インターン生 現場がお休みの間も…
名取はすっかり寒くなっていました…これで今年の現場での活動は最後ですが、
実は、福島で別の活動をやっております。

9月下旬から、福島大学の教員の方々と面談し、海岸林再生プロジェクトの
広報活動をさせて頂けるよう、交渉をして回っておりました。
十数名の先生とメールでアポイントメントを取り、直接お話を聞いて頂いた先生の中から、
共生システム理工学類の塘忠顕教授に講義中の30分間というお時間を頂けることになりました。
現在、それに向けて授業で使うスライド作りや、知識の補強をしております。
本番は11月28日の3限目(13:00〜14:30)、学生さん達が1番眠い時間ですが、
皆さんに興味を持って頂けるよう、精一杯頑張りたいと思います。
今週末の大阪マラソンも、お手伝いさせて頂くことになっておりますので、
また新たに支援者の方々とお会いできるのを楽しみにしております。
2017年に植えて半年後の、コンテナ苗の根
10月末の台風21号で盛土が崩れた個所を、
清藤先生に見せようとモニタリング調査の途中で寄り道。
さすが先生。
倒されてもタダでは起きないとはこのこと。
流された苗の根を掘り取っている。
崩落した場所は、広浦沿いの2017年植栽地。
土は目が細かい。乾燥するととても固くなる。
大雨の後は、なかにはトロトロになる場所も。
森林組合の秀君、私ともに太腿まで沈んだ、まさにその場所が崩れた。
目印を付けたのですが、目印自体がなくなっていた。
滞留している水、浸透した水がここに集まってくる。
苗は、宮城県網地島産(準抵抗性)コンテナ苗。生産地はもちろん再生の会。
活着率、生長度合いは極めて順調。
平均して、直根らしいものが見当たらないが、根は豊富。
中には60㎝程度の支根もあった。
植えた後の、根のサンプルは少ない。
今月の調査では、極力根にも注目してきた。
森林総研の調査、僕らの土壌調査でも根の一部に出くわした。
東京に帰ってから、引き続き整理してみよう。
北仙台中学校2年生7名の職業体験
11月15日から3日間、中学2年生7名と大人との濃密な3日間。
「職業体験」という趣旨をしっかり意識しながら受け入れました。
ペットショップ、パン屋など選択肢は色々。当方は「復興支援」という
カテゴリーらしいですが、第5希望まで選んで、最後は先生が決めるそうです。
受入指導者は、佐々木統括ご兄弟が座学・まとめも担当。
清藤先生と小林省太さんと私。やたら濃い布陣。
スケジュールは、初日は育苗場・植栽地見学と、座学2コマ。
2日目は終日調査、3日目は調査の残りと、海辺と飛行機の真下の体験。
午後は、まとめの時間(これが大事)。
「おい吉田、ちゃんと仕事考えろ」
「この時期じゃ、やることないですよー」
9月頃、こんな会話から始まりましたが、モニタリング26ヵ所を我々と一緒にやろうと
思いつきました。体験内容としても申し分ない。時間が余った場合や、雨の場合も
一応考えましたが、結果的に60cmの穴を26カ所の土壌調査も加えたので、
我々4名、生徒7名で目一杯1.5日を要しました。
第5希望の生徒も何人かいましたが、かなりキッチリ、実によくやってくれました。
というか、我々も楽しんでいました。
まとめでは、
「穴掘りを褒められました。才能があることがわかって嬉しいです」
「決断という言葉が一番印象に残りました。決断力のある大人になりたいです」
「400年前にこの仕事を始めた人、今もやっている人はすごいなあと思いました」
「私たちのような者を受け入れていただいて、大変お手間とお手数をおかけしました」
感想文が届いたら、ブログで紹介します。
調査結果は年内にまとめ、各関係先に渡すとともに公表しますが
生徒たちにも届けることを約束しました。
このプロジェクトは、各年代平均的に関わりを持てていましたが、
20歳以下との接点だけは、唯一手薄と思っていました。
一見、海岸林という言葉だけでは、若者受けしにくい面もあるでしょうし、
震災後の教育環境変化の影響でもあると考えていました。
ボタンの掛け違えになるから、無理しないで時期を待とうと。
2016年からわずかに変化の兆しがあり、
2017年は「地元10代対策」に取り組んでみようと。
とくに、考えるチカラが付き始める高校生を中心に。
