想像以上に
よく管理されていたことが分かります(2010年名取市役所提供)


●(仮称)名取市海岸林を守る会は、いつまで大変なのか?
これ、すごく考えます。個人的に、最悪のことをすぐ考えてしまうのですが、結局、
楽天家なので。それ前提で。30年後までは市民が定期的に集って出来ることは多分
にあります。そのボリュームは確実に減るはず。市民過多なはずはありません。
プロの領域が徐々に増えるでしょう。地権者の成すべきことは明確にあります。
しかし、地権者とは言えども、行政が何でも担うという、行政依存という世の中は、
これからの日本には相応しくないと思います。何でも税金に頼るのでなく。
住民も行政も進化するでしょう。今と同じなわけはありません。しかし、人間の性。
「組織30年」という言葉もあります。まず現代の私たちは、肩の力を抜いて、最大
でも「第3次10ヵ年計画完了まで」と期間を決めて考えても良いのかと思います。
●参考資料
クロマツ海岸林の管理の手引きとその考え方 森林総合研究所
https://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/chukiseika/2nd-chuukiseika24.html
[PDF]津波被害軽減機能を考慮した海岸林造成の手引き 森林総合研究所
https://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/chukiseika/…/3rd-chuukiseika24.pdf
[PDF]クロマツ海岸林に自然侵入した広葉樹の活用法 – 森林総合研究所
https://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/chukiseika/…/3rd-chuukiseika17.pdf

以下、不勉強を露呈することになる可能性もありますが、自分の責任で思い切って
書いてみます。明日は2030年以降を想定してみます。

●上から地面があまり見えないぐらい、枝がビッシリ

2014年植栽地は植えてから7年が過ぎ、歩くには、松をかき分けて一苦労でしょう。
そういう中でも、太陽を求めて「つる草」は這い上がってきます。ニセアカシアも
わずかな日光でも生き抜くと言われています。2014年植栽地は、2021年以降も
つる切り・除伐が続きます。公共工事にはないボランティアの手が入り続けている
という「特殊事情」が名取にはありますから、プロの手を要する負担は軽減されて
いる可能性もあります。

●2014年の初植栽ゾーンの平均樹高は1.5mを超えるか

2014年に初めて植えた個所は、高さ1.2mの静砂垣、高さ1.6mの防風垣を越えるマツ
がたくさん出てくると思います。防風垣の高さを超えると 海岸林としての役割・
機能を、徐々に果たし始めると言ってよいのだと思います。風が直接当たります
から、海側の枝は、潮風をまともに浴びて、すべて枯れたようにも見えるでしょう。
長く伸びた新葉は強風に煽られ、たくさん折れてしまうこともあります。
防風垣や静砂垣は、依然として木を保護する役割を果たしつつも、耐久年数10年と
いう限度が少しずつ迫り、朽ち始めるものも散見されるはず。撤去されることは
なく、さらにその先、完全に朽ち果てるまで役割を果たし続けます。

日本一の強風地帯と言われる襟裳岬の最強風地点でも、植栽5年後には1.6mの防風垣を超える個体も多数。

日本一の強風地帯と言われる襟裳岬の最強風地点でも、植栽5年後には1.6mの防風垣を超える個体も多数。

●下刈のボリュームは徐々に減ってゆく

名取の最後の植栽は、予想では2020年。数ha程度、空港東側の元私有地周辺が残る
と考えています。普通は「植栽から7年は下刈」です。名取の下刈ピークは2020年。
計算上、2014年植栽地は2021年には下刈をする必要はなくなります。全体の仕事量
は毎年下降し、面積は少なくなっていますが、2026年頃までは下刈は続くでしょう。
一番下の枝まで日光を当てることが重要で、庭の様に潔癖に草刈りするのではあり
ません。名取の場合は、全体の面積が広いと言っても、植栽直後からボランティア
とプロの併用で、コンスタントに下刈を続けているので、他地区よりボリュームは
軽いと予想しています。また、先々のために、2020年中に初めての「育樹祭」を
開催するのも良いかもしれません。

