●宮城県南の重要な特徴
「海から幅数km、人が住まない海沿いが何十kmも続く、今の、未来の被災地」
全国の海岸林の多くは沿岸部に住む人に親しまれ、守られている。数km先に住む人が
わざわざ海まで行って朝夕の散歩をするとは思えない。依然、海に行くことを避けたい
心情が色濃く残っている。市民の中で忘れられた存在になるのが現実だと思う。
だからと言って、市民参画をあきらめていいのか?また、役所任せでいいのか?
東北魂をここでも示さないといけない。海沿いの賑わいを取り戻したいはず。
人口統計などのデータを見ると県南は、仙台・名取・岩沼は増加が続き、亘理・山元は
大幅減の傾向は明らか。市民参画力もまちまちであり、公共工事中心で進めるゾーンと、
市民参加を期待するゾーンと色分けできる。
「壮大な規模の育林実務が待っている」
実質6年の短期間で1,000haを超える史上稀な造林を行っているのが今。しかし、海岸林は
将来木材になる経済林ではない。木材からは永遠に何の収入もない。復興交付金もあと5年。
その後は、地権者の負担。すなわち市民の税金。なぜ海岸林が必要なのか、市民に理解を
促進し、あきらめず参画を求めなければならない。まずは下刈・つる切り・除伐を確実に
進めなければ、これまで投入された資金が無駄になる。置き去りにしては、将来必ず
マスコミから叩かれる。
「国・県・市と、地権者が分かれている」
これは大前提となる、最も基本的で、重要事項。また、連携が滞ることを前提に、それに
対応した構想が必要。「その連携は役所同士の責任でしょ」と言うのはその通り。しかし、
「コミュニケーションが悪い」のは民間も同じこと。世の常。何が何でも連携を強めなければ
●再生・保全基本計画の立案を望む
2011年に林野庁「東日本大震災に係る海岸防災林の再生に関する検討会」の報告が、
被災3県全体の再生基本方針となった。Post2020に関しても、壮大な規模の植栽が完了した
後の、堅実な育林を保証するための指針・目標が取りまとめられることを期待したい。
同じ場所で国有林・民有林が接する現場でもあり、しかも壮大な規模の復旧を今後も滞り
なく進めるため、各森林管理署や各県を中心に、地域の実情にあわせ、中長期基本計画が
つくられることを期待したい。佐賀署では日本森林技術協会に委託して調査を実施し、
その報告書が基本計画となった。
●人が代わっても不動の、核となる実行体制、実行計画が必要
提案:「宮城県海岸林保全連絡会」
市町村行政には実務に精通した人は極めて少なく、その上、林業は兼務で優先順位が低い。
広域連携・情報シェアを行い、全体方針確認システムが必要だと思う。各市町村担当者同士
も顔が見える関係になり、互いを参考にし、地区毎の施策の凹凸を減らす森林育成につながる
のではないか。各市町村ともに、地元にNPOが育っていなくても、林業・造園会社への委託など
日常業務を、担当者自らが、根拠を理解して発注できます。
実行部隊の編制方式、具体的方法は複数考えられる。シミュレーションや、議論はまだ
これから。しかし「たたき台のたたき台」として気負わず言えば、現時点では大きく2案。
各地の事例に学びつつも、行政や関係者との意見交換に時間をかけて、当地なりにアレンジ
することができる。
●名取での方法論
A案:「協議会」方式(虹の松原型)
国・県・市を含む官民で協議会を編成する。協議会事務局は市。協議会内部に技術部会や、
市民参画部会を設ける。市民の窓口・参画受付・サポートは「守る会」に、ボランティアに
担えない部分はプロに、それぞれ協議会から業務委託する形式。緻密な連携・分業が重要で、
協議会事務局のハンドリングが鈍いと業務が滞りやすい。

左より、基本計画・調査報告書類、実行計画書、覚書・協定書類、マニュアル類(虹ノ松原基本書類)

左より、基本計画・調査報告書類、実行計画書、覚書・協定書類、マニュアル類(虹の松原基本書類)


B案:「直接協定」方式(えりも型)
現在のオイスカ&再生の会と地権者との協定を発展的に解消。国・県・市も森林組合も
各種団体もオイスカも一員である「守る会」を再編成し、地権者と協定締結。
プロの活用なども「守る会」が一手に担い、各市民団体、企業なども、守る会のもとで参加し
ます。極めてシンプル、責任も明確ではあるが、守る会にお任せになりやすい。
B枝案:オイスカ直接関与方式
新団体を立ち上げるのではなく、オイスカ宮城県支部内に、①支局(当法人では推進協議会と
呼び、全国に約50ヵ所の会がある)、または、②海岸林部会を設置するという手法も考えられます。
メリットとしては、オイスカ内なので、会計管理・監査などに代表される、事務の単純化・
軽減になり、新団体を立ち上げるよりもスピーディーに移行できます。
●核となるNPOの育成
NPOは何のために世の中にあるのか?多くの存在意義があるが、この場合で言うと「接着剤」
「潤滑油」「コーディネート」という言葉が当てはまる。串刺し的に様々な関係者を横断的に
繋ぐ。駆けずり回るのは森林組合、行政、企業でもやることだが、仕事によってはNPOに期待
されている部分。行政も補助金・助成金・業務委託という典型的な方法だけでなく、具体的な
協働実務を通じて技術力向上などNPOを育て、NPOも経営努力して若い人が生涯働ける場に
成長しならなければならない。
秋田県由利本荘市岩城海岸林保全協議会の皆さ(2014年)

秋田県由利本荘市岩城海岸林保全協議会の皆さん
(2014年)


数百人が集まって、あの砂丘の向こうで堆砂垣を設置(2012年浜松市中田島砂丘)

数百人が集まって、あの砂丘の向こうで堆砂垣を設置
(2012年浜松市中田島砂丘)

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