・例年通り、市内大学・各種学校・高校への植樹祭呼びかけ(4年目)
・例年通り、名取市市教育委員会通じて教員などへの植樹祭チラシ配布お願い(4年目)
・県立名取北高校(生徒約900人)での全校生徒への講演
・同校生徒有志100名が植樹祭に参加
・同校生徒有志のボランティア参加
・仙台市立長町中学校・学区内小学校・父兄など80名ボランティア受け入れ(3年目)
・仙台市立仙台北中学校生徒7名の3日間職業体験受け入れ
・東北学院大学文学部、菊池慶子教授ゼミ学生ボランティア参加(4年目)
・損保ジャパン日本興亜環境財団からの大学生インターン1名(福島大学)受け入れ
・福島大学共生システム理工学類2年環境保全論にて上記インターン生がプレゼン
・福島大学大学院、海岸林再生事業地の植生調査受け入れ(今年から2年間)
と、今年は主にこんなことを。
今年できたからと言って、来年も続く保証は何もありません。
いまを過ごしながら、先々に手を打っています。
植えたマツの根はどうなっているか
11月6日、森林総研による「土壌調査」がありました。
2016年・2017年・来年の植栽地は盛土完成後に掘削する現場を見ていましたが、
2014年の現場は初めて。しかも、植えた後なので、運が良ければ根の様子も見れる。
この日は視察対応と並行していたので、国や県の方たちが帰った後に。
場所は2014年植樹祭の現場。
ここは植樹祭用に選んで、残しておいたぐらいいい場所。
1.3mの穴の中にいる職員の方は
「1時間ぐらいで掘れました。こんなにいい場所はなかなかないですね」
すごく目的意識をもって掘っているようで、初面識なのに随分話し込んで
仕事の邪魔をしてるか?と思いつつ、立ち去る気になれない。
「支根の張り具合もいいですね。50㎝ぐらいですね。土の状態もいい。
別の場所では根が暴れてしまって。2m先まで横に伸びていました」
「1.3mから下は礫が混じります。直根はそこまで届いているでしょう」
清藤先生も掘りたい掘りたいといつも思っています。
もう少し、サンプル数を増やしたら、必ずいつかどこかで役に立ちますから。
10月末の台風の跡は、一部の盛土崩壊・防風垣のズレ・滞水と若干の植栽木流出。
ここまでは十分考えられることでしたが、もう一つ。
植栽3・4年の根元周りに、ときに指一本入るような穴が見られたこと。
風で回されたのでしょう。他地区では植栽直後のものから見られました。
土壌の影響、支根の育ち具合なのか、場所が決まっているものの無視できない数。
ざっと見て、5・6・9区に多い感じを受けました。
真っ先に浮かんだのが、2013年に襟裳で知った「根踏み」という「作業」。
当地では「春先に鍬をもって、真っ先に森林組合がやる仕事」。
今まで名取では必要に迫られることはありませんでした。
報告すると、佐々木統括はすぐ見に行きました。
「根が切られるかもしれない」
「お前、下手なこと言うなよ。支柱指すとしたら、苗木代より高いからな」
実際、竹代が馬鹿にならないし、篠竹程度で済むわけはない。
「春先でも間に合いますか?」
「間に合う」
実態調査も年内にまず1回。
できれば、11月のモニタリング調査時と、最終ボランティアの日に。
春先のボランティアの仕事が増えるかもしれません。
ちゃんと戦わないとこうなる・・・
「ツルマメ??切ると白い液が出るのはありますけど。ツル類は見つけたら即切ります」
襟裳では、雑草・雑木・ツルとの戦い方の基本は同じでも、相手が違います。
下草刈りの相手は「何と言っても笹とアキグミ」とのこと。
毎年冬、ようやく繰り出します。日暮れが早いのがいつも残念。
全体的には良好。
しかし、中には課題が。
葛の根の太さ、ニセアカシアの根元の太さ、法面下までの下刈の詰めの甘さ。
一部はそういう場所があり、繁茂の温床になっている。
やはり、大変です。
ツルマメを野放しにするとこうなる・・・
もし苗木屋さんが見てしまったら、廃業したくなるでしょう。
引っ張るとわかりますが、束になって強い力で巻き付きます。
マツを引きずり倒すような感じです。

葛・ニセアカシアは、空中戦で、制空権を奪い合っているかのよう。
マツは防風垣を抜ける高さになりつつありますが、空中戦の下。
空は快晴。夕方でもないのにマツが見えないです。


彼らと戦うべきは誰なのでしょうか?