●つる切り・除伐は、手を抜けない

「除伐」とは、必要な樹種以外を伐採する意味。名取では特にニセアカシア。
葛、ニセアカシアの繁殖力の強さは折り紙付き。多くの方に知っていただいた
と思います。佐々木統括は「闘いと思って臨まねばならない」と繰り返し私に
言います。宮城南部は、大量に生えていたところに高く盛土をして、大半を埋め
たので、現在同様、徹底駆除を続れば、他ほどボリュームは多くないだろうと
予想しています。とにかく、名取では、除伐後は、「即、薬剤塗布」を、すでに
今から森林組合にお願いしています。ボランティアの手も動員して「芽かき」も。
夏、芽が出たてのニセアカシア・葛を見つけては掻き取る。もしくは抜根。
佐々木統括からは、一番エネルギーを消費している夏に刈り取る「山芋理論」を、
叩き込まれています。

●生長予測

東日本大震災の復旧個所は「人工盛土」という特殊事情があり、率直に言って
「わからない」という現状です。清藤先生、佐々木統括、私で話しても三者三様。
敢えて、盛土の事情を踏まえず、千葉・岩手・宮城・福島の過去データを参考に、
清藤先生に予測してもらいました。 無題

「50年で樹高9m」というと、低いと感じるかもしれませんが、二階建て住宅の
屋根の上。しかも、海側最前列と、内陸側最後列とでは高さに相当の開きがあり
ます。高さ3.2mの盛土の上に9mですから、相当高く見えると思います。

海側からは枯れて見えるが、内陸側から見ると、潮風に耐えて生きていることが分かる。(静岡県御前崎市)

海側からは枯れて見えるが、内陸側から見ると、潮風に耐えて生きていることが分かる(静岡県御前崎市)


つづく

●名取の海岸林の機能と、ゾーンニング
肝心の記述を述べるのが遅くなりました。
名取の海岸林には、大きく2つの機能があると考えます。
1.防災機能: (防風、防砂、飛塩・高潮防備、津波減衰、防霧・ヤマセ防備)
2.景観保全保健文化機能:(余暇や憩い、散策・学習の場、生物多様性)
名取を含む宮城県南部、東日本大震災被災地の海岸林再生では、防災機能を保持した保全
整備を優先して考えることが望ましいと思います。とくにこれからは「地球温暖化」。
スーパー台風や高潮など何十年に一度の異常気象への防備を私自身は意識しています。
「名勝」のように、枝下の向こうに海が見える美しい林床に保つ必要はないと思います。
むろん、閖上や空港付近など、部分的には、お弁当を広げられるような、「親しみやすい
ゾーン」があってもいいかもしれません。
次に、ゾーンニングを行って、対象地ごとに保全の手法を区分する必要があります。
これまで海岸林の津波減衰効果や、飛塩・飛砂を分析した研究から、林帯幅200m以上が
適当とされています。プロジェクト再生植裁地の林帯幅は平均で約200mです。
飛塩や飛砂を「濾し取る」ようなイメージの機能です。
1.汀線(*ていせん)ゾーン *汀線:波打ち際
林野庁が示している林分構造の事例同様、海岸側から植裁50m程度のゾーンは、
防風、防砂、飛塩防止、高潮防備、津波減退効果を最も発揮させるエリアですから、
形状比(樹高÷胸高直径)・枝下高を低く維持していくのが重要だと思います。
そのためには、最新の研究に基づき、将来は、本数調整伐(海岸林では山で言う間伐を
このように言う。材木にする山の間伐と区別している)も、例外なく進めるべきと
考えます。このゾーンは松の純林となります。

