2011年5月25・26日、東日本大震災後の初調査の際、かなりフォーカスして倒れたマツの根を見ました。清藤城宏元オイスカ緑化技術参事(元山梨森林総研)は「根が浅い」というほかに、「根周りが小さい(=根の範囲が狭い)」ことも指摘していました。のちの内部報告書でも記述があります。当時私自身は、駆け出しの海岸林オタク、100%素人でしたので、「そういうものか~」と思った程度。育苗に関わるなかで、苗の段階でも、木になっても、肝心なのは「根」だということを長年かけて徐々に理解していきました。

 2022年2月7日、河北新報掲載記事「奇跡の一本松の「根」を公開 幅10メートル、津波を耐え忍ぶ」という記事が出ました。高田松原の西端のユースホステル敷地内にあった樹齢173年、高さ27.7m、胸高直径87㎝、アカマツとクロマツの交雑種「アイマツ」です。根の深さ2m、半径10m・・・本当に立派なマツだと思います。https://kahoku.news/articles/20220206khn000014.html?mailmaga=0625

 これまでもこのブログで、根が重要とお伝えしてきましたが、本数調整伐の際、切り株がその後の作業で邪魔にならないように、ユンボで「抜根」したものをいくつか見かけました。惚れ惚れする根でした。森林組合の作業班のベテランさんも「いい根に育ってるね」と言っていました。

 名取をはじめ全国の海岸林には、多湿の土壌を避けられない場所もあります。たとえそういう場所であっても、本数調整伐をすることで、残されたマツの根もより広く生長するはずです。地上部にしっかり見合うだけ、広がっていれば十分強度が得られるという調査報告もあります。地中の見えない部分が大事です。3月26日(土)の森林立地学会シンポジウム「津波にねばり強い海岸林(もり)づくりの「これまで」と「これから」(オンライン。学会員以外も聴講可能。申込必要)では、森林総研や名古屋大学の方たちが、根に関する最新の知見を発表なさると思います。オイスカもこのシンポジウムで発表しますので、ぜひ申し込んでくださいね。

2014年植栽地(名取1工区)。根の幅は半径1m以上、深さも1m以上(ユンボでの抜根なので途中で切れてしまいますが、切れた箇所の根が太かったです)
写真上部が切り株。引きちぎられていますが、半径は1mをゆうに超え、複数の太い直根(写真の下半分)にあります。
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