2023年12月25日

アラル海 の入り口 ムイナク市で住民対象に「薬草栽培研修会」を開きました

  • ウズベキスタン
  • 海外スタッフ
  • アッサロームアレイクム! ウズベキスタンプロジェクト調整員の青山優菜です。

    クリスマスを迎え、ウズベキスタンでもツリーやサンタクロースの置物などがいたる所で見られます。しかし、聞いてびっくり。これらの装飾はすべて新年用とのこと。イスラム教であるためか、こちらではクリスマスはお祝いをしません。クリスマスと正月が混ざった新年、これまた新鮮で面白いです。(サンタさんも12月31日に来るんです!)

    バザールでも新年に向けた装飾が所狭しと並んでいます
    ウズベキスタンでは、サンタクロースはコルボボ(雪おじさん)と呼ばれ、大晦日に来るのだとか

    さて、12月16日に、アラル海の入り口であるムイナク市にて、同市の仕事を持たない住民の方々を対象とした漢方薬栽培の研修を実施しました。これは、内モンゴルでの取り組みの経験を活かし、アラル海の緑化とともに、周辺地域で新たな産業を生み出し、住民の生計向上に貢献することを目的としています。今回の研修では、ニクジュヨウという漢方薬にもなる植物とその栽培方法についてレクチャーを行いました。

    7:00 大学を出発!
    まだ日の出前の暗い中、冨樫専門家・ティムールさん・ジャンボさん・ラフマンさん(運転手さん)と共に大学を出発しました。ムイナク市までは大学から3時間ほど。いつも長時間の安全運転をしてくれるラフマンさん、本当にありがとうございます(泣)

    大学を出発して1時間半後、太陽がやっと出てきました!

    10:00 研修場所に到着!
    研修は、ムイナク市内部の「船の墓場」で行われました。ここは、当時のアラル海の様子が見られる場所であり、ツアーの際にも皆さん見学に来られた場所です。天然のサクサウールも生えているため、ここが研修場所となりました。

    10:30 研修スタート!

    当初の予定では10時スタートでしたが、案の定30分遅れて開始しました。(このゆるさも個人的には好きです笑)直前まで-20℃の極寒の中、「あまりの寒さに誰も来ないのでは……?」と冨樫専門家も心配されていましたが、なんと12名の方が来てくださいました!

    資料を配り終え、研修スタートです!

    寒いからなるべく早く切り上げようと、早速プロジェクトの紹介。ティムールさんの通訳を介して、冨樫さんから内モンゴルでの経験談を交えつつ漢方薬の栽培方法をレクチャーしました。想像以上に皆さん興味深々で、途中話を遮るように質問が飛び交うほど。冨樫専門家の皆さんの興味関心をそそる語り口と、双方向からの言葉をうまくキャッチして通訳するティムールさんとの連携プレーも圧巻でした。

    その後、レクチャーの締めくくりに専門家から一言。

    「もし水が沢山あるとしたら、皆さんはこのアラル海に水を戻したいですか?緑にしたいですか?」

    するとびっくり。「水を戻したい」の満場一致。

    それもそのはず、今回参加してくれた皆さんは、アラル海でかつて漁業を営んでいた方々だったのです。当時の様子についてお話は伺えませんでしたが、一瞬たりとも迷うことなく回答された姿から、仕方なく漁業から離れざるを得なかったのだろうと思いました。

    「いつ植えたらいいんだ」「どんな効果があるんだ」など、たくさんの質問が飛び交いました
    後ろに見えるような船を、参加してくれた方々も当時使っていたのでしょう
    参加者にニクジュヨウの種をプレゼントし、播種の実演中

    最後に、私から参加してくださった皆さんに簡単なヒアリングもさせていただきました!

    私は来年から大学院でアラル海をテーマに研究をするので、そのための情報収集と練習も兼ねて行わせていただきました。卒論でヒアリングを多少はしたものの、海外では行ったことがなく、やはり人にしっかり話を伺うって緊張しますね~。

    伺った内容は大きく分けて2つです。

    ①レクチャーの感想

    まずどうして参加してくれたのかを伺ってみました。ムイナク市から「日本人が漢方薬の栽培方法を教えてくれるから来ないか」との電話を受け、木を植えるのが好きだから参加してくれたとのこと。意外な回答でした。

    また、レクチャーを受けて漢方薬を栽培したいかについては、皆さん「したい」とのアンサー。詳しい理由は分かりませんが、レクチャーを聞く皆さんの様子から、新たな収入源になる点が魅力的だったのではないかと思います。

    ②ムイナクでの生活の状況

    次に皆さんが感じている生活の中での困りごとや、アラル海の砂漠化による影響を伺いました。しばらく考えて出てきた困りごとは……

    「若い世代の人たちができる仕事がほしい」

    とのこと。ウズベキスタンでは失業率が10%前後と日本の約4倍。カラカルパクスタンでは30%近くとさらに多いそう。これは結構切実な願いなのだと普段生活する中でも感じますし、薬草栽培をしたい理由もわかる気がします。これで少しでも収入を得らえるなら、生活がよくなるなら、と。

    アラル海に関しては、健康被害を感じるという意見が多かったです。足がしびれる、咳がたくさん出るといった不調がありました。どこまでがアラル海によるものなのか私には分かりませんが、そういった問題にフォーカスできる研究もやる価値はあるのだろうなぁと、来年の研究テーマを膨らませる良い意見をいただけました。

    個別かと思いきや、全員にヒアリングをするという事態に…!

    これらのヒアリングを通して感じたことは、現地の人にとってはアラル海が緑化されること以上に、暮らしていくための収入を何とか得ることが大事であることです。
    私にとって、日本には仕事がたくさんありそれを当たり前だと感じていました。ですが、ここではアラル海の砂漠化に関わらず仕事をしたくても仕事がない、だからほかの地域やほかの国に行かなければならない現状があります。また、冨樫専門家が以前のブログで紹介してくださったように、深刻な水不足にも直面しています。

    それらの問題に貢献できるのが、今のプロジェクトなのではないかと改めて感じました。

    アラル海の緑化がアラル海周辺の気候を変え降雨量を増やし(冨樫専門家曰く、内モンゴルの植林地では降雨量が増えたそう!)、漢方薬の栽培が地域住民の収入を向上させる。

    もちろん今のプロジェクトにも課題は多くあると思います。でも、きっとそれらの課題解決につながるのではないかと、改めて感じました。

    そして、私もそこにつながるような研究を、来年からできたらいいなと思っています。

    極寒の中、グダグダなヒアリングにも協力してくださった皆さん、通訳や準備をサポートしてくれたティムールさん・ジャンボさん、このような機会やヒアリングのアドバイスをくださった冨樫専門家、ありがとうございました!

    ジャンボさん、ナイスショットです!

    ちなみにこの日はティムールさんの誕生日でした! お家にお邪魔し、お魚をいただきました。

    ティムールさん、お誕生日おめでとうございました!!
    煮魚はこちらに来て初めて! コラーゲンたっぷりの一番おいしいところをお皿に盛ってくれました(笑)

    こんな時間も、現地にいるからこその楽しみです!

    以上、ウズベキスタンから2023年最後のブログでした! この1年は、会員の皆さまはじめ、オイスカの支援者、関係者の皆さまには大変お世話になりました。改めて、ウズベキスタンに来ることができてよかったです。また来年もよろしくお願いします!

    タザ ジリニズ ベネン!(良いお年をお迎えください!)

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