内モンゴル沙漠化防止プロジェクト

場所
中国 内蒙古自治区阿拉善盟
活動開始年
2000年
受入機関
内蒙古自治区阿拉善盟政府/OISCA Collage LTD.

砂漠化防止のための新たな試み

 内蒙古阿拉善左旗(アラシャン サキ)地域では、「子供の森」計画を試験的に行い、地元の中学生への環境教育や小規模の植林活動が行われてきました。その経験から、本格的な砂漠化防止のためには、木々の植林だけでなく地表を覆う草本類などの植生回復を含めた研究調査並びに、その普及が必要であることがわかりました。そして、地域住民の生活安定のため漢方薬の原料と関係する草本類の育成など、環境保全型の産業の研究・普及など包括的なアプローチを行う拠点作りの必要性を痛感しました。そこで2006年10月には、その拠点として内モンゴル阿拉善沙漠生態研究研修センターを設けました。

漢方薬の植栽も並行し、住民の生計向上と緑化を両立

 内モンゴル阿拉善沙漠生態研究研修センターは名前の通り、農牧民や町住民参加型のセンターとしての基礎的条件の整備を総合的に進め、これまであまり行われていなかった伝統的技術である糞を使った堆肥作りや、土壌改良剤としての炭作り、節水灌漑にて低コストの効率的な苗作り、ソウソウ栽培指導、航空播種等の実験など広く行い、地元住民が自ら学ぶことができるような活動を行ってきました。

 特にこれまで元々現地に自生していたソウソウ(Haloxylon spp.)という植物に注目し、地元住民らと共に植林活動を実施してきました。ソウソウの根には高価な漢方薬の原料となるニクジュヨウという植物が寄生し育ちます。しかし、自然界での寄生率は非常に低いものでした。そこで、保水剤等を使って人工的に寄生率を高める手法を開発。ニクジュヨウが確実に育ち大きくなれば住民はソウソウを活かしたまま、ニクジュヨウだけを収穫し生計向上にもつながります。かくして多くの住民がソウソウの植林とニクジュヨウの人工寄生を希望するようになりました。こうして住民の意識は変わり、ソウソウの植林は、2018年には17万5千ha/年と東京都の面積に迫るほどまでに自発的に拡大しました。現在、残念ながらコロナ禍により植栽作業にも制限がかかっていますが、政府・住民を挙げての植林活動の流れは今後も続くものと思われます。

近況・今後の方針

 これからも砂漠化防止に効果のあるニクジュヨウの人工寄生と合わせて、ソウソウなどの植栽を進めていきます。並行して新型コロナウィルス感染症(肺炎)の症状緩和効果のある薬草の種子(複数種)採取用の苗畑も造成。近い将来栽培農家へ種子を無償提供できる体制を整えていきます。栽培樹種は、青蒿(沙蒿)、麻黄、射干、甘草などです。なお、砂漠下ではこうした薬草の草本類であってもこれらが活着することにより、土壌が固定され、昆虫や小動物などが目に見えて増加するなど生物多様性への貢献が期待できます。また、今後コロナ禍が収束していれば、募金者等対象の見学ツアーも企画していきます。