60年かけて生まれた豊かさ
2013年9月5日( カテゴリー: 海岸林あれこれ )
襟裳では、「木」の植栽を急いではならないと英断し、20年かけて草で荒野を覆うなどの数々の「えりも式緑化工法」を確立。その上でクロマツ植栽を開始。植栽後25年~30年を経て、広葉樹の進入を促すために「本数調整伐」を行い、クロマツと広葉樹が混在する森を目指す展開を図っています。
「あわてる者は貰いが少ない、急いては事を仕損じる」とは、名取事務所の佐々木統括の口癖です。植物遷移を飛び越えたり、初期から広葉樹を混植させたり、広葉樹のみを植えるという意見もありますが、我々実践部隊は、しっかり傾聴した上で、全国の長い海岸林造成の知見を改めて噛みしめ、早急に結果を求められることにも丁寧に対応せねばなりません。大規模施業を志しているから尚のこと、他産業と同様、常に低コスト施業を意識していると行動で示してゆきたいです。
襟裳でも当初、販売されているあらゆる種類の苗木を試験植栽したわけですが、最終的にクロマツにたどり着きました。今も71%はクロマツを植えているものの、事業開始から60年を経て数えきれないほどの樹種、数々の生き物や高山系の植物も育っています。山が本来の姿に回復し、「泥昆布」と蔑まれたものが、日高昆布とブランド化し、鮭・マスなどの漁獲高も緑化に比例してトップランクまで伸びたそうです。
海を守るためには山を守らねばならない。生活を守るためには砂の移動を止めねばならない。襟裳では、森づくりの趣旨を、行政、地元の多くが共有していたのが成功の鍵だったと思うのです。計画に改良を重ねながらも根幹は不動で、100年の計を地で行く骨太の考え方を貫く姿勢に深く共感し、それを受け継ぎ進化させている人たちに、心から尊敬の気持ちを感じました。
とにかく、重要な視察だったのだと思います。