右側より、太平洋、幅100mの砂浜、高さ7.2mの防潮堤、車道、もとの 地盤の砂浜、そして幅50m程の「汀線ゾーン」

右側より、太平洋、幅100mの砂浜、高さ7.2mの防潮堤、車道、もとの地盤の砂浜、そして幅50m程の「汀線ゾーン」


2.内陸ゾーン
汀線ゾーンの内陸側では、林分密度も中~低密度に調整し、樹高を高く、形状比を低く
管理する。将来の本数調整伐に伴い、枝下高が高くなった頃に、中・下層木としての
実生の広葉樹の自然侵入を促し、防災林としての機能を増す必要があります。
3.生物多様性配慮ゾーン
海岸林と農地との間、国有林地内に幅約30mの生物多様性配慮ゾーンがあります。
ここは湿地のような状況になっている場所もあり、オイスカと国との協定締結からは
外れている。トンボだけ見てもイトトンボなど種類が多く、部分的に実生で生えてきた
サクラ類が残っている。オイスカ協定地内ではこのゾーン設置の趣旨も考え、全長500m
以上の林縁部に1.8m間隔で2列のみ、ヤマサクラ類、ケヤキ、コナラ、クリを植栽。
先々も広葉樹侵入はかなり困難と考え、植栽木が母樹となって、配慮ゾーンとクロマツ
林床への種子の拡散を目論みました。(過去2年の広葉樹春植栽の活着率は30%程度と
極めて悪かったが、初年度の秋植栽は70%以上の活着、昨年の秋植栽も現時点では成功)
左側より、ビニールハウス団地、もとの地盤で幅30m程の「生物多様性配慮ゾーン」(国有地。植栽しません)、そして「内陸ゾーン」 

左側より、ビニールハウス団地、もとの地盤で幅30m程の「生物多様性配慮ゾーン」(国有地。植栽しません)そして「内陸ゾーン」


つづく

2015年8月から正式に「海岸林と地域の将来ビジョン形成調査」に取り掛かり、
じっくり時間をかけて、行政当局と、Post2020、将来のことを話し合う材料となる
「たたき台」を作りたいと思っています。
●宮城南部における植栽完了後の「基本計画」策定の重要性
唐津「虹の松原」では、所有者の国(佐賀森林管理署)が詳細にわたる計画を作り
目標や指針を定め、積極的に公表し、民間と共有していることに注目していた。
計画立案の時点で、第一線の専門家を交え、すでに「官民連携」だったと推測。
東北では、2011年林野庁「東日本大震災に係る海岸防災林の再生に関する検討会」
の指針に、現在の状況を踏まえた、詳細かつ具体的に深めた大方針が欲しい。
目標林形やゾーンニング、それに向けた技術の指針、将来の本数調整伐(間伐)
基本方針や、松くい虫早期微害化対策は、先手先手で。5年ないし10年ごとに、
計画を見つめ直す弾力性があればいい。明確な目標があってこそ、大同団結の
実践の道が開ける。特に宮城南部から福島北部は類似した状況・目標林型と思う。

仙台市は北部より南部に植栽工が進んでいる。 蒲生地区の公共工事植栽直 後(2015年5月)

仙台市は北部より南部に植栽工が進んでいる。
蒲生地区の公共工事植栽直後(2015年5月)


宮城県亘理町・山元町でも植栽工は進んでいる。(2015年11月)

宮城県亘理町・山元町でも
植栽工は進んでいる。(2015年11月)


●「実行計画」策定の重要性
同じく「虹の松原」では、基本計画に連動して「虹の松原再生・保全実行計画」を
官民のオール唐津のようなメンバーの「虹の松原再生・保全協議会」の名前で、
極めて詳細に立案している。地域の特徴を踏まえ、具体性を極めたものである。
幾つかの松原では「基本計画」はあるものの、実践シナリオがなく、場所によって
は、民間の手で「基本計画」を立てたものの、法的根拠や拘束力がなく、事実上、
お蔵入りしている事例もあった。唐津の立案に当たっては、各セクター第一線の
専門家集団を編成して立案していた。「実践計画」は各地区ごとの実情に合わせて
立案するのが良いと考える。
●「再生の会」と「オイスカ」の立場
Post2020は、あらためて官民各主体の役割分担を確認し、互いの力を持ち寄りたい。
まず、再生の会も、オイスカも地権者ではない。出しゃばってもいけない。
地権者には地権者の役割があるのだから。
少なくとも私たちオイスカは、林野庁「海岸林検討会」の2011年議論を全て傍聴し、
事実上の「基本計画」となった検討会「報告書」に納得し、「行政が立案した計画
そのものに協力する」事を原則とする「助っ人」の立場。今後もそれを堅持する。
その上で、名取だけでなく他地区も念頭に置き、たたき台を提供し、「基本計画」
「実践計画」の立案にも可能な限り協力したいと考えている。
名取では、再生の会とオイスカが一体となり、実践を託される「Post2020 名取型
実働部隊」を立ち上げることを視野に、時間をかけて、万全の準備を重ねたい。
海外活動の永年の経験から「自助自立」の精神で。
つづく