もちろん先頭で仕切るのは林業行政であることは間違いないです。
今のうちに、提案型施業で重点箇所を割り出し、境界ギリギリから法面含め、
2回刈り対象地を洗い出して対処しなければ、全てが手遅れになる。
もし、協定に手を挙げた民間側が、法面は行政の仕事と言うなら、
協定を正しく説明し、進んでギリギリまで攻めるよう遠慮せず頼んでほしいです。
官民協働でもっと必死で戦って、沿岸全体を及第点まで持って行かないと。
ちゃんと植えないと・・・
襟裳から戻り、少しだけ他地区を歩きました。
全体的に順調かつハイペースで海岸林植栽が進んでいると思いました。
防風垣などの設備のおかげで、活着率も順調。
しかし、いくつかの場所で、秋植えのリスクを思い知らされました。
秋ですから、ほぼ発根しません。その最中、10月末に台風が来たわけです。
でも、運が悪かったとは思いませんでした。
ちゃんと仕事した場所が想像以上に多いだけに、悪い場所が目立つ。
看板が出ていますから、明らかにプロが植えた場所と、市民が植えた場所と
区別がつきますが、結果も明白。穴の掘り方が甘く、踏み方も違ったと思います。
傾向として、深植えではなく、浅植えが多く、中には風に晒され培養土がむき出し。
風が巻いたのでしょう、苗は四方八方に向いて倒れている。
苗木屋さんが見たら怒るでしょう。寒くても、今すぐ直せば、まだ復活できる。
ちょっとした土壌、諸条件の違いもあります。
それによって、植え方の指示が微妙に違います。
指導が悪いと言いがちですが、聞く側の問題でもあるような・・・
同じ人が同じ誤りを続けるというのもよくわかりました。
名取の植樹祭では、森林組合から「ほとんどやり直しはない」と毎年言われてます。
もし正しくなかったら、現行犯で、即その場で直すように言っています。
誰が何班の指導をしたかも、身内同士全員がわかりますし。
我々の来年の場所は難しい場所。明日は我が身。
来春、森林組合と見に来ようと思いました。
佐々木統括からも「その場所をしっかり覚えておけ」と言われています。
観察して学べということでしょう。
防風垣は朽ち始めても・・・
宮城のスギ間伐材の半割、防腐加工ナシです。
4年で防風垣が朽ち始めてきました。
肝心の防風効果は問題ありません。
防風垣に上る時は気を付けて場所を選ばねばなりません。
上るために、座るためにあるわけではないので、大事に扱わねばならないし、
来年は、諸注意、KY(危険予知)の指導事項にも加えねば・・・
たとえ朽ち始めても、当分の間、その防風効果に頼る必要があります。
ですが、いつか撤去しなければならないだろうと。
ですが、簡単に撤去を口にするのも憚られます。
先日、マツが下敷きになっている箇所80mだけ撤去させていただきました。
解体・集積に2人で3日間。高さ2m×10mとトラック1台分に相当。
ボルトはまだ錆びていないので何とか抜いて保管してあります。
ボルト1本でも私たちの所有ではありません。
そのままだとすると、先々の作業・本数調整伐の障害になり、ボルトも錆びて危ない。
林内集積だとすると、上手に置かないと作業の障害。富栄養化となりマツにもよろしくない。
林外搬出だとすると、誰が処分の当事者になるのか。常識的に考えれば地権者でしょうが、
人件費・処分費というコストが問題。被災地全体で考えれば、相当な額。
小林さんの「省太のつぶやき」にもありましたが、
おおらかに、気を長く持って、じっくり話し合いたいと思います。
大事なことは 1.排水 2.防風垣 3.作業道
えりも岬海岸林は事業開始から64年。
「終わった治山」と思られがちだそうですが、試行錯誤、まさに現在進行形。
目下、着手したばかりの我々からすれば、現場の基本に溢れています。
タイトルは、襟裳で何度か聞いた言葉。
名取でも、これが海岸林造成の基本環境です。
すべて整えてから植付に取り掛かると。
先月震災以来2度目の、最多月間降水量355㎜超でした。
数日で250㎜の降雨は、今後も起こる。悪い意味の基準にしなければならないと思いました。
「降った雨の8割は排水が必要。蒸発と浸透はそれぞれ1割」と佐々木統括は言います。
えりもの排水溝は、森林組合が実踏して設計。掘削深は場所によっては1.5mかそれ以上。
名取では、作業道を1.5m掘り下げ、排水溝代わりにする機転で、当面の難は逃れました。
しかし、その分、作業道を事実上捨てることになりました。
名取を含む東北では、えりもで開発されたものとほぼ同形の防風垣、静砂垣は充実しています。
今年も99.8%という高い活着率は、これらのおかげだと思います。
相当先の話ですが、任務を全うして朽ち果てた後どう処理されるのかが気になっています。
量が半端ではない。防風垣80mだけでトラック1台。
えりもは、森林組合がチップ工場を持っており、バイオマス発電所が買う販路があります。
林業に道は不可欠です。
作業道に関しては、名取の場合、水没しましたが、それでもサイクリング道があります。
でも、それを存分に使うことができるのか非常に心配。
東西の道の不足を訴えていますが・・・
粘り強くお願いしようと思いながら帰ってきました。