明けましておめでとうございます。
新年にあたり、「海岸林と地域の将来ビジョン形成調査」に関して、
いま感じていることを、頭の整理を兼ね、数日かけて連載します。
2011年以来、地方出張を利用して各地の海岸林を巡り、地元でヒアリングしました。
まず、連載の冒頭として、宮城南部と同様に、大規模面積を抱えた上で、プロも唸る
ダイナミックなボリュームを実践している、東と西の2つの現場に絞って紹介します。
ただ、判断を誤らぬためには、さらによく学んだうえで、宮城南部とは置かれている
状況が全く違うぐらいの前提に立たねばならないと肝に銘じております。
 1.北海道「えりも岬海岸林」(国有林約200haなど)
「えりもの緑を守る会」
森林組合、漁協なども含む「オールえりも」の官民各組織がメンバー。
事務局はえりも町産業振興課林務係。市町村が事務局を担うパターンは、各地で
見られるが、一長一短あると思う。造林の歴史的経緯などから、住民意識が
極めて高い稀有な現場。それゆえか、実践を重視し、きわめてスリム化し、
シンプルな組織形態を取れると感じた。樹齢も25年~40年生などが多く、実務は
ひだか南森林組合が中核を担う。目標林型はクロマツ先行ののち、実生の広葉樹
を自然に導入する点など、宮城南部の将来を考える上で非常に参考になった。
(やはり、試験的に実施した「広葉樹林間植栽」の成績は芳しくないとのこと)
襟裳岬になぜ海岸林がなくてはならないか(この地ではクロマツでなければなら
ないということでなく)、非常に長いスパンで考え、信念や技術を後世に継承し、
この地における海岸林の存在の目的を、極めて現実的に追及している。
植栽は小面積ながら今も継続。育樹祭は「枝おろし」(枯れあがった枝を鋸で
落とす)。ここには松くい虫はまだ及んでいないから拾う必要もない。
「5,000人の住民5人に1人が植樹祭と育樹祭それぞれに参加する。正直言って、
参加者数が多すぎて・・・。仕事を理解できているから、開始と言う前に
すでに仕事が始めている人がたくさんいる」(関係者)

襟裳岬にて。 日高南部森林管理署、えりも町役場、ひだか南森林組合にご案内いただき、宮城中央森林組合とともに視察(2013年8月)

襟裳岬にて。
日高南部森林管理署、えりも町役場、ひだか南森林組合に
ご案内いただき、宮城中央森林組合とともに視察(2013年8月)


 2.佐賀県唐津市「虹ノ松原」(国有林約200haなど)
「虹ノ松原保護対策協議会」
事務局は唐津市観光文化スポーツ部観光課(虹ノ松原室)。日本三大松原であり
玄界灘国定公園内(自然公園法)であり、その上、国の「特別名勝」に指定され
ている(文化財保護法)ことが大きな特徴。その再生・保全は、地権者はほぼ国
にも関わらず、県・市・民間を含む「オール唐津」で担おうという考えで構成
されているのが第1の特徴である。
最も注目している点は、「虹ノ松原再生・保全基本計画」と、それを受けて
協議会が作成した「実行計画」が存在している点。まず、佐賀森林管理署
と「レクリエーションの森協定書」(国有林の制度)を締結し、全体計画・年間
計画を立案。国・県・市・民間が各役割を分業。松くい虫対策、密度管理など
高度な専門性を要する点でも、森林総合研究所九州支所なども深く関与している。
多くの主体が分業するにあたっての制度設計、実践の理論的根拠が、シンプル
かつ、緻密に整理整頓されている点も際立っている。
「松くい虫による伐倒駆除は、年間1本程度/haに抑えられている」(関係者)
「団体が乱立状態になるのは良くないから、すべて協議会のテーブルで決める」
(田中明 佐賀大学名誉教授)
NPO法人「唐津環境防災推進機構」(KANNE)
協議会内「レクリエーション部会」事務局を入札で受託し、市民参加による再生
保全活動の運営を託されている。年間6,400人の市民・企業・団体が、①アダプト
方式、②自由参加方式の2種類で、松葉掻き、落ち枝拾い、芽かき、除草、清掃に
柔軟に参加できるよう、市民・企業団体の参加の窓口として大車輪の役割を担う。
これぞNPOともいうべき。この覚悟は、とても簡単に真似できるものではない。
「年間2,555tの木質バイオマスの処理・利活用など全体の大きな課題もある」
(①リターフォール(落葉・落枝など)200haで年間1,110t、②広葉樹伐採1,125t、③下草刈り155t、
④松の過密林伐採110t、⑤松の伐倒駆除55t)
虹ノ松原にて、佐賀森林管理署、NPO法人唐津環境防災機構に ご案内いただき オイスカ関係者7名で視察。

虹ノ松原にて、佐賀森林管理署、NPO法人唐津環境防災機構に
ご案内いただき オイスカ関係者7名で視察。


cf. このような先進的な取り組みは、多くの実務関係者がじかに触れるべきかと。
五月雨式に行くのではなく、いつか、行政とともに視察団を編成できたら・・・
つづく

松竹

2016年1月2日( カテゴリー: 現場レポート )

松の内ですから松の話題で。
DSC_0103・・・・・・といいながら、これ、松ではないのですが。
植栽地ののり面に生えてきた竹。
・・・・・・というより笹でしょうか。
すごい繁殖力です。刈っても刈っても伸びてきます。
なかなか引き抜くことはできません。
竹も松と並んでおめでたい場面で使われます。
そのおめでたい松と竹が並んで生えています!!
 
 
DSC_0107分かりますか?
のり面の下の方に竹、上に松が。
どこから種が飛んできたのか、アカマツが育っています。
夏の間気が付きませんでした。
松竹そろっておめでたい植栽地でした。
DSC_0108

本年もよろしくお願いします

2016年1月1日( カテゴリー: 本部発 )

新年あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いします。

今年で震災から5年。
3.11前後でなければ震災の話題が出てこないほど
月日が過ぎてしまいましたが、復興にはまだまだ長い年月がかかります。

震災を知らない子どもたちも育ってきている中、
どう次の世代につなげていくかを大きなテーマとして
今年も頑張ってまいります。

nenga

変化と成長の一年に

2015年12月31日( カテゴリー: 現場レポート )

育苗場がオープンしたばかりのころから、
車止め(というのでしょうか?)に
プランターのお花を飾れるようにしたスタンドを置いています。
左が新しい状態。右がリニューアル後。
今、お花が入っていないのがちょっとさみしいかも・・・・・・。
来年はクロマツ播種とあわせてお花の種も播いてみましょうか。

DSC00213DSC_0003
 
 
 
 
 
 
 

それにしても、もう右の状態に目が慣れてしまったので、
過去の写真を探してみて、これが出てきたときにちょっと驚きました。
こんなだったんだなぁ~と。

ついでに同時期(2012年4月)のほかの写真も見てみると
まだ盛土工事が始まる前の植栽地には、クロマツがなぎ倒された状態で残っていて、
防潮堤も工事中で黒い大きな袋が積まれている状態でした(下の写真は2012年3月撮影)。
いろんな変化があるものです。そして、私自身、当時は今よりだいぶほっそりしていました(笑)
3月10日~12日 032

よい変化変身を積み重ね、よい成長をしていきたいと思います。
今年もたくさんの方にさまざまに支えていただきました。
皆さまどうもありがとうございました。
来年も「海岸林再生プロジェクト」をどうぞよろしくお願いします。

ネズミ●●

2015年12月30日( カテゴリー: 現場レポート )

育苗場でネズミのフン発見!

DSC_0025

・・・・・・ブログ読者の皆さんはご存知ですよね。
これが“ネズミのフン”ではなくて“ネズミのフンのようなもの”であることを。

はい、これはネズミのフンではなく、
育苗場の周囲に風よけのために植えられた
ネズミモチの木の実です。

ネズミモチを植えたのは2012年4月の育苗場お披露目式の時でした。
参加者の皆さんに記念植樹として植えていただきました。

DSC00251 DSC00247

植えた時はこんなに細かったんですね。

しかし、今は立派な風よけに成長していますよ。
(手前の2本はマサキの仲間で、向こうに見えるのがネズミモチです)

nezumimochi

特に太い木の根元はこんなに太くなっています。

DSC_0050

カメラのレンズキャップは直径5.5㎝ほど。
(Nikonが見えるように置けばよかった・・・・・・。ニコンさんごめんなさい)

ネットで調べてみると、ネズミモチは漢方薬として使われるのだとか。
しかも老化に効くそうで、老眼なども改善されるとのこと。
煎じて飲んでみたくなりました